ロンドン滞在時代に、油絵の修復をしているLさんから
漆のアクセサリーを持っているから見て欲しいと言われ、
持って来られたのがこれでした。
持って来られたのがこれでした。
幅が3センチほどの小さなブローチです。
2002年当時のデジカメでは接写はまだ難しく
銘も読めない画質ですみません。
確かに蒔絵のように見えますが、
これは漆ではなく、
赤銅(しゃくどう)に金銀を象嵌して加工されたものでした。
富士山は銀が錆びて灰色になっていますが、
白かったらさぞかしきれいだったと思います。
「これは漆でないよ」と言ったところちょっとがっかりしていましたが、
金銀は本物だし、細工もうまく、
ちゃんとした職人が作った品だということを伝えたら大変喜んで、
ブローチの金具は壊れているけれど、これは私の宝物、
大事にすると言ってくれました。
確かにこのデザインのまま、
蒔絵で作れそうですね。
「赤銅」とは、銅に3-5%の金を混ぜて作った合金です。
金が混じっていて何故こんな黒い色になるのでしょう。
銅に金を混ぜた状態では普通の銅と色はあまり変わりません。
緑青、胆礬(たんばん、CuSO4・5H2O)、明礬を混ぜた水溶液で煮て、
表面に亜酸化銅の薄い塗膜を作ると
紫がかった黒に見えるのです。
日本ではこの赤銅は刀装具などに多く用いられていましたが、
明治以降の輸出工芸品にもよく見られ、
英語でも"shakudo"という言葉で解説されるくらいです。
ヴェネチアングラスの赤色はガラスに金粉を混ぜて作るので、
同じ形のグラスでも赤だけ値段が高いことは知られていますが、
これは、金が微粒子になると赤色を帯びるという独特の光学特性のせいだそうで、
金箔を光に透かすと緑に見えるのと同じ原理なのだということです。
(赤色光が吸収されることによる)
赤銅の場合は、金の微粒子が光を多重反射・吸収することで
明度が下がるのだそうです。
我々の知っている金から想像つかないさまざまな色が
異なる条件下で見えることはなんとも不思議です。
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