2014年11月6日木曜日

古モスリンの利用方法

暫く前ですが、たまたま展覧会を見に行くために電車に乗っていたら
デパートの古着物市の広告が目に入ったので、
展示を見てから寄ってみました。

残念ながら自分は着物は着ない(着られない)のですが、
染みや痛みがあって着物として着るには少々難ありの場合、
安価で買えるだけでなく、
珍しい布に触れられたり、店主の蘊蓄を聞けることから、
知らない土地で古い着物店を見つけたら、
ちょっと覗いてみています。

今回も、ワゴンに積まれた500円〜のコーナーを探していたら
ビニール袋に入ったままのこれを発見。
ウール100%の本モスリンです。
モスリンはもともと平織りの薄地ウールの布のことですが、
市販品には木綿やアクリルのものもあるので、
ウールの場合「本モスリン」、木綿の場合「綿モスリン」と区別されます。

ラベルのデザインから判断して昭和40年代前半でしょうか?
当時、一反4,200円とすると、かなり高価な品です。

500円で売られていた理由は、ビニール袋の中で虫が喰っていたからでした。

これを何に使うのかと言えば、
漆の「胴摺り(どうずり)」に使うと効果的だと
学生時代に教えてもらっていたからです。

「胴摺り」とは、研ぎ炭で刷毛目などを研いで平滑にした漆の塗面を
砥の粉と植物油を布につけて擦って磨く工程です。
金属や車のコンパウンド磨きに相当します。
通常のウエスよりモスリンが適しているといわれた理由は、
羊の毛の表面のキューティクルが研磨効果を高めているからだと思います。
モスリンの布をちょっと揉んでみると、
キシキシした感じがするのがそれです。
モスリンが漆の表面にも傷をつけず研磨効果が高いなら、
他のものを磨くにも良さそうですね。
(着物好きの方には怒られてしまうかもしれませんが・・・)

モスリンは既に自分の学生時代でも入手が難しく、
先生には、おじいちゃん、おばあちゃんが着ていて虫が喰ってしまった
古着物を探せと言われていましたが
若造には品質表示ラベルもない着物がモスリンなのかかどうかなんて
先生の使っている布をちょっと触らせてもらったくらいでは到底区別なんかつかず、
残念ながら見つけることができず、普通のウエスなどを使ってました。

以前、ネットオークションで着物をよく買っていた友達に
モスリンが出たら買っておいて!と頼んでいたことがありましたが
意外に出物がなく、
ようやく妥当な価格で見つけたものは
新品の完品で磨き作業に使うのがしのびなく、ずっとそのままになっていました。
その点、この虫喰いの布は気兼ねなく使えそうなのですが、
残念ながらその後胴摺りをする必要のある作品がありません。

一度、本モスリンの触感を覚えたら、
その後はガラクタ市や古着屋で捨て値で売られていたりする、
傷んだウールの着物を探すのもよさそうです。

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