翌日の日曜日はもちろん研究所は休みなんですが、
休みだからかえって時間があると、所長のラマニ博士が、
クリスマス休みを利用して帰省している息子さんと一緒に、
Bunduという町にあるハンドメイド・シェラックの工場
Gupta Brothers Shellacに連れて行って下さいました。
工場のある場所は、
ラマニ博士によると番地も何もない下町地区の細い道を曲がった奧で、
インターネットで地図検索しようと思っても絶対無理だとのこと。
そして、日曜日というのに操業中でした。
この日は昼前くらいの到着を約束しており、
まずはスティックラックの粉砕洗浄工場の建物に案内して頂きました。
過去にはラックと水を桶に入れ、職人が足で踏んで洗っていましたが、
さすがに現在は機械を使っているそうです。
入って右手すぐに洗浄機械
左手にはラック粉砕機械がベルトで繋がれて設置されていました。
ここにも古い粉砕器です。
置いてあるラックを籠で掬って入れます。
機械を起動させると、工場内に大きな音が響き渡ります。
ラックはこの回転するカッターで粉砕されます。
粒の大きさは隙間の幅で調整できます。
砕かれたラックは下に落ちます。
これを篩いにかけ、下に落ちたものだけをタンクで洗浄し、
上に残った大きい粒を再度粉砕器にかけます。
洗浄、乾燥、ゴミを除去したシードラックを
布の袋に詰めて、ハンドメイドシェラックの工房で加工します。
入り口に近づくと木炭の燃える匂いが強くなって来ました。
炭火でラックの入った袋を熱して濾して、バトンラックを作っているところでした。
袋の中にはクスミのシードラックがぎっしり詰まっています。
炭火でゆっくり熱することで袋の中のラックを絞り出します。
この袋はなんと10mもあり、
この手前の人がハンドルを回して絞り続けているのです。
こんな感じです。
バトンラックはこんな感じのものです。
表面にはスタンプが押されています。
スタンプ押しはまだラックが熱いうちに行わねばなりません。
このラックはネパールに輸出するものだそうです。
さて、ここからはハンドメイド・シェラックの作り方を見せて頂きます。
同様に、ラックを熱してある程度の量を出します。
それを、30−40度くらいのお湯を入れた陶器製の壷の上に広げます。
均一の厚みに広げるのはヤシの葉です。
それを壷からはがし、
炭火で少々暖め直し
手、口、足を使って徐々に広げます
向こうが透けて見えるくらいになります。
これ、そのへんに置いてあったら何かの獣の皮かと見間違いそうですが、
冷えると手でばりばり割れます。
これが完成品。
左がハンドメイド・シェラック、右がバトンラックです。
同じクスミラックから作った製品で、こんなに色が違って見えます。
で、何が違うの?と言われても、どちらもそれぞれの用途に応じた顧客がいるので、
ちゃんと意味があるだろうとのこと。
ハンドメイドとマシンメイドの違いは、
マシンメイドはどうしても高温がかかってしまうため
ラック樹脂の成分が劣化してしまいがちだが、
ハンドメイドはゆっくりと低温で熱することで、
強度を保ったまま製品にできるのだそうです。
こんなに手間がかかっていても、双方の値段の差が10%程度とか。
工賃が低いインドだからできると言えるでしょうが、
ハンドメイド・シェラックを作る工場もインドでも既に数は少ないそうです。
ラックを絞りきった後の木綿の袋はこんな感じです。
左が弟のグプタさん、右はラマニ博士です。
残っているラックはたったの2%だそうです。
これをアルカリで洗浄して、3回まで使うことができるそうです。
外に出たら、到着時には何もなかった中庭に
洗ったシードラックが干されていました。
明日使う分だそうです。
ハンドメイド・シェラックを作る場合、
朝4時から炭を熾したりなどの準備をはじめるので、作業は昼過ぎには終わるそうで、
今日は濾し作業の行われる時間に会わせて出発したそうです。
日曜にも操業している理由は、
注文が入っていることの他に、
冬は気温が低いことから、炭火の近くでの作業をするにも比較的楽で、
さらに収穫のあったばかりの新鮮なラックもあることなどの理由があるようです。
なので早朝から作業を始め、日中の気温が上がる前には終わるということです。
ハンドメイド・シェラックのためにはやはり小粒のシードラックが必要のようです。
(まだ続きます)
※この調査は生き物文化誌学会「さくら基金」の助成を受けて行われました。
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