実は、木地師さんのお宅に行く途中の道にも、漆の木を何本か見かけました。
この地域の漆の木です。
Palangを仕上げる職人Sさんのお宅は、
木地師さんのお宅から少し離れた場所にあります。
Sさんについてトウモロコシ畑を歩きます。
昔の日本もそうでしたが、家と家の間に、いわゆる道らしいものはなく、
人や家畜が歩いたところが道になる、という感じでしょうか。
Sさんのお宅に到着。
工房は左手の別棟にありました。
Sさんは42歳。
実は2000年ごろに地元の職人さんからこの技法を学んだそうです。
右手に持っているのは、自ら地元の漆の実から絞った漆だそうです。
足元に置かれているのは工程別のサンプルです。
さて、先ほどの木地師さんが削った木から
Palangはどのようにつくられるのでしょうか?
まず、外側はこのように漆が塗られます。
そして、傷や凹みなどを、漆刻苧(うるしこくそ)で埋めます。
タシヤンツェでは合成樹脂が当たり前になっていますが、
彼はちゃんと漆を使っています!
そして、容器の上になる部分は、上蓋をはめるために段が作られています。
そして、底も漆刻苧で埋められています。
これを以前、ブータン人にラチュだと言われ、
アルコール飲料を入れる容器の底がラチュで接着されているわけがない!と
ぜひとも確認したかったのです。
塗料を塗る前の上部もこんな感じです。
黒は煤を混ぜた漆、
残念ながら赤は合成塗料だそうです。
Sさんは漆塗りだけでなく、加飾金具も作られます。
材料の金属板は、Samdrup Jonkharの向こう、
インド側のUdamaにあるメラ・バザールで買うそうです。
染色をする人も糸や媒染剤をここで買うそうですから、
まさにブータンの工芸素材市場と言えるようです。
German silverとも呼ばれるある種の合金のようです。
さて、加工の様子を見せてくださいます。
まずは、ペマガツェルで入手したという金属型を金床に固定します。
焼き鈍した金属をはさみで切ります。
加飾するPalangの太さにあわせて板を切ります。
型の溝に合う太さの針金を使い、その上から鎚で叩いて筋模様をつけます。
完成品がこちら。
続いて、この内側の模様も別の金型を使って作ります。
こちらも雌型、雄型に板を挟んで叩きます。
その他の部品用の金型です。
これらは、チベットの「リ」という硬い金属で作られているとのこと。
見た目より重く、鉛と何かの合金かと思います。
やはりブータン工芸はチベットとは密接な関係があるようです。
帯を溶接し、
磨いて、
飾り金具と注ぎ口をつけて完成です。
全く関係ありませんが、Sさんのお宅にあった石臼とざるに同行者が興味深々。
乾燥トウモロコシを粉にして見せてくださいます。
ざるの裏側です。
トウモロコシを掬う升も、漆塗りです!
さすが!
彼らにしてみたら日常の当たり前のものにもいちいちキャーキャー大騒ぎする日本人。
このブログを見て是非行ってみたい!という方もおられるかもしれません。
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この調査はサントリー文化財団の助成で行われました。
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