2014年12月30日火曜日

ラックを訪ねて1500里(4)

ラマニ所長は金曜午後に研究所に戻られ、滞在中の研究計画を打ち合わせ、
翌日は土曜日にも関わらず、ヨギ博士がラーンチーの南Khuntiにあるラック工場
Tajna Shellac Pvt Ltd.に連れて行ってくれました。

道中の左右にPalasの木が生えていました。
これらは全て自然に生えたもので、ラックの養殖に使われているそうです。

1時間少々で会社に到着しました。

社長のシャルマさんです。
この会社を設立して40年くらいで、以前は別の工場で働いていたそうで、
これまでこの工場の見学に来た日本人の名刺を何枚も見せて下さいました。

ここでシャルマさんにいろいろ質問をさせていただきました。
まず、食品コーティングや食用色素への利用を行うにあたり、
イスラム教徒向けの食品に使えるかどうかを左右する
「ラックはhalalかharamか?」という質問です。

まず、halalとharamの違いは、鶏がいたらその首を切り落とすのに
時間をかけてゆっくり落とすか、一瞬で痛みを与えず切り落とすの違いであり、
そう考えるとラックはそのどちらにも該当しない。
つまり、ラック樹脂に入っている雌は半年の命しかなく、
どのみち死んでしまうんだから、殺生にもならないと。
ここからヨギ博士とシャルマ社長の2人が
ヒンディー語で延々と何かの話をしはじめ、
私が入って行けなくなってしまったのですが、
実はインドではラックの食品への利用がまだ認可されていないということ、
日本では既に安全性も確認されていて問題も起きていないので、
インドでもなんとかしたい、という内容だったようです。

質問が一段落してから、社員の方に工場の中を案内して頂きました。
あいにくちょうど社員の皆さんはお昼時で、
作業をされてる方がおられませんでした。
最近収穫されたばかりのクスミ種のスティックラックの山です。

こちらの山には、まだ中に虫が生きた状態のスティックラックが!
中にはぷりぷりした雌が詰まっています。

 とにかくあちこちに山積みされています。

 場所ごとに時期や種類が違うようです。

ラックを砕く機械です。

はるばるイギリスのマンチェスターから運ばれてきた機械ですから、
作られたのは間違いなく19世紀。

 上からスティックラックを入れると、
このカッターが回転し、細かくなったラックが下に落ちます。

 それをふるいにかけ、残った大きい粒はまた粉砕機械にかけます。

それを洗浄ドラムに入れ、水洗工程です。

2時間半かけて洗浄したラックは、水とともに水槽に流されます。
ほとんど色が残っていないラックを掬い取ると、真っ赤な水が残ります。

ここに残った赤い水から、赤い色素ラックダイを取ります。

洗浄されたラックは中庭で干されます。
長時間干すと質が落ちるので、なるだけ短時間でしっかり乾燥させねばなりません。

 元のクスミラックと、原料の生のスティックラックを並べてみました。
色がここまで違います。

ここからは手作業でのゴミ取りです。

粉砕時に混じった木の枝やゴミを、このような箕でふるって
一つ一つ取り除くそうです。

 これがまだゴミが残ったラックです。
熟練工は8時間で100キロのラックのゴミ取りができるそうです。



たくさんの方が働いていることがわかります。

さて、この後は漂白ラックの製造工場に移動しましたが、
こちらの工場はいろいろ企業秘密があるため写真撮影禁止でした。
様々な薬品を用いてラックから色素や蠟分を分離し、
マシンメイドのラックを作っているのです。
同じ建物内には化学ラボもあり、
製品の成分分析や測定などを行っているそうです。

 漂白工場の出口には大きなトラックが停まっていました。

これは冷蔵コンテナです。
袋詰めされたラックは、このコンテナのまま車でコルカタの港に運ばれ、
その後船に乗せられて、ニューヨークまで行くそうです。

事務所に戻って、ここで作られたシードラックのサンプルを見せて頂きました。
洗浄時間の違いによってラックの色に差が出るということで、
左から1時間半、2時間、2時間半だそうです。
同じ原料のスティックラックから水洗いだけでここまで色に差が出るわけで、
これをさらに漂白・脱蝋すると、ほぼ真っ白なラックができるのです。
しかし、漂白ラックは薬品を使うために長期保存ができない他、
素材としても脆いとのことで、
強度があるシードラックの需要はなくなりません。
それぞれの用途に応じたラックが製造されているわけです。

次回はハンドメイド・シェラックの工場について書きます。

※この調査は生き物文化誌学会「さくら基金」の助成を受けて行われました。

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