2014年11月19日水曜日

うえるかむまつり2014

この週末はあちこちで工芸関係イベントが開催されていて、
身体が複数欲しいと思いました。
私が参加したのは、京都でも兵庫県との県境に位置する
丹波福知山、夜久野町でのNPO丹波漆主催の恒例「うえるかむまつり」です。
漆の木を「植える」と「welcome」を組み合わせた名前のこの行事、
NPO丹波漆が設立してから開始され、今年で3年目になります。

今年は、1日目に福知山市と協定を組んだ京都美術工芸大学の学生さん達による
漆植栽地での研修と、漆の手ぐろめ実験などについての発表、
そして、昨年4月から漆掻きに弟子入りした竹内耕祐君、
京都の漆店「佐藤喜代松商店」の4代目若社長、佐藤貴彦氏の、
若手を中心とした漆の未来についての話がありました。
京都の漆屋4軒の若旦那も4人揃っての参加で、
今、日本国内で漆に関しては京都が一番期待できそうに感じられました。

そして、丹波漆を使った漆作品展の方も、
今回も面白い作品がたくさん。
こちらの高山さんの作品、手前のスイッチを押すと・・・

このようにきれいに透けます。
これは丹波漆だけでできた薄い膜を使った照明器具です。
裏にはガラスも何もなく、漆単独の塗膜を作られました。
透かすと黄色っぽいのも丹波漆の特徴かなという皆さんの共通の感想です。

こちらの遠藤さんの作品は、丹後和紙を漆で貼り重ねて胎を作った「一閑張り」ですが、
下地から全て丹波漆を使われたとのこと。
トンボの加飾は螺鈿です。

和紙の独特のつや消し感が丹波漆によってよく現れています。

こちらの青木さんは、毎年全く違った雰囲気の作品を作られています。

瓢箪はもちろん、葉っぱもカタツムリの殻も本物。
竹筒は自分が丹波漆を掻く時に使った筒だとのこと。
木の葉はタイサンボクで、7回摺り漆を重ねてあるそうです。

やくの木と漆の館職員、小野田さんの作品は、
一見、陶器かと見まごうような白漆の皿です。
漆は本来の色が濃い茶色なので、
純白の顔料(チタン白)を混ぜてもこのようなクリーム色になります。

まだ完成してからそれほど時間が経過していないにも関わらず、
ここまで明るく仕上がっているのが丹波漆ならでは。

同じく、木と漆の館職員の藤井さんの作品は、
自然に落ちた漆の木の樹皮をそのまま用いたコーヒーカップソーサーセットです。
スプーンも漆の枝をそのまま使っているそうです。

他にもいろいろ作品が並んでいましたが、
全部を解説できずすみません。

翌日は大変良いお天気となり、
今年からの漆植栽地へ徒歩で移動です。
ぞろぞろと歩く漆植栽団。
虫取り網と虫かごまで持って、一体どこに行くのか(笑)

こちらが今年からの植栽地です。
既に石灰で植える場所の印まで付けられています。
クロボクと言われる火山灰土で、
夜久野町でも限られた一帯にしかないという、
柔らかく保水力もある理想的な土です。

NPO丹波漆の岡本さんと、岡山の小野さんによる漆苗植栽の手順説明です。

根の走る方向も重要だという説明。
植える場所の東西南北や風向きを意識します。

岡本さんの弟子の漆掻きの竹内君も指導に入り、
あっという間に無事に100本の苗が植わり、
作業後には岡本さんからつきたてのお餅を振る舞っていただきました。

 そして、やくの木と漆の館に戻り、
一部の漆マニアック(?)が集まり、
佐藤貴彦さんによる、漆屋の視点からの漆の保存保管についてのお話会。
漆の「出世」とも言われる発酵についてと、
漆の保管温度や場所、
どのような容器に入れておくのが一番良いか、
蓋をする紙やラップの品質についてなどマニアックな話から、
臭い漆と臭くない漆の存在、というわけで、
話の流れから、漆の匂いの嗅ぎ比べまで始まりました。
しかし結局結論が出ず(笑)
しかし、こういった普段からの疑問をみんなで話合い、
情報交換する機会は貴重だと思います。

