2013年8月1日木曜日

絶滅危惧職種5(象牙)

欧米での象牙の用途として、もちろん装飾品や調度などもありますが、
"Ebony and Ivory(黒檀と象牙)"とも言われるように、
ピアノなどの鍵盤楽器の白鍵盤に大量に用いられていました。
また、象牙加工の時に出た屑や粉を焼いたものが、
アイボリー・ブラックという黒色顔料です。
現在のアイボリー・ブラックは象牙でなく獣骨が主な材料となっています。

その他、日本ではあまり知られていないものとして、
ミニチュア絵画を描く素地というものがあります。

ミニチュア絵画とは、主に貴族などの肖像画で、
旅行などで持ち歩くだけでなく、
お見合い写真代わりに使ったりしていたようです。
16-17世紀までは羊皮紙に描かれていましたが、
18世紀頃からは象牙の風合いが肌のなめらかな質感を出すのに
好まれて使われたようです。

ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館の展示解説です。
こんな薄くスライスした象牙の上に水彩絵具で描くには、
表面を荒らしたり、酢とニンニクで油抜きをしたり、
紙を置いてアイロンで加熱したり、
また、日光にさらして漂白したりしていたそうです。

この象牙は密輸が見つかって税関に押収されたものだと解説されています。

 解説によれば、象牙の上の水彩絵具の密着度を高めるため、
水彩絵具のアラビアゴムの濃度を高くしたり、
また、雄牛の胆汁(ox gall)を加えて表面張力を落としたりしたと
解説されています。
象牙でできた絵皿9枚を入れた象牙製容器は、
ジョージ・エンゲルハートというミニチュア画家の使っていたものだそうですが、
貴重ですね。

1760年頃にはWilliam Reevesという画材店が、調合済みの水彩絵具が入った
絵具箱を販売していたと説明されています。
それだけ需要が高かったということなのでしょう。


ミニチュア画家が絵を描く画架です。
目が良い人でないと無理ですね。

今では、もちろんイギリスでも象牙の輸入はされていないので、
代用品として使われるのがIvory Nuts(象牙椰子)というものです。

表面はこんな感じですが、

削ると、象牙色の肌が表れているのがおわかりでしょうか。
堅さは象牙よりはやや柔らかい感じがします。
日本では、東京の東急ハンズでも販売されています。

これを使って作品を作る外国人の根付彫刻師が何人もいるそうです。
詳しくは、Netsuke Societyのページをご覧ください。
かなりマニアックです。


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