ゲストハウスの食事は朝9時からと遅いために、
毎朝8時頃から隣接する農園を散歩していました。
研究所と農園の間には道路が一本あるために、そこにはいつも監視の人がいます。
左手がゲストハウス、写真には写っていませんが右手側にずっと塀が続いています。
この道を進んだ先の白い建物が監視小屋で、
そこを右に曲がって公道を渡ると農園の門があります。
ここに写っている木は全てラックのホストとなる木ですが、
これらの木にラック虫は一切いないかわりに、
この時期に大発生するシロアリがいるため、
やはり石灰と駆除薬を混ぜたものが幹に塗られています。
農園の入り口には大木の下に苗が育てられています。
そして、何やら袋がかぶせられた植木鉢が。
実はこれらが、ラックの幼虫を保護するネットだと後でわかりました。
農園の右手の塀に囲まれた場所はラック虫のGene bankとなっており、
インドやタイなど各地から集められたラックを育てながら
その種を保存しているのです。
中にはFlemingiaが植わった鉢がたくさん並んでいます。
袋を外すと、
真っ白になった茎があります。
この白い物質はカイガラムシの幼虫が分泌する蠟分で、
吹き飛ばすと、下からラックの幼虫が顔を出します。
この段階で孵化して1ヶ月くらい。
まだ雌雄の区別もつきません。
3−4ヶ月経過したのがこの段階です。
白い綿毛のようなものはやはり蠟です。
これを吹き飛ばすとこんな感じ。
Flemengiaの茎の太さは同じなので、かなり虫も大きくなっていることがわかります。
この段階で初めて雌雄の区別がつくようになり
細長いのが雄、丸いのが雌です。
この後十分成熟した虫は交接し、
雄は交接後3日で死滅するものの、
雌はそこから樹脂分を盛んに分泌するようになり、
そこではじめてラック樹脂が出来るのです。
木についているのは雌だけになり、徐々に樹脂を分泌しはじめています。
そして、どんどん樹脂分が厚くなって、樹脂層を形成していくのです。
この段階で5ヶ月目くらいで、
つまり、樹脂が出来るのはほぼ最後の一ヶ月くらいなのだそうです。
ラック虫の寿命は約半年で、
一年でこれを二度繰り返すわけですが、
実際は、ランギーニは半年づつのサイクルでも、
クスミ種は夏が4ヶ月、冬が8ヶ月というサイクルで、
冬の樹脂の方が高品質で好まれるとのことです
クスミとランギーニの2系統のうちでもさらにまた細かく種類は分かれていて、
ホストの木の種類の違いも含め、分泌される樹脂の色や性質もそれぞれ異なるようで、
それをさらに加工していく工程でさらに様々な性質の製品が作られていくのです。
次回はラック工場訪問の様子をご紹介します。
※この調査は生き物文化誌学会「さくら基金」の助成を受けて行われました。
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