2013年7月30日火曜日

絶滅危惧職種3(象牙)

鼈甲の他、ワシントン条約で輸出入規制がかかっているものに、象牙があります。
象牙は日本では明治時代に細密彫刻をして海外に輸出して好評を博したり、
現在でもアクセサリーや印鑑として利用されています。

私の行っていたイギリスの学校では、
学部生は象牙彫刻の修理が必修になっていた時期がありました。
学生が修理をすることで技術を学び、依頼主は安く修理をしてもらえ、
修理代はコースの運営費に追加されるというメリットがあり、
外部から多くコンタクトがあるのです。

私は、自分では手がけなかったものの、
それぞれの象牙彫刻が日本製か中国製かいちいち聞かれたため、
付け焼き刃でいろいろ勉強せねばなりませんでした。

例えばこれが修理前
全体にカビが生えたように白い粉が吹いています。

修理後
白化部分がなくなり、象牙特有の色と質感が戻りました。

その他、さまざまな作品がありました。
これらを英語で"Okimono"と言うのです。
Okimonoは置いておくだけですからまだ良いのですが
根付のようなものに染みついた色は落とせません。


こういうものが日本製か中国製かの判別がつけづらいのです。
銘があれば手がかりになるのですが。

象牙だけでなく獣骨製品もありました。
獣骨は象牙よりも組織が粗いのでわりと簡単に判別がつきます。
これは中国製のからくり人形です。

これは19世紀の中国製のチェスのコマで、
マゼンタで着色されていました。
日本でも「撥鏤(ばちる)」というものがありますね。

さて、浅草の国際通りを一本裏に入ったところに、
「象牙会館」というのがあります。


ここの一階は「象牙工芸館」となっており、
象牙の製品や加工工程のビデオを見ることができます。
いきなり行くと担当者がおられない場合があるので、
電話をしてから行った方が確実です。
私も伺った時間がお昼の時間帯で、お昼過ぎてから出直しました。

さて、ここではずっと担当の方とお話をしていたので
写真を撮らせて頂くのをすっかり忘れておりました。

ご説明を伺ったところ、実はワシントン条約以降、
限定量ながらも正式に象牙は輸入されており、
私が会館を訪れた前日には、なんと象牙業者さんによる市(?)がここであったのだと
おっしゃられていました。
現地で管理されていた象が自然死した時に取った牙を販売することで
それが象の保護活動の資金になるのだそうです。
鼈甲とは扱いが違うということにも驚きました。

こちらでは象牙彫刻教室も行われておられます。
象牙を削ったことがある人はご存じかと思いますが、
特殊な刀を使い、かなり力を要します。

また、毎年4月上旬には、象牙供養という行事が
護国寺で行われているそうです。

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