2015年8月26日水曜日

お地蔵さんの前掛け

つい数日前が地蔵盆でした。
今年は当日も隣町の病院まで母親に付き添っていたため、
気づいたのは小学生の声が賑やかに聞こえてきた夕方5時過ぎでした。

数年前まで、近所の方がお地蔵さんの前掛けを作って持って来て下さっていて、
うちにかなりのストックがあったのですが、
その方も高齢になられたことで、もう作って下さらず、
今年は新品がないままの地蔵盆となってしまい、
お地蔵様には申し訳ないことになりました。

うちのお地蔵さんは屋根がない場所に置かれているため、
古い前掛けはさすがにみすぼらしいので、
とりあえず外して、これを参考に作ることにしました。

1年間雨風と日光に晒された前掛けです。

比較のため、同じ布で作られた前掛けを並べてみました。
上が裏側、下が表になっていた方です。
良く見ると特定の場所の劣化が顕著です。

染料の種類によってはこんなに色が抜けています。

こちらも上が裏、下が表になっていた方です。
特にオレンジっぽい赤が抜けてしまっていることがわかります。

布の素材と、染料の組み合わせで、
何が耐候性に優れるのかわかる、良い実験になるなと思いました。
そして、これまでうちは古い前掛けは普通の燃えるゴミの日に出していたようですが、
お寺でちゃんとお焚き上げしてもらわないといけないそうです。
いや〜、勉強になりました。

さて、自分で作るにしても、うちのお地蔵さんは6体もあります。
赤い古布はなんとか見つかったものの、まだ縫っている余裕がありません。
すぐに使えるものはないかと考え、そう言えば去年インドで、
ヒンドゥーの神様用の前掛けを買ってきていたことを思い出しました。

ヒンドゥーの神様用のも赤く、金模様とスパンコールでゴージャスです。
(上は裏側)
しかし、残念ながらうちのお地蔵さんには少々小さすぎました。

で、どうしてお地蔵さんは赤い前掛け(よだれかけ)をかけているのか?
ネットで検索をかけたところ、
亡くなった赤子の使っていたよだれかけをお地蔵さんにかけることで、
赤子の匂いで、お地蔵さんに自分の子供を見分けてもらうためなのだそうで、
赤でなく白の地域もあるそうです。
検索をかけるとたくさんの解説ページが見つかりました。

しかし、ヒンドゥーの神様も赤い前掛けをかけるという事実から、
お地蔵さんにも同じく、赤色の意味があるのかもしれません。

お地蔵さんの前掛けやよだれかけを販売しているところが結構あるということも、
今回初めて知りました。
さて、早く作らないと。

なつやすみのしゅくだい

5月に地元で開催された地産地消イベントで
地元の素材を使った工芸品の製作販売をしたFさんの小学生のお孫さんが
夏休みの理科の課題で染色をしているというので
お盆ちょっと前に、どんなふうに実験されたのかを見せていただきました。
既に乾燥したサンプルがクリアファイルに分類されていました。
染めに使われた素材は、木綿、絹、らくがきちょうの紙、そして白い革です。

100均のらくがきちょうに挟んで乾かしたそうです。
これは無媒染のタマネギの皮。
左から木綿、絹(2枚づつ)、紙、革(1枚づつ)

紫タマネギの皮はきれいなピンク色です。

しかし、何故か明礬媒染したものは、色がまだらになってしまいました。

このらくがきちょうだそうですが、
製紙工程で加えられた薬の影響でしょうか?

さて、お盆明け、
うちにある藍の生葉を使いたいということで、
お孫さんとお嫁さんとで藍摘みにいらっしゃいました。


小雨の影響であまり大きく育っていなくて残念ですが、
それでも本数があるので何とかなりました。
せっかくなので染め作業の方も見に来て、ということで、
お宅までお邪魔しました。

この生葉染めの方法は、Fさんが隣町の書店にこれしかなかったという
山崎和樹先生の
を参考にしました。
山崎先生のお父様、山崎青樹先生は
藍の生葉染めを長く研究されておられた方ですから、
これしかなかったという本が良い本で良かったです。

摘んだ藍から、葉だけを取ります。

葉50gに水500mlを加えてミキサーにかけます。


ミキサーにかけるとまるで青汁。

それを布で濾し、
二倍量の水を加えて薄めるように説明されていましたが、
最初は薄めない液を使い、時間を計りながら浸しました。

本には15分浸すとありましたが、
約半分の時間の7分浸した状態で、左から木綿、絹、革、紙です。
藍の濃度が高いからか、特に絹はすぐにきれいな青に染まりました。

この直後、父親から呼び出しを受けて家に帰らねばならず、
この後に液を薄めて浸し時間を変えて実験した結果は見られませんでした。

最近の小学校では、新学期の初日に宿題を忘れてしまうのを防ぐため、
一部の課題は8月のお盆明けの登校日に集めてしまうのだそうで、
この課題は既に提出したということで、ブログへの掲載許可をいただきました。

