2013年4月29日月曜日

素材の宝庫

少々季節感が違う写真で申し訳ありませんが、
2004年10月末にドイツのAichstettenという町に行きました。
この地名だけで、ドイツの一体どのあたりで、
それより一体そこまで何をしに行ったのかわかる人は少ないかもしれません。
人口は1万人にも満たなくても電車の駅も、
さらにホテルも2軒あるという(英語が一切通じませんが)、
ヨーロッパで言えば一種の「町」です。

ここには、世界中の美術館博物館の保存修復家が利用している
美術工芸保存修復材料販売の会社、
Kremer Pigmenteがあるのです。


ロンドンに住んでいた当時、天然樹脂について問い合わせをしたところ、
ロンドンからなら安いフライトが近くの小さい空港まであるから直接見に来たらどうか?
というお返事を、社長のGeorg Kremer博士より直々に頂き、
それは有り難いと、
社長さんのご都合にスケジュールをあわせて出かけました。
社長はいつも世界を飛び回って素材を集めておられるので、
なかなか本社にもおられないそうです。

Aichstetten(カタカナで書けば「アイヒステッテン」でしょうか)の
メイン通りの一本裏の道の真ん中あたりにきれいな建物がありました。


古い水車のある建物を利用された本社です。
壁は天然土顔料を使っての塗装がされており、温かい色合いがきれいです。

 手前に古い水車で使われていた石臼があり、
その後ろには材料を粉砕する新しい機械が見えます。

最寄り駅から空港まで1時間くらいとは言え、
めぼしい観光地があるわけでもないこの小さな町に
どうして本社を構えようと思ったのですか?というのがまず素朴な疑問でした。

クレイマーさんは化学の博士号を取られた後に、
世の中にまだ文化財保存修復で使う
古典素材を扱う専門の会社がないということに気づき、
それなら自分で会社を作ろうと思い立ったそうです。
アメリカも含めていろいろな場所を探したけれど、
町中では素材の加工や、素材をストックする倉庫の場所も考えると
とても高くて手が出なかったけれど、
ひょんなことで見つけたこの、古い水車が裏にあるこの建物がとても気に入り、
ここに本社を構える決意をしたとのことです。
Colour millと言って、昔は顔料や染料を石臼を使って粉にすりつぶしていましたから。

販売している製品の並ぶサンプル棚です。

プラスチックの容器に小分けされて入っています。
各国のクレイマー製品を扱うお店にもこれらのサンプルが配られています。
 本社に直接行った特典(?)として、好きな見本を持って行ってもいいよと言われたのですが、あまりの量に圧倒され、遠慮してほんの少ししかもらってきませんでした。
後悔しています。(今でももらえるかどうかわかりません)


顔料の原石の石などが窓際に並んでいました。

 上の階が加工場になっています。
もちろんここですべてを作っているわけでなく、
他の業者さんから仕入れているものもいろいろあるそうです。

社長のゲオルグ・クレイマーさんです。
クレイマーさんは、京都のナカガワ胡粉さんから胡粉や日本画用の岩絵具を仕入れられておられる関係で、日本にも何度か来られているそうです。

クレイマーさんの製品は、ホームページのオンラインショップ。

の他、日本ではParetさんを通じて購入ができます。



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