涼しい写真が続いたところで、現在シーズン本番となった漆の話題です。
私がほんものの漆の木を最初に見たのは1999年5月の浄法寺でしたが、
その時は漆搔き時期には早すぎたため、漆搔きを実際に見ることができたのは
2001年9月の岡山でした。
日本の漆にこだわる小野忠司さんの奥さんの温子さんが
トレハロースで有名になった林原の社長にお手紙を書いたことがきっかけで
林原共済会が備中漆の保存に動き出し、岡山県新見市に「漆の館」が作られ、
そこにお邪魔しました。
「漆の館」があるのは新見市の山の中のため、
見学に来る方はそこに泊まることもできました。
日本産漆と言えば岩手の浄法寺と茨城の大子が知られていますが、
西日本でも採取されていることはあまり知られていません。
小野さんの主張として、漆の木は何種類もあって、
それぞれから取れる漆の質も違うとのこと。
まずは、その年に取れた備中漆を見せていただきました。
見事に上と下が分離しています。
別の漆と比較すると一目瞭然。(左が備中漆)
同じ人が同じ技術で搔いても質が違うという証明です。
漆の館の手前には、日本各地の漆の木の根から育てている
苗木がありました。
遠くから見ても葉の様子が違うのがわかります。
こちらは、漆の館の前の実験林です。
こちらにも日本各地の漆が育てられています。
ぶれていますが、右手前方の木に実がついているのが見えます。
左の木は葉がまだ青々と茂っています。
同じ土地に何年間か植えてもこれだけ違うということは
やはり種類が違うということなのでしょう。
到着したのが夕方だったので、家の中にある道具を見せていただきました。
漆を入れる筒の持ち方の説明です。
こうやって手首に一回転させて持つ方法と
紐が短く手にひっかけて持つ方法。
地域によってこれだけ筒の大きさにも差があります。
西日本のものは細く(竹製が多い)、東日本では朴の木の皮などで作った
大きい筒を使います。
また、名前も、西では「漆筒」
東では「タカッポ」「カキタル」など
呼び名も違います。
東日本の朴の木の皮の「タカッポ」です。
朴の木の皮は軽いので漆がたくさん入っても大丈夫です。
古くなって漆が外にこびりついたものがお茶の花生けなど使われたりします。
漆搔き道具です。
上から「かきべら」「漆鉋」「えぐり」
大きさはこれくらい。
昔の道具入れです。これを腰に下げていたそうです。
さて、翌日朝、漆搔き体験をさせていただきました。
竹林の中の太い木です。
実は小雨が降り出し、この1辺だけ。
下の小野さんの搔き傷と比較すると、下手ですね。。。
雨が降ると漆の傷に細菌が増えて腐り、
木が枯れてしまうので漆搔きはできません。
というわけで、この日はこれだけで撤退しましたが、
木の堅さや、出て来る漆の量の少なさなど、
実際に体験することでさまざまなことが納得いきました。
「漆の館」は林原の倒産後、岡山県郷土文化財団と
新見市と真庭市の補助でなんとか継続していますが、なかなか大変なようです。
毎年植栽してきた漆の木もようやく掻けるまで成長し、
そして、せっかくの日本各地から集めた漆樹、
(分根法で作られた苗はクローンなので、親の木と同じ性質を持っています)
ここまでたくさんの種類を持っているところは他にありません。
財団では一般からの寄付も募っておりますので、
ご興味のある方は是非お願い致します。
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