2014年11月6日木曜日

古モスリンの利用方法

暫く前ですが、たまたま展覧会を見に行くために電車に乗っていたら
デパートの古着物市の広告が目に入ったので、
展示を見てから寄ってみました。

残念ながら自分は着物は着ない(着られない)のですが、
染みや痛みがあって着物として着るには少々難ありの場合、
安価で買えるだけでなく、
珍しい布に触れられたり、店主の蘊蓄を聞けることから、
知らない土地で古い着物店を見つけたら、
ちょっと覗いてみています。

今回も、ワゴンに積まれた500円〜のコーナーを探していたら
ビニール袋に入ったままのこれを発見。
ウール100%の本モスリンです。
モスリンはもともと平織りの薄地ウールの布のことですが、
市販品には木綿やアクリルのものもあるので、
ウールの場合「本モスリン」、木綿の場合「綿モスリン」と区別されます。

ラベルのデザインから判断して昭和40年代前半でしょうか?
当時、一反4,200円とすると、かなり高価な品です。

500円で売られていた理由は、ビニール袋の中で虫が喰っていたからでした。

これを何に使うのかと言えば、
漆の「胴摺り(どうずり)」に使うと効果的だと
学生時代に教えてもらっていたからです。

「胴摺り」とは、研ぎ炭で刷毛目などを研いで平滑にした漆の塗面を
砥の粉と植物油を布につけて擦って磨く工程です。
金属や車のコンパウンド磨きに相当します。
通常のウエスよりモスリンが適しているといわれた理由は、
羊の毛の表面のキューティクルが研磨効果を高めているからだと思います。
モスリンの布をちょっと揉んでみると、
キシキシした感じがするのがそれです。
モスリンが漆の表面にも傷をつけず研磨効果が高いなら、
他のものを磨くにも良さそうですね。
(着物好きの方には怒られてしまうかもしれませんが・・・)

モスリンは既に自分の学生時代でも入手が難しく、
先生には、おじいちゃん、おばあちゃんが着ていて虫が喰ってしまった
古着物を探せと言われていましたが
若造には品質表示ラベルもない着物がモスリンなのかかどうかなんて
先生の使っている布をちょっと触らせてもらったくらいでは到底区別なんかつかず、
残念ながら見つけることができず、普通のウエスなどを使ってました。

以前、ネットオークションで着物をよく買っていた友達に
モスリンが出たら買っておいて!と頼んでいたことがありましたが
意外に出物がなく、
ようやく妥当な価格で見つけたものは
新品の完品で磨き作業に使うのがしのびなく、ずっとそのままになっていました。
その点、この虫喰いの布は気兼ねなく使えそうなのですが、
残念ながらその後胴摺りをする必要のある作品がありません。

一度、本モスリンの触感を覚えたら、
その後はガラクタ市や古着屋で捨て値で売られていたりする、
傷んだウールの着物を探すのもよさそうです。

2014年11月5日水曜日

漆の葉

漆の葉が紅葉しないという話は先日も書きました。


 紅葉でなく黄葉です。

 漆やハゼの葉は「複葉」と言って、
葉軸から出ている複数の葉はもともと一枚の葉であり、
我々が普通「葉」と呼んでいる部分は
植物学的には「小葉(しょうよう)」と言います。
落葉時には葉軸から落ちることから納得できますね。
(つまり、落葉する部分全体が一枚の葉)

タイやミャンマーのGluta usitata、
ラオスのSemecarpus reticulatusなどの南方漆の木の葉は
日本や中国の漆やハゼとは見た目が全然違うのですが、
元は巨大な一枚の葉が進化によって裂けて複数の葉になったということで
理解ができます。
ちなみにこれはラオスの漆の木、Semecarpus reticulatusです。
(2011年11月撮影)
この時期ラオスも朝夜の寒暖の差が激しいとは言え、
常緑っぽく見えますが、冬はどうなるんでしょう?


