2015年12月28日月曜日

ラックを訪ねて中国編(3)

一旦飛行機で昆明まで戻り、
翌日からはLさん運転の車で墨江(モージャン)に向かいました。
途中、世界で一番高い橋、というのを通りましたが、
上を走っている限り、高いのかどうか正直よくわからないものです。
一見、空気が悪いのか天気が悪いのかと思えますが、これは霧で、
さすがはお茶の名産地です。

到着後、地元ラック会社のCさんご夫妻と昼食
地元の烏骨鶏スープは特に美味でした。
これは山苦瓜という野菜で、山で採取するそうです。

庭にはジャックフルーツがこんな状態で。
暖かい土地というのがよくわかります。

さて、昼食後はCさんご夫妻のラック工場へ。
あれ?日曜日でも工場は稼働してるんですか?
インドでもそうでしたが、
収穫後の繁忙期は土日も稼働し、
その分の休みは別の時期にまとめて取るのだそうです。
まずは原料のラックを砕いて

ふるいにかけます。

それを水洗いし、

洗浄した水はフィルターを使い濾します。

さらに赤い液は濃縮されて、色素を取りだします。

残った洗浄水も、近年は規制が厳しいため、
沈殿槽を何度も通してきれいにしてから処理されるそうです。

シードラックの乾燥はインドと違って屋内です。
インドでは、一日で乾燥させないと質が落ちると言っていたのですが、
ここでは別にそうでもないという話で、
早く乾燥するときも、そうでない時もあるとのことでした。


この工場は最大で年間300トンのシードラックと
2トンのラック色素を製造しているそうで、
シェラックは作っていませんが、
やはり日本に大量に輸出しているそうです。

墨江にはもう2件のラック工場があり、
翌日はHさんの工場を見学しました。
Hさんの工場では、シェラックとシードラックとラック色素の他、
現在、脱蝋シェラックを試験的に製造しているそうです。

この会社はCさんの会社より少し大きく
年間生産量は最大500トンで、親類の方が仲買人として働いており、
地元だけでなくラオスやタイにも買い付けに出かけているようです。

ラックを水をかけながら砕き、
洗浄します。

同様に赤い色素を含んだ水はフィルターを通して濾されて、色素にされます。

水はさらに沈殿槽を通してきれいになってから流されます。

シードラックは同様に屋内で乾燥されていました。

そのシードラックは、加熱して溶かして濾され、

ある程度冷ましてから

ローラーにかけて薄く延ばし、

冷えたラックは砕いて箱詰めされ、

1箱20キロ単位で出荷されます。

あれ、この山は何?

これはフィルターに残った「ラック泥」とでもいうようなものなんですが、
この後乾かして燃やすだけなのだそうです。
なんだか勿体なくて、何かに使えないものか考え中。

インドだと、ラック精製時に出来る屑や粉は
工芸材料などとして地元で有効活用されているのですが、
なぜか中国ではラックを使う地元産業は皆無なのだそうです。
養殖自体は数百年の歴史があるという話ですから、
なぜ地元に工芸産業が育たなかったのか、
塗料として漆が使用されている形跡もないので、なんとも不思議です。

ちなみに、この会社の事務所の机椅子はちゃんとシェラック塗りだそうです。

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この調査は生き物文化誌学会さくら基金の助成により行われました。


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