ブータンの首都、ティンプーのジュンシ紙工房のすぐ近くに、
「High Quality of Bhutanese Thangkha Painting」という
チベット仏画「タンカ」の工房兼お店があります。
店内にはタンカ以外のお土産物も置いてありますが、
正面右手にはタンカに使われる顔料のディスプレイケースがあります。
土性顔料はブータン製、植物顔料はシッキムからの輸入です。
その他、日本画同様、鉱物系顔料は輸入品です。
膠とアラビアガムを併用しているのでしょうか。
ここのお店の奥では、伝統技芸院の卒業生が中心となって、
展示されていたような材料を使っての伝統的仏画を描いています。
ここの所長のペマさんも伝統技芸院の卒業生です。
「うちはネパールのタンカと違って、天然の顔料しか使っていない。
だからこんなに色が自然できれいなんだ」
と、ネパールのタンカの上に、
ここで描かれたタンカを広げて比較して見せてくれました。
左がペマさんの工房製、右の大きいのがネパールのタンカです。
こうやって比較すると一目瞭然ですね。
もちろん、ブータンでも天然素材にこだわらないタンカを描かれている方はおられます。
金粉はブータンではできないので、
ネパールから粒状になったものを輸入しているそうです。
黒地に金で描かれたタンカの部分です。細かいですね。
さて、ここで使われている天然の顔料はどこで作られているのでしょうか。
その後訪問した、東部タシヤンツェの伝統技芸院のタンカ科の先生に伺いました。
(伝統技芸院の紹介はまた別の機会に)
これらの顔料はすべてブータンにある自然の土で、
作っているのはWomrongという、
タシヤンツェから南のインド方面に向かう道中にあるということを
優秀な当時のガイドのツェテンはちゃんと覚えていてくれて、
Womrongの町に着くと地元の人に聞いてくれました。
この家の人が顔料の原料になる土を山から採取して、
選別、水干して作っているのだそうです。
壁に描かれている絵も間違いなく自家製顔料でしょう。
これが、顔料小屋です。
壁の木の上に並んでいる黄色い塊が、乾燥中の黄土です。
赤、黒、白、黄色をそれぞれ入手してきました。
翌年は、逆ルートでインドから入国しました。
洪水でガタガタになった道路を延々と3時間くらい走り、
入国手続きに2時間かかり、さらにブータン国内の悪路を数時間、
よれよれになって半分寝ていたのに、
不思議とこの場所の直前で目が覚めました。
急いで車を停めてもらって、あの家に直行。
道を挟んだ反対側の小屋は去年と作りがちょっと違っていましたが、
まだあって良かった!
これらの顔料は、タンカだけでなく、建築塗装にも使われています。
あの暖かみのある色はここで作られていたのですね。
あの暖かみのある色はここで作られていたのですね。
ブータンの大地の色で彩られた美術工芸品と建築物がいつまでも残りますように。
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