各地で漆の木を見ていると、
どうも幼木の葉の方が赤くなるようです。
紅葉した葉での草木染めをされる方もおられるようですが、
赤くなった漆の葉を探すのが大変だとおっしゃられていました。

ハゼで染めをされる方は、
紅葉した葉でなく、実のついていた軸を集めて使われるそうです。
漆の実の軸ではどうなるか、一度試してみたいです。

 地面に落ちていた漆の葉(小葉)です。

よく見ると、漆で光っているような部分があります。
幹だけでなく、葉っぱにも漆が流れている証拠ですね。

2014年10月31日金曜日

晩秋の庭

10月は行事に締切、そして海外からの訪問客の目白押しで、
家を留守にすることも多く、
あっという間に31日となってしまいました。
そんな間に、庭はすっかり冬支度です。
まだ葉は残っています。
うちの庭の木は普通の植栽地の木と違い、
畑の日当たりのために父が葉を落としてしまうため、
なかなか幹が太らず、漆の木に見えないですね。

漆の葉が紅葉することはあまりなく、
普通はこのような、あまりきれいでない黄色になります。
さらに晩秋には風が吹くと周囲の家に大きな葉が飛ぶので、
あまり好かれない木になってしまうのも仕方ないなと思えます。


藍の花も終わりで、あとは種が熟すのを待つばかりです。
今年は種もたくさん採れそうです。

綿の方は、種蒔きが遅かったのと、日当たりが悪かったため
まだ花が咲き続け、結実も遅くなっています。
左が西洋綿、右は和綿です。

 和綿の花
 和綿の実
 洋綿の花
洋綿の実。見た目からして全く違います。
まだ洋綿の実はひとつも割れていないので中身がわかりません。
楽しみです。

2014年10月5日日曜日

栗からも糸?

先月末の岩手では、秋の漆林で作業手伝いをしていました。
残念ながら漆林の写真はここにご紹介できませんが、
今年の岩手は8月に雨が多く、漆掻き最盛期にほとんど作業ができなかったそうで、
残念です。

しかし、山は秋の恵みがいろいろでした。
とにかくあちこちにアケビが。
この蔓は籠などに使われるようにとても丈夫です。
しかし、漆の木に巻き付くと幹を締め付けてぼこぼこにしてしまうので、
見つけ次第外さないといけません。
アケビ細工をする人が一緒についてきてくれて、
徹底的に蔓を外して使ってくれればなあ、なんて、毎回思っています。

そして、ヤマグリ。
写真ではわかりづらいですが、小さい実がバラバラと落ちています。
これを食べに熊などやって来るので気をつけないといけません。

 ヤマグリ(シバグリ)は普通に売っている栗よりかなり小さいので、
剥くのも大変だからか、地元の人はわざわざ拾わないようですが、
殻に傷をつけて電子レンジでチンするのが一番簡単、だそうです。

これは実家で近所の方から頂いた栽培種の栗ですが、

シバグリはこんな感じ。
同じザルに入れていますので、ザルの目が大きく見えるのがわかるでしょう。
手前に見えているのが虫の穴。
天然の栗につく虫の割合はかなりのもので、
拾った栗も1/3が虫つきで、
袋に入れて持って帰って来る間にもかなり喰われてしまっていたようです。
これは、お米につく虫と同様、
実や種が熟す前に卵が産みつけられているからなんです。
そう言えば子供の頃、「栗むし羊羹」は「栗虫」を連想させられ、
名前のせいでおいしさが半減していたような。(笑)

せっかく剥いている栗が虫だらけだと「憎き栗虫め!」
と、思ってしまうのですが、
ご覧ください、この美しい糸!
「栗繭」と書かれていますが、
なんと、この栗虫が作る繭から引かれた糸なんだそうです。
東京スピニングパーティーでのアトリエ・トレビさんの展示品です。

漆の植栽地でよく見かけるこの繭から引かれたものらしく、
今度見つけたら是非集めておいて!と頼まれました。

見本に置いてあったアジア各地の野蚕のいろいろです。
育てている植物に着かれたら害虫ですが、
繭を使うなら立派な益虫です。
これらの繭から絹糸を引くためには、
それぞれに適した酵素を使うなどのノウハウも必要です。

