2015年12月30日水曜日

雲南民族博物館

さて、最後の日です。
雲南省は少数民族がたくさん住む地域ということで、
「雲南民族村」というテーマパーク式の観光施設が作られており、
ちゃんとその少数民族の人達が織物を織ったり踊ったりしているという話でしたが、
その正面に、雲南民族博物館という施設もあります。
(※ウエブサイトのトップにFlashが使われているため、
iPhoneとiPadしか持って行かなかった私は滞在中全く見られませんでした。)

民族村は広いので見るのに一日かかるという話を聞いており、
既に予定が押してしまっていたので、
ここは欲張らずに、民族博物館一ヶ所に絞りました。
ここは市内中心地からタクシーで40元くらいでしたが、バスも出ています。
タクシーの運転手も、民族村は知ってても博物館は知らないようで、
「民族村の反対側にある博物館」という説明で理解してもらいました。


雲南省博物館よりは小さいものの、ここも巨大で、入場無料です。
今年で開館20周年だそうですが、
あちこちで改修工事が行われていて、一階で空いていた展示室はわずか3ヶ所。
全体で半分くらいの展示室が閉鎖されていたような印象です。

その中でもまずここの目玉は、染織品コーナーですね。
雲南省に住む20の少数民族の衣装の展示コーナーです。

その反対側には、シーサンパンナの樹皮服など原始的衣服が。

真ん中には服の後ろ側も見られるような工夫された展示になっています。

少数民族に限定していないので、ちゃんと漢民族の衣装もあります。

技法材料コーナーもちゃんとありました。

苗族の臈纈染めの道具です。貴重です。


織機や糸繰り、紡績道具も展示されています。

他にほとんど誰もいなかったところに、
学生の団体がやってきて、男の子も女の子も真剣に見て写真をばしばし撮っていました。

銀細工アクセサリーも裏表が見られる展示になっていて、

ここにも道具が展示されていました。
最後は動画上映コーナーになっており、
シーサンパンナの樹皮服作り、苗族の麻織物製作工程、
少数民族の儀式などが流れていましたが、
この日は前日の汗ばむ陽気と比べ、最高気温が6℃という寒い日で、
暖房設備のない開放式展示室でガタガタ震えて見ていたのは私だけでした。

次の展示室?と思って入った場所は、骨董品販売店?喫茶店?
入り口には何の説明も看板もないのはさすが中国。

次の部屋は、絵で見る上流階級の服装のコーナー

ここでは展示品の状態の悪さが気になって、様式どころではありません。(苦笑)

次は本や書き物コーナー
もちろん紙や、

経文を書くバイタラヨウなど。後ろには製作工程の解説写真もありました。

少数民族の神様やらの絵も面白いですが、
このナシ族の使う象形文字のトンパ文字は特に有名ですね。
これら少数民族の言葉や書き物の調査をする研究者も多数いるようです。

二階に移動し、すぐに本売り場がありました。
ここの品揃えは素晴らしく、買って帰りたい本がいろいろありましたが、
12時から1時までお昼休みということで後で出直しに。
次に焼き物コーナー。
製作工程まで写真で解説されています。

この化け猫とでも言うか、おそらく魔除けの置物が種類が豊富で面白かったです。

続いて、民族楽器コーナー

民族工芸コーナー
民画

切り紙

影絵

民間信仰の置物

金属工芸品

やはり漆やラック塗装品はないですね〜。

しかし、次の農・漁・建築などのコーナーには
タカ足酒器で有名なイ族の漆器などがありました。

次は瓦コーナー

お面コーナー
特別展が展示替え中だったので、これで二階はおしまいです。

書籍売り場に戻り、本を物色。
しかし、日本へのお土産をいろいろ預かってしまった後だったこと、
写真を山ほど撮影したこともあり、今回は最小限にとどめました。

一階の入って右側には茶藝館という部屋もありましたが
お客さんが少なかったせいか、スタッフの休憩所のようになっていました。
お茶の葉を固めて作ったクリスマスツリーなんでしょうか?

こういった飾り塼茶というのは、お茶としていいのか悪いのか、
中国が豊かになったからこそできる余裕なんでしょうね。

というわけで、当日の寒さもあり、
この後、入場料が90元の向かいの民族村を見る時間的体力的余裕もなくなり、
今回の調査を終えることになりました。
インドと違い、地元で採れるラックが工芸品にほとんど使われていない様子が
改めて確認できて、大変興味深いです。


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この調査は生き物文化誌学会さくら基金の助成で行われました。

雲南省博物館と官渡古鎮

さて、郊外に移転した新しい雲南省博物館です。
「地球の歩き方」では地図外になっている場所です。
前日に徒歩で市内を歩いたおかげで、なんとなく距離感もつかめましたが、
中国はGoogleがブロックされているため、当然慣れたGoogle Mapsも見られず、
慣れないAppleのMapsなどでおおよその位置と距離を確認し、
(※実はGoogle Mapsでは古い博物館の場所しか出てきません)
タクシーに乗ればなんとかなるだろうと呑気に構えていたところ、
朝、資源昆虫研究所の英語の話せるLさんがわざわざホテルまで来てくださり、
銀行での両替につきあってくれた後、タクシーで連れて行ってくれました。