らくがくちょうの紙に挟んだものは何故変色したのか、
他の植物だとどうなるか、などなど、
まだまだ来年いろいろ実験できそうだということで、
楽しみにしています。

2015年8月16日日曜日

葛染めの実験

酷暑もあってか、今月突然母親が動けなくなり、
病院往復と家での介護でてんてこ舞いの日々です。
ようやく涼しくなり、母親もちょっとましになってきたので、
花の咲く前の時期を逃してはなるものかと、
去年からやりたかった葛の葉染め実験を決行しました。

葛の葉を使った染めについては、
この手染メ屋さんのブログにも書かれていますが、
「草木染め」の二代目、山崎青樹先生が考案された方法です。
葛の葉を炭酸カリウム水溶液で煮出すことを繰り返し、
1煎目、2煎目は使わないで
3煎目以降の液を使うときれいな緑が染まる、というのです。

葛は実家から自転車で5分くらいの国道脇に大量に生えています。
用事で通りかかる度に「あ〜、摘んで帰りたい!」と思っていましたが、
比較的朝も涼しく、天気も良い今日、思い切ってそのためだけに出かけました。
根があるのは国道脇の空き地ですが、もちろん他人様の土地ですから、
中に入らないよう、道路にはみ出ている部分だけを採りました。
さすがはアメリカで「モンスタープラント」と呼ばれるだけあり、
かなり大量に採ってもほとんど見た目は採る前と変わりません(笑)

葛はマメ科植物ですから、大豆の葉とも似てます。
もしかしたら大豆でもできるかなあ?

炭酸カリウム3グラムを3リットルのお湯に溶かし、
そこに葛の葉だけを入れて煮ました。
お浸しにして食べられそうないい色です。

水の色がよくわかるように、染めようと思っていた白いタオルを一緒に入れて
ついでに煮込みました。
こんなおおざっぱな方法、本職の方には怒られてしまいそうですが、
とにかく、今の段階ではこんな黄色っぽい色です。

一煎目の液とタオルをバケツにあけ、
二煎目も同様にしてみました。
1煎目とはあきらかに水の色が変わり、緑色です。
葉もかなり柔らかくなってちぎれて来ました。

左上から1煎目、2煎目、下が3煎目です。
写真だとわかりづらいですが、3煎目の緑色の色がかなり濃くなりました。

媒染する前の状態です。
木綿なので、それほど濃く染まっていませんが、
色の違いがおわかり頂けるでしょうか。
3煎目以降も、4煎目、5煎目と染め液は取れるようですが、
容器が足りないので今回はここまで。

明礬で媒染し、また鍋に戻して加熱、冷まして媒染を3度繰り返しました。
一昼夜放置して媒染を繰り返せばもっと濃い色になるはずですが、
残念ながら今日明日はそこまで余裕がないので、また別の機会です。

絹や羊毛を使い、硫酸銅で媒染するととてもきれいな緑色になるそうですが、
木綿のタオルでもそれなりの色に染まりました。
世間では迷惑な雑草としてうざがられている素材で、
それも、黄色と緑の2色が染められるというのは大変面白いですね。

染材を一度煮出しただけで捨てるのでなく、
何度も、それもpHを変えて煮るという、単純でありながらコロンブスの卵的な
この方法を考案された山崎青樹先生に改めて敬服する次第です。

2015年8月1日土曜日

ちいさな藍、大きな出会い

7月の最終週末、
京都北部の北山杉の産地、右京区の京北山国の家で開催された南アジア研究集会で
ラックについてお話をさせていただきました。

右京区と言っても、京都中心からゆうに1時間半のうねうね道の先で、
京都市の広さに改めてびっくり。
京都市に合併して今年で10年だそうです。
そんな場所なので、京都駅から観光バス一台を貸し切りでの移動で、
運営担当のお二人がテント泊になるほど多くの方が参加され、
多くの方に興味を持っていただけて有り難かったです。

さて、2日目の終了後、運営担当のおひとり、Uさんから、
せっかくの機会、少し足を伸ばし、
さらに北にある美山町の「ちいさな藍美術館」に行きましょうと誘って頂きました。
以前から行きたいと思いつつ、車がないと辿り付けなそうな場所だったので、
願ったりかなったり、もちろん二つ返事でOKです。
運営担当の皆さんと会場の片付けをし、朝食の残りのご飯で昼食を済ませ、
4人で一台の車に乗って出発。
美山町も市町村合併し、現在は南丹市です。
かやぶきの民家が軒を連ねる美山の北村。
遠目から見ても、屋根の状態が良いのに驚きますが、
ちゃんと屋根用の茅を育てて、何年かおきに葺き替えているそうです。
美術館は、この集落の右手方向の中腹にあります。

こちらがちいさな藍美術館の入り口です。
左手に植わっているのは藍です。
この写真を撮った道までは車が入れます。
左手の茅葺きの建物が住居兼仕事場兼展示室兼売店です。
ここは、新道弘之さん個人のコレクションを展示する個人の美術館なのです。
(※このブログを公開するためご連絡したところ、
但し、新道先生はいけません。
公開されるなら、センセイは廃業しましたので、新道さんと読んでください。」
とお返事をいただいてしまいましたので、
大変恐縮ながら「さん」で書かせていただきます。)