自然の森の中でこれらの蛾を育てるとなれば、
周辺の木々までに被害が及ばないような工夫が必要になることは否めません。
それを思うと、人の与える桑の葉しか食べないように人工的に交配され続けた家蚕は
既に野生では生きられないそうですから、
人間の執念というのもすごいものだと思います。

しかし、栗の実を取るか、それとも栗糸を取るか、
栗好きには究極の選択です。

2014年10月2日木曜日

蓮の糸

9月29日に、浅草橋駅すぐの場所で開催されていた
「新・東京スピニングパーティ2014」に行って来ました。
入場料1,000円にも関わらず、
月曜の午前中とは思えないほどの混雑ぶりで驚きました。
日曜日はさらに混んでいたそうです。

会場で販売されていた珍しい繊維の一つに、
「藕糸(ぐうし)」という、蓮の茎から採る糸がありました。
 出店されていたのは、町田市大賀藕糸館の方です。
 蓮の茎を折って引っ張ると細い糸が何本も繋がっているので、
それを撚って糸にするのが本来の「藕糸」だそうです。
藕糸織りで一番有名なのは、奈良當麻寺の「當麻曼荼羅」ではないでしょうか。
(追記※近年の科学分析の結果、蓮でなく絹糸で織られていることがわかりました)

蓮の茎の断面は、レンコンのように穴が空いているのですね。

藕糸を作るのはなかなか大変なので、
今回は、蓮の茎を煮て乾燥させたものから糸を紡ぐ実演をされていました。
これは「茄糸(かし)」と言い、
大賀藕糸館さんではこの糸を使った製品を作られているそうです。

向かいのブースは野蚕絹の専門店「アトリエトレビ」さん、
左隣も大人気の糸のお店で、この周辺は満員電車くらい大混雑していました。
水桶の手前に置かれているのが蓮の茎を苛性ソーダ水溶液で煮て
洗ってから乾燥させた繊維です。

これを湿らせて戻してから、細かく裂いて準備します。
繊維を一本づつ抜くのでなく、大きめに分けてそれを二等分、
さらに二等分という感じで少しづつ細い束にしていくのがコツだそうです。

数本の繊維を取り

少しづつ撚って、撚ったものを紙の芯に巻いて
端は洗濯ばさみで留めてから次の繊維を撚ります。
端まで完全に撚りきらないで、ばらけた状態にしてから
次の繊維を足していくという感じです。

レンコンの産地で収穫後の蓮の茎を使ったら廃物利用で良さそうに思えるのですが、
蓮の茎から蓮糸を採るのに最適な時期(9月上旬まで)と、
レンコンの収穫の時期(冬)は全くズレており、
葉っぱを採ってしまえば当然ながらレンコンは育ちませんから、
残念ながら共存はできないそうです。
もし自分で蓮糸を作るなら
お寺のようなところにお願いするのが一番だと言われましたが、
このブースでは栽培用の蓮の種も販売していました。
自宅での栽培というのも面白そうだなと思いつつ、
そうなるとやはり広い池が必要になりますよねえ(苦笑)。

ミャンマー産の藕糸を販売していたブースもありましたが、
さすがに高価(ひと綛4,000円)で手が出ず、
こちらで売っていた乾燥茎と、紙筒に少し巻かれていた蓮糸を入手しました。
乾燥茎を「一生分」と、10束大人買いされている方もおられました(笑)。

その他にも様々なブースで、なかなか見かけない珍しい素材が販売されており、
全く知らない来場者の方からも
「それ何ですか?」「どこで売ってましたか?」という質問から
話がどんどん広がったりで、
予定外の大散財の大荷物となってしまいましたが、
完成品でなく半製品や生素材に興味を持つ方が増えているということを実感し、
他の素材にも広がっていかないかなあといろいろ妄想を広げました。

2014年10月1日水曜日

綿出現!

9月末は知人の来訪が続いた後に、
千葉、東京、岩手に出かけ、やっと帰って来ました。
久し振りに畑を見に行ったたところ、
最初に開花した綿の実がはじけていました。

和綿なので、実が小さくかわいいです。

これは、洋綿の花です。
開花が始まったのは私の留守中のようで
まだ実は大きくなっていません。

一度刈り取った藍もまた育って、花穂が出ていました。
もうこのまま種を採ろうと思います。