昆明に10年住んでいるLさんも、古い博物館は2回行ったことがあるけれど
新しい方はまだ一度もないとのこと、
そして、捕まえたタクシーの運転手も場所を正確に知らないということで、
おそらく近いと思われる政府の建物の前で止めてもらい、
警備員に聞いてやっと場所がわかりました。

やはり中国、建物も敷地もやたらに巨大です。
入り口がどこかわからず、結局建物を一周する羽目に。
中国人のLさんも「典型的な中国の建物、無駄に広い」とため息。

5分くらい歩いてやっと正面玄関です。でも人がほとんどいません。

中も吹き抜けがやたら大きく、人はほとんどいません。
しかし、入場無料というのはさすがです。
まずは1階の特別展「茶馬古道」から見ました。
さすが、お茶で有名な雲南省です。
雲南からチベット、北方、そして太平洋の方までのルートです。

最近、樹齢千年のお茶の木というのも脚光を浴びているようですが、


お茶はチベットやモンゴルでは貴重なビタミン源です。


チベットの居間。


美しい玉器や、茶器や、馬の鞍や、塩まで。
かなりお金をかけたであろう巨大写真と解説パネルだけでなく、
各地のお茶にまつわる面白い品がいろいろ展示されていましたが、
残念ながら図録のようなものがなかったため、
後でゆっくり中国語の解説を読むため、写真を撮りまくりましたが、
果たして自分が生きているうちに読むことができるのか疑問です(苦笑)

さて、ここは博物館と言っても、
アートギャラリーと、自然史・地域歴史博物館も兼ねており、
中国人画家の回顧展と、鉱物・化石や恐竜の骨などの展示室が続いておりました。
こんな首長竜まで地元から出て来るとは。
前の博物館では展示されていなかったものがたくさんあるそうです。

二階からは地元の歴史展示が始まりましたが、
少数民族が多く居住する地域ですから、
あまりに凄い品がいろいろで、
写真を次々アップしていては全くきりがありません。

生き生きとした動物の表現に目を奪われます。

有名な牛のテーブル

そして、このタイプのお金入れが多種ありました。

漆器コーナー。でも漆はマイナー工芸のようです。

ヒョウタン形の笙

もちろん土器もいろいろ

仏像コーナー

館のチケットに印刷されている王冠。

しかし、明確にラック製とわかる品はこれだけでした。
封蝋は「火漆印封」と言うんですね。

少数民族コーナーもあります。
既に化学染料っぽい色が多いですが、
ラック染めのものもこの中にあるのかも・・・

最後は雲南の近代展示で、
中国3,000年(4.000年?)の歴史と比較するとやたら長く感じられる
戦争コーナーがあり、日本人にはちょっと居づらい感も。

最後に雲南陶器コーナーです。
陶器と言えば中国は北の景徳鎮が有名ですが、
雲南にも複数の窯があるようです。

というわけで、1階から3階までの全ての展示を見るのに
途中急ぎ足でも3時間半かかりました。
ミュージアムショップもティーショップもありますが、
場所はきれいでも、あまりやる気のない品揃えだったのが残念でした。

結論として、市内から離れたここまで展示を見に来る価値があるかどうか?
タクシー代金は中心地から50元ちょっと(1元を20円として1,000円くらい)
時間は渋滞程度にもよりますが1時間くらい、
地下鉄なら最寄り駅「星輝路」から徒歩で15分くらいかかりますが、
中心地から乗車時間約20分で3元(60円くらい)でした。
常に大混雑の北京の中国博物館と比較して、
逆に日本では珍しい優品をゆっくりと見られることを考えると
半日を費やす価値は十分あると思います。

博物館から徒歩5分くらいの場所には、
「官渡古鎮」という、これまた古い建物を商店街にした地域があり、
ここの中程にあった食堂で遅い昼食を食べました。
博物館側に近い方の建物は古い様式を踏襲した新しい建物ですが、
奧の方に行くと古い建物が残っています。



住宅や商店だけでなく、古いお寺と広場もあります。


こんなストゥーパがあったり

商店街を少し外れると落ち着いた感じの場所もありました。
博物館も良いですが、町も生きた博物館ですね。

昆明の地下鉄(一部高架)は新しく、駅も車体もとてもきれいですが、
駅に入る時に、飛行機に乗る時のような手荷物検査があります。
パリのテロ事件の後にさらに警備が強化されたそうです。
中国だからかなり混んでいるんじゃないかと思っていたら
意外にそうでもなく快適でした。

というわけで、Lさんもまだ一度も行ったことがなくて実は楽しみにしていたという
市内西南部にある民族博物館の訪問はまた翌日となりました。

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この調査は生き物文化誌学会さくら基金の助成で行われました。