2013年7月25日木曜日

よかれと思ったことが

暑さでパソコンも暴走したりで、
こんな時にわざわざ写真整理をしなくともと思いますが、
いろいろ古い写真の中に興味深いものがあり、
どんどん時間が過ぎてしまいます。

今回もまたロンドンです。
"Temple"という地下鉄駅の名前にもなっている古い教会、
Temple Churchがあります。

無理に日本語に訳すと「寺教会」と意味不明になってしまいますが、
これは「テンプル騎士団の教会」という固有名詞です。
12世紀に最初に建造され、後の時代に度々改修され現在の姿となりました。

これは2000年当時の写真です。
なんだか、えらく汚く見えますね。

あちこちはつぎはぎです。
 ちなみに、使われているのは石灰岩です。
良く見ると、表面の膜の下から風化してるように見えます。

継ぎ目のモルタルも落ちてますし、石の表面もぼろぼろ。

このあたりの修理はまだきれいな方。

角も何度も修理されている様子。

で、ここからは19世紀に作られたポーティコの装飾部分です。
 他の19世紀の教会と比較してもぼろぼろです。

拡大すると、部分的に模様が落ちてしまっているのがわかります。


特に、柱頭部分の風化がひどく見えます。

ゴシックアーチの天井は、新しいモルタルが塗られているようです。





この、石灰岩(limestone)のひどい劣化の理由がなんと、
19世紀のすさまじい大気汚染による煤煙
(シャーロック・ホームズでもよく出て来ますが、
名物のロンドンの霧の原因は石炭の焚きすぎなどによるスモッグでした)
による石の表面の汚れ防止と
防水のためにと、石の表面に塗られた亜麻仁油(リンシードオイル)が
逆に絶好の細菌のすみかとなり、
何も塗らないより劣化が進んでしまったことによるのだそうです。

酸性雨による被害は建物の外側ですが、
これらは全て屋根の下で発生しています。

当時、良かれと思って行った処置が逆に物の劣化を促進してしまう、
近年では、アクリル樹脂で表面をコーティングしてしまうことで
逆に通気を悪くしてしまい、コーティングの下に水分がたまり、
そこにカビなどが発生する問題などが起きています。
年月が経てみないとわからないというのが保存修復の難しいところです。

久し振りに公式ウエブサイトを見てみたら、
外壁がきれいになっていて、安心しました。
時間をかけて修理したようですね。

ちなみに、当時、中はこんな感じでした。



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