建物は寛政8年(1796年)に建てられた、旧中野八郎右衛門家住宅です。

暑いので、まずは何か一杯飲んでから、と言われて案内された右手側には、
井戸からの水が飲める蛇口にコップが用意されていました。

この石製の流しも、このお宅と同じ江戸時代からのものだそうです。
この薄さと形状、石工の凄い技術にまずは感心、
美味しく冷たいお水に続いて感心。

入ってすぐはミュージアムショップと受付です。
ここにはご夫妻の作品などが販売されています。

その奥、右手に入るとお仕事場です。
とてもきれいで整頓されていて、無駄がありません。

新道さんが開発されたという、
嵐絞りをもっと効率良く作る器具をさっそく説明してくださいました。
着尺を一定の力で引っ張りながら皺をつけて巻き取っていくことで、
有松・鳴海などで人力で何日もかける仕事がもっときれいにできるという発明です。
新道さんはさらっと説明されましたが、
この筒の太さや布の貼り方、角度、距離、何度も試行錯誤されたのは間違いありません。

これがこの器具を使って皺をつけて染めた着尺です。

並ぶ藍甕が壮観です。

全く臭くありません。

 奧には作品を展示するギャラリー
ここだけ空気が違います。

 こちらは二階の展示室。
新道さんの藍染コレクションが並びます。
大変興味深いことは、
合成藍で染めた近代の染織品でも、技術が優れていたりするものなら、
分け隔てなく展示されていることです。
量産されたため顧みられず捨てられてしまったような品が
ここにはきちんと残っているのです。
「もうね〜、今はこんなんできへんよ〜。」と言いながら見せてくださいます。
偏見なく、確かな技術を見る目があるからこそ物の価値がおわかりなんですね。
だから、稀少な品が自然と集まって来るし、
いろいろな方が先生に托されたくなるのでしょう。
「うちの特徴は、展示品でも動かして見られること。」と、
貴重な版木の使い方をひっくり返しながら説明してくださいました。
裏にも模様が彫られているのです。

もちろん、この展示環境にも圧倒されます。

下で見せていただいた嵐絞りの一種の、工程を見せる展示品です。

確かにこれだけ細かい皺を人の手でちょっとづつ正確に折りたたんでいくには
途方もない時間がかかるのは理解できます。

展示品をまだしっかり見終わらないうちに、
「もう暑いから、下でお茶でも飲もう!」とお声がけ。
後ろ髪を引かれながら降りると、またそこは別世界でした。
秋の紅葉はさぞかしきれいでしょう。
春はしだれ桜が咲くそうです。

連れて来てくださったUさんは、
実は新道さんとこの美術館では10年ぶりの再会で、
まさかのような奇跡的な話も。
そんな事件もここならさもありなんと思える不思議な場所でした。

感動さめやらぬ帰り道、車の脇に大きな鳥がいきなり近くに舞い降り、皆びっくり。
野生の鷹でした。
あまりの素早さで、なんとか一枚だけ撮れた写真には、
まるで加工したようにタカの背景に月が写っていました。

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ちいさな藍美術館
京都府南丹市美山町北上牧41
http://shindo-shindigo.com/
Tel/Fax: 0771-77-0746
開館時間:午前10:00~午後5:00
入館料:250円
休館日:木、金曜日(祝日開館)
冬季休館:12月1日〜3月31日
※展示替えなどで予告なく休館のこともあるそうですので、
特に遠方からの訪問前には電話でのご予約をお奨めします。

蝉と漆

梅雨明け宣言後にもしばらく雨が続いたものの、
先週末の台風がかすることもなくいつの間にかいなくなってしまったら、
今度は猛暑ですね。
蝉の鳴き声が響き渡ります。
蝉の声のする方に行ってみたら、
漆の木に何匹かとまっていました。
どこにいるかわかりますか?

横から見るとよくわかります。
もしや漆の樹液を吸っているのか?と、
小型デジカメの望遠を最大にしてみましたが、

単にとまって鳴いているだけの模様。
漆の樹液を吸っていたら大発見?だったのに、惜しい!
しかし、うちに20本以上ある漆の木の相当数から蝉の声が聞こえるので、
もしかしたら何匹かは吸っている可能性も?
だとすれば、蝉を使った漆液採取ということも将来的に可能に?
と、暑さのせいか、わけのわからない妄想も(笑)。

そう言えば、漆を使ったのではないかという蜂の巣の方は、
さすがに梅雨時、物干し場に何個も蜂の巣があっては困ると、
私の留守中に父親が端の方の一つを残して取ってしまっていました。
しかし、巣の痕跡は残っていますので、
残っている巣から蜂が巣立った後、
まとめて採取して、いつか分析を依頼したいなと思っています。