2013年5月14日火曜日

謎の技法

ヨーロッパに行くと、こんな家具を見ることがあります。

家具の名前は「コモードCommode」 と言って、
これは18世紀のフランスで流行った様式の、
二段の引き出しのついた整理ダンスです。
2台1組で置かれたことが多かったようです。

これは大理石の天板を取った状態です。
背面は単純な作りですが
正面も側面も曲面でできているのがおわかりになるでしょうか。

でも、良く見ると表面は日本の蒔絵なんです。
こんな曲面に高蒔絵?

上の欠けた部分を見ると下地は白で、その下には薄い突板が見えます。

家具工房のサインもあります。
木組みも加工の様子も日本式じゃないですね。
では、どうやってこんな曲面に蒔絵があるのでしょう???

この謎を解く鍵が、André-Jacob Roubo著の"L' art du Menuisier ébéniste. "(1770)
に出ているこれらの図です。


この図では丸太ですが、同じように日本の蒔絵の加飾された板を薄くスライスして、

熱した砂袋を使って、曲面に作った土台の木に押さえて成形し
膠で貼り付けるという方法のようです。

うまく、真鍮の飾り(Ormolu)で枠を作り、
Ormolu周囲の部分は、西洋梨の板にジェッソ下地(ウサギ膠+白亜)をし、
シェラックに黒を混ぜたものを塗った"ジャパニング"の技法で仕上げられています。
一見しただけでは全体が同じ材料でできているようにしか見えませんよね。

現在でもフランスでこの方法で家具を作っている職人さんがいるという話ですが、
残念ながら実際に作業をしているところをまだ見たことがありません。
漆の塗面や高蒔絵部分にヒビも入れずにできるのが不思議でたまりません。
しかし、これより複雑な3次元曲面に曲げられた家具も存在しますし、
(写真撮影ができない場所で何度か見たことがあります)
当時の職人は魔法でも使っているようです。

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