2014年12月9日火曜日

漆サミット in 京都

12月5,6,7日と京都で漆サミットが開催され、
私は6日の京都府立大学でのポスターセッションと
パネルディスカッションのみ見学してきました。
ポスターセッションがある会の場合、昼食時を狙って行くと人が少なく見やすいので、
その時間帯を狙って行きましたが、
1時を過ぎるとこのように続々と人が入ってきて熱気もムンムン。

今回の発表中で気になったものは、
まずは竹田城で有名になった朝来市で作られていたという
「竹田塗」復活プロジェクトに関連する、
大阪の漆屋さんの引札類の展示品のうち、
毛生え薬と白髪染め。
「けのきつとはえるくすり」「つけてはげぬ60日請合」をつけた人は
かぶれなかったんでしょうか?

そして、筑波大の方の紫外線で劣化する漆の性質を逆に応用しての、
「漆をベースとした電子回路構築手法の検討」
文化財を扱っていると、どうしても紫外線劣化からいかに漆を守るか、
いかに劣化した漆を復活させるかばかりを考えていた我々には
コロンブスの卵的な発想で目から鱗です。
こういう伝統的素材だからこそこれまで盲点であり、
ハイテク分野での応用の可能性もまだまだ未知数と言えるのかもしれません。

京都造形大の岡田先生の研究室の
乾漆伎楽面の復元研究は、制作された現物の展示もありました。

粘土原型の上に麻布4枚を貼り重ね、粘土を抜いた原型の上に
木屎(こくそ)漆を盛り上げ、必要な部分を削って成形する。

表面に錆漆(さびうるし)を塗り平滑にする。

内側はこんな感じ

白土の下地を塗って

彩色してできあがり。

従来、興福寺の阿修羅像のような脱乾漆像の場合、
ヒノキやツゲの木粉が漆に混ぜられた木屎漆を使って
復元制作がされていたのですが、
それだと完成品はかなりの重量となり、
かぶって動く伎楽面の場合、演者の負担は相当になります。
岡田先生は、軽く粘り気のあるニレの樹皮を使う方法を発見され、
数年前に奈良で開催された文化財保存修復学会でも発表されました。
その時も岡田先生が実物をかぶって見せてくださったのですがが、
今回も文化財関係でない方には初見だったようで好評でした。

午後からのパネルディスカッションは、
京都の漆屋4件の若旦那が登場です。
左から、加藤小兵衛商店の加藤さん、
佐藤喜代松商店の佐藤さん、
堤淺吉商店の堤さん、
鹿田喜造商店の鹿田さんの4人で、
曾お爺さんの代からの漆屋さんのご子息です。

皆さん30代後半から40代前半と年齢が近く
全員が漆と全く関係ない分野での仕事を経験してから漆業界に入ったこともあってか、
漆関係イベントにも仲良く4人が揃って参加している姿を見かけます。
狭い京都で、4件の漆屋がそれぞれの得意分野でうまく役割分担をし生き残り、
なおかつ、それぞれが新しい展開を行っている姿勢は大変興味深いです。

日本の文化はいつの時代も京都から発信されているという説がありますが、
漆に関してもそれぞれがかなり柔軟な発想で展開されているのが象徴的でした。

堤さんのところで販売されている、ガラスなどに塗ることができるカラークリヤ漆や、

漆塗りのガンプラ!
なんとカナダの美術館に1体が収蔵されているそうです。

佐藤さんのところの、かぶれにくいNOA漆のような従来の漆の欠点をカバーする漆、
そして、漆を使ったさまざまな製品や建築への施工など
今後さらに異分野へも広がって行きそうです。
漆生産地の丹波もある京都は
今後、若い世代が中心となって漆業界を牽引していけそうで
とても楽しみです。

司会をされた京都市産業技術研究所の大藪さんは近年、
「良い漆も悪い漆というものもない。
漆の木は人間に塗ってもらおうと思って樹液を出しているわけじゃない。」
と言われます。
漆だけでなく、工芸素材になるすべてのものも同じですね。
だから人間は手と頭を使い、素材をうまく行かしていくことが重要なのでしょう。

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