日本でも岸田劉生のように「劉生額」とまで言われるような
自分の絵に会う額をわざわざ作っていた人は多くないと思います。
公募展でも仮枠のままの展示がされていますし、
日本には額縁文化は根付かなかったのかもしれません。
しかし、ヨーロッパでは絵に付属する額縁の価値は高く、
時代や地域によってその様式も異なり、
英語で「金箔貼り」を「Gilding ギルディング」
箔貼り職人を「Gilderギルダー」と言います。
箔貼り職人を「Gilderギルダー」と言います。
ということで、イギリスの学校でのギルディングの授業のうち、
日本ではなかなか見られないと思うものをご紹介します。
デジカメがまだ普及しはじめた頃の2000年頃で、
当時、デジカメで写真を写していたら、周囲に人が集まってきたくらいの時代です。
このために見直してみたら容量が100KB以下の写真ばかりで、
そういえば当時のメモリーカードは8MBでした。
画像が鮮明でない部分はご容赦ください。
これらは額縁や家具、室内の飾りによく用いられる模様の一部です。
実は、このうち、木で彫られたものはごく一部なんです。
それ以外は何で作られているかと言うと、
和菓子を型抜きするのと同じ方法なのです。
これをイギリスでは「Compoコンポ」と言います。
辞書を引いてもこの意味が出ているものは少ない専門用語です。
同じ模様をいちいち木で彫るのも大変だから、
うまく量産できる方法を編み出したわけですね。
これらは伝統的なコンポの木型です。
和菓子の型同様に、ツゲなど堅い木で彫られている他、
最近ではレジンの型もあります。
このような特殊な型が彫れる職人さんも今ではほとんどいないので、
辞めた額縁職人から古い型が高値で取引されているそうです。
それでは手順です。
型にはあらかじめ、離型剤として機械油を塗っておきます。
細かい部分にもちゃんと塗っておかないときれいな形が取れません。
コンポの主な材料は、白亜(Whiting)と、膠です。
この膠は、Scotch Glueという、馬や牛の骨から作る接着力の強い堅い膠で、
家具職人が木を接着する時に使うものです。
溶かした膠を白亜の粉に混ぜます。
柔軟性を出すために、亜麻仁油少々を混ぜます。
人によってはここに紙パルプを混ぜたり、
松ヤニを混ぜて乾燥時のひび割れや極度の縮みを防ぎます。
この処方も人それぞれで、秘密にしている人もいます。
すべてをよく練り合わせます。
油を塗っておいた型に押し込みます。
空気が入らないように均一に。
逆さにして押さえ、コンポを型のすみずみまで行き渡らせます。
プレス機を使うこともあります。
型から抜きます。
写真だけだとお菓子みたいで美味しそうに見えますが、
実際は骨膠と機械油の匂いでかなり臭いです。
不要部分をナイフで切り取ります。
余ったコンポは実は再利用できるのです。
たくさん作って冷凍しておいて、必要な時に電子レンジでチン!もできるんですよ。
模様部分だけをそぎます。
これを、加飾したい額や板に膠で貼り付けます。
乾燥したら、その上に白亜粉とウサギ膠を混ぜた「Gessoジェッソ」という
白い下地を塗り、さらに、金箔の色を鮮やかにみせるための黄色の土や
赤い土を薄めた膠に溶いたものを塗ります。
そして、その上から「Gold Sizeゴールド・サイズ」という金箔接着剤を塗ります。
これはフランスのルフラン社の「ミクスシオン」という名前の
油性のゴールド・サイズで、黄色く着色されています。
ゴールド・サイズがほどよく乾いた頃に、金箔を乗せます。
このタイミングが重要です。
この場合は、リス毛の「ギルディング・モップ」という道具を使って、
細かい部分にも金箔を押し込んでいます。
画面中央下に見える黒っぽいものは
同じくリス毛の「ギルディング・ティップ」という道具で、
平面に金箔を置く時に使います。
金箔は、「ギルディング・パッド」という、鹿革が貼られたクッション台の上で
「ギルディング・ナイフ」という刃がそれほど鋭くないナイフで切り、
モップやティップで移動します。
箔がうまくモップにつかない場合は、髪の毛にある微量の油をつけたりします。
これはオイル・ギルディングのやり方ですが、
この他にウォーター・ギルディングという方法があります。
これは下地に含まれる膠分を利用する方法で、
薄めた膠水を糊がわりに使いますが、箔を置くタイミングが難しく
初心者にはオイル・ギルディングの方がやりやすいですが、
磨いて艶を出すにはウォーター・ギルディングでなければなりません。
今回はコンポについてのご説明ということで、ギルディングについてはまたいつか。
欧米の絵画の展覧会があったら、今度額縁にも注目してみてください。
飾りは木彫か、それともコンポか。
大きい額の場合は中に針金が入ったものもあります。
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