2013年12月2日月曜日

工「藝」へのこだわり

どこの古本屋だったでしょうか、
ビニール袋に入った、背にタイトルも何も書かれていない本が棚にあり、
引っ張り出してみたものがこれでした。

柿渋を染みこませたような紙の上に、漆で文字が刷られています。
内容よりもこの表紙がとにかく気になり、お値段6,800円に一瞬ためらったものの、
決意して購入しました。

これは、民藝運動の創始者である柳宗悦が創刊した雑誌「工藝」の82号です。
扉ページは木版刷りです。
この号は漆とは関係なく、朝鮮民藝の特集で、
これは李朝の模様だそうです。

表紙の紙は全羅南道のもので、
本紙は栃木県の烏山和紙というこだわり。

そしてこの装丁は、遠州民藝協会の創始者で、
柳宗悦の唯一の弟子と言われる、鈴木繁男氏の作だそうです。

中には朝鮮の手漉き紙の現物見本も貼られています。

この後、東京の古書店で別の号も入手できる機会がありました。



この92号の漆の表紙も鈴木繁男氏で、
扉のデザイン(小間絵)は河合寛次郎氏です。


この号には布の現物見本が貼られています。
70年以上経過していると思えない鮮やかな色が残っています。

さすが柳宗悦のこだわりの雑誌で、
限定800~1,000部発行で、本自体が工芸品、
いや、正しくは「工藝品」と書かねばいけませんね。
「藝」という漢字には「執」という字が真ん中にあり、
「こだわりがあるからこその工"藝"」という感じにも受け取れます。

漆器の特集がある26号の表紙はなんと絣で覆われています。
この号は800部発行とのことですが、
この文字を出すため、糸をいちいちくくって防染し、
一枚づつ織り上げた苦労はもちろんですが、
さすがに「藝」という文字は絣で表現できなかったのかなという
ちょっとほほえましい感じもします。

この「工藝」は、神田の古書店「源喜堂」さんのサイトで、
14号から120号まで一部を除いた号の表紙と詳細を見ることができます。

さて、鈴木氏の漆絵は、印伝に使う絞漆を
型紙を使って一枚づつ摺ったものだと思います。
和紙に滲むことなく、色漆が美しく盛り上がった様子は、
今でも何かに活用できそうだと思います。

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