2013年5月3日金曜日

南米の堆錦

沖縄には、大量の顔料を漆と混ぜて粘土のように練り合わせて、
餅のように搗いて混ぜたものを薄くのばし、
それを切って漆器の表面に貼り付ける「堆錦」という技法があります。

これは、沖縄の気候だからこそできる技法であり、
本土でやるとなかなかこの餅状のペーストが固まらなくてうまくいかないのですが、
岡山県の漆芸作家、山口松太さんは、
ウルシオール分が多い岡山県産の備中漆を高温で加熱する技法を編み出し、
独自の作品を作られておられます。


さて、南米コロンビアには堆錦のような工芸品があります。
Mopa Mopaというアマゾンの熱帯雨林にしか生えない木
Elaegia pastoganomophoraの実
(※ネット上には蕾という説も見かけますが、
私が聞いた解説では「実」でした)
から採れる樹脂に顔料を混ぜて加熱し、
薄くのばしたものを器物に貼り付けるのです。

これは、南コロンビアのPastoという地区に住むインディアンに伝わる
伝統技法だそうです。
スペイン語では"Barniz de Pasto"「パストのワニス」と言われます。

Eduardo Muños Loraさんという有名な作家さんが、
ロンドンのギャラリーで個展をされた時に実演をされた時の様子です。

 これが原料の「モパモパ」という木の樹脂を集めたものです。
これを何度もお湯で煮て、金槌で叩いて不純物を取り出すそうです。
この工程は2-30回繰り返されるそうです。

ゴミを取り除いてから再び茹で、植物性色素を良く混ぜ込んだものがこれです。

モパモパは、加熱すると柔らかくなるのですが、水に溶けないので、
直接お湯の中に入れて茹でます。

手で良く練ってから、口にくわえて

 引っ張ると、こんなに薄く伸びます。

 細工の様子が見えやすいように、白いお皿の上で実演して下さいます。
薄くした樹脂は、お皿にぴったり貼り付きます。

 デザインナイフで、下書きもなく手慣れた感じで模様を切っていかれます。

 細かい模様もすべて下書きなしです。

 顔料を入れない状態だと、こんなに透けているということを見せて下さっています。

この透明感を活かして、重ね貼りなどの技法も可能です。

で、肝心のEduardoさんの作品の写真は撮影できなかったので、
ネットの動画でご覧ください。
何かを切って貼って作ったとは思えない、
まるで絵画のようなクオリティーです。


Eduardoさんは英語をまったく話されないので、通訳の方がついておられましたが、
日本にも来られたことがあるそうです。

その他の作家さんの動画もYouTubeにアップされています



南米には、まだまだ我々の知らない謎の樹脂が存在するのですね。

なお、この樹脂で加飾された17世紀の銅版に描かれたフランドル絵画の木彫額が
エジプトのボゴタの古い協会で発見されたという話題もあります。
これは、コロンビアという国ができる前の時代のものとされています。
(リンク先はスペイン語です)

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