2017年11月16日木曜日

ビーバーがやってきた

2年前の秋の小雨の日、
近くでチェーンソーの音が鳴り続けていました。

うるさいなあと思いながら出かける支度をしていたら
「近くの雑木林を切っている」という父親の一言。
慌てて見に行ったら、既に大量の木が切り倒されていて唖然。
切った木は既に何度か捨てに行っているという話で、
倒されていたものから、とにかく運べる大きさのものを選び、
図々しくも作業者の方にも手伝ってもらって、
電車の時間ギリギリまで必死で家まで運びました。

その中には椿もあり、
これを乾燥して保管しておいたものが、後日、椿灰になったわけです。

生木の材はそのまま置いておくと割れるので、
後日、一部を父にチェーンソーで半割にしてもらいました。

しかし、あまりの大量に、途中で断念。
その後これらを使う時間の余裕もなく、置きっぱなしになっていました。

そして今年の夏、たまたま小学校の横を通りかかったら
桜の木の剪定を行っている最中でした。
残念ながら太い枝は前日に切っちゃって、もう捨てちゃったけど、
作業場に大きなモッコクがあるから見に来る?
と言われました。

あまりにも立派な木なので捨てるにしのびなくとっておいたものの、
邪魔なので早くなんとかしたいとのお話でした。

こんな大木をどうして良いのかわからないけれど、
捨てられるのはは勿体ないし、
うちまで運んでくれるというので、
とにかくいただいてから考えることにしました。

しかし、その後、父が二度入院したりのドタバタ続きで、
自分で何かするのはもう無理!と、困っていたところ、
10月のさじフェスにお店を出されていた、三重県の武田製材さんが。
当日の販売の様子が以下の写真ですが、
別名「ビーバーハウス」の名の通りの圧巻の品揃えでした。

残念ながら初日に既に売り切れた木も何種類もあるものの、
とにかくこの数!
そして、親切にそれぞれの木に説明も書かれています。

それぞれの木にも名前が貼られていて、
複数を買って帰って「これ何だったっけ?」ということもありません。
至れり尽くせりです。

私は初日には参加できませんでしたが、初日は女性が多く
果樹の材が大人気でほとんどが売れてしまったそうです。




右奥に見えるのがウィスキーの樽の材です。

これらはスプーン作りに適当な大きさにカットされたものですが、
後ろに見えるように大きい木も持って来られていました。

どんな雑木も扱われるということで、
それならうちのモッコクを持っていってもらえないかとご相談したところ
来ていただけることになりました。

軽トラにクレーンをセットしてあり、木を挟んで持ち上げます。

鳶口はこういう時に活躍するのですね。


これほど大きなモッコクですが、
ひとりで動かせないこともあり、数ヶ月屋外に放置していたため、
残念ながら既にヒビが入ってしまっていました。

今後、こういう出物があったら、切り口に木工用ボンドを塗って、
雨があたらないよう何かをかぶせておくようにしなければと反省です。

この他に、2年前に運んだ数種類の木と、
5年以上前に東京の友人宅で、
何かに使えないかと言われもらっていたものの、
堅すぎて加工できなかったモミジの木なども持って行っていただきました。
(重くなりすぎても申し訳ないので、一部は残しています)

うちは田舎なので、近所で木が切られているのも良く見かけます。
しかし、そのほとんどは捨てられているようです。
知らないお宅の木を通りがかりでいただけるわけでもありませんから、
いつも勿体ないなあと眺めるばかりです。
全国に武田製材さんのような加工業者さんがあればと思います。

武田製材さんについては以下のブログなどに詳しく紹介されています
是非一度行ってみたいと思うと同時に、
間違いなく欲しいものだらけだろうから、少々怖いような(笑)



2017年11月13日月曜日

日本の匙

少々時間が経過してしまいましたが、
さじフェスというイベントがあり、
3日間のうち2日だけ参加して来ました。

その時の様子は既に多くの方が書いておられるので省略しますが、
懇親会の時、スプーンの歴史についての話題になり、
エジプトの化粧スプーンのような超古代の匙以外
(中でも一番気に入っているのがこの匙
匙の歴史について、
これまであまり気にとめたこともなかったなことに気づきました。

汁物を料理したり配膳したりする場合
古くから匙状のものを使っていたことは間違いありません。
しかし、木製品、金属製品の場合
どうしても地中で腐ったり錆びたりして
なかなか残りませんよね。
日本の匙の原点は、貝殻に柄をつけたものだということですが、
もちろん動物の骨なども使われていたようです。

そんなところで、最近、
奈良文化財研究所に併設されている平城宮跡資料館の展示を、
大学生の研修旅行以来初めて見る機会がありました。

メインは、近年国宝に指定された木簡の展示でしたが、
そこの展示品に、木製漆塗りの匙が!
柄の部分はなくなっていますが、
頭は現代のスプーンと同じ形をしています。

これが、奈良時代の貴族の食事の再現風景だそうです。

想像復元された匙がこちらです。
柄の長さや形状は不明だそうですが、
頭は当時の器の底の形に合った形状なのですね。

木製の匙は弥生時代の遺跡からも見つかっており、
逆に、箸は奈良時代の遺跡から見つかってはいるものの
その数は実はそれほど多くなく、
貴族など一部の人が使っていただけで、
庶民は手で食事をしていただろうということ。
箸が広く使われるようになったのは平安時代から、というお話でした。
日本で箸より匙の方が古くから使われていた、というのは
古代の食事事情と密接に関係しているのでしょう。

(ところでこの平城宮跡資料館は入場無料の上
特別展の木簡の冊子まで無料でいただけたのにはびっくりです。)

さて、さじフェスでは、
日本の木製スプーン作家さんの実演のほか、
スウェーデンのスプーン作家のヨゲ・スンクヴィストさんによる
講演とスプーン製作ワークショップがありました。

生木を使い、鉈とフックナイフを使って形を作る方法は
これまでの自己流のノミ、小刀、彫刻刀を使う方法よりもはるかに楽で、
忘れないうちに自分も、10月の台風22号で倒れた木の枝を利用して
スプーンを試作してみました。

性格がひねくれているので、
木の割れとよじれをそのまま利用した、
ちょっとひねくれたスプーンになりました。