2013年4月20日土曜日

虫と植物のコラボ

日本ではラックについてご存じない方が多いと思います。
日本では、「セラック」「シェラック」と言う名前の方がわかりやすいかもしれません。

ラックカイガラムシ(Laccifer lacca)という虫が植物に寄生して、卵を産むため、
植物から吸った樹液を元に樹脂を分泌して、いわば集合住宅を作るわけです。

というわけで、これが「スティックラック」と言う、
枝についた樹脂を乾燥させた状態です。
色が微妙に違うのは、カイガラムシの種類が違うので、
寄生する木も違うということです。
詳しくは徐々に説明していきます。


これが断面。穴のあいたところに雌が住んで卵を産んだわけです。

では、これは何に使われているのでしょうか?

合成樹脂に押されて需要は激減しているものの、
現在は塗料やコーティングが一般的です。
また、加熱すると柔らかくなる性質を活かし、
昔はSPレコードの素材とされていましたし、
塗料以前には、ここから赤色染料を取り出して染めに使われていました。
また、正倉院には世界最古のスティックラックが献納薬物のひとつとして
保管されています。

これらさまざまな用途のうちでは、接着剤という用途が最も古いと想像されます。

以下の写真は、1960年代に南アジアで使われていた封蝋数種です。

封蝋とは、封筒や小包の包装を接着するために使われていたもので、
封の上からこれをたらしておくと、それを壊さないと開封できないので、
包みが未開封だという証拠にもなりました。
また、ヨーロッパなどでは法律関係や土地所有権などの重要な書類に押されていました。右下の棒状のものが一番品質が良いもので、
上の2つは農具や刃物を木の柄に固定する時にも用いられるもので、
赤色染料を煮出した後の樹脂分だけを固めています。
いわば、廃物利用です。
「蝋」と名前がついていますが、蝋分は全体のおよそ3%しかありません。


断面は写真で見るだけだとカントリー・マームみたいですね(笑)

こちらは封蝋専用の高級品で、色素が残っているものを固めたのでしょう。
印面を鮮明にする目的か、別の樹脂も混ぜているようです。

封蝋は現在でもインド、ヨーロッパ、アメリカで作られています。

※日本でも封蠟を作っている会社があると教えて頂きました。
西日暮里にある「シールド」さんです。
ホームページの解説で、材料にある「セラミック」は
セラックの誤植のようです。

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