2017年1月15日日曜日

Trefriw Woolen Mills

Trefriw Woolen Mills

Walesは人の数より羊の数の方が多いと言われる地域です。
昨年10月に北WalesのConwyから南に向かう道路沿いにある
毛織物工場を、地元に住む友人の案内で見学しました。

かつてこの地域には類似の工場があったものの、
今はここ一軒になってしまったそうです。
ここは稼働中の工場を無料で見学できるのです。
(2月〜10月まで)


解説パネルは、英語とウェールズ語のバイリンガルで作られています。
ここでの加工工程は
原毛→ブレンド
→カーディング(毛を梳いて繊維の方向を揃える)
→撚糸(糸を縒る)
→合糸(2本以上の糸をあわせる)
→枷とり→洗浄→染色→整経→織り
となっています。

ショップから喫茶室を通り、まずはタービン室へ。
近くを流れるCrafnant川の水力で発電し、機械を動かしています。


この地域の水力を使った工業の解説もあります。

さて、ここから階段を登り、2階に上がります。
まずはカーディング。

カーディングの機械です。

カーディング前の羊毛です。
羊の原毛からラノリンという油分を除去した毛が使われています。


カーディングに使われる数種の櫛。
それぞれがローラーになっているため、数台に分かれています。

カーディングの様子。

複数色の羊毛を混ぜて中間色を作る方法です。

毛を先染するだけでなく、
余った毛を再利用するので、全く無駄が出ないとのこと。


数色が混ざった途中の状態。

カーディングされた羊毛は最初は1枚のシートになっていますが、

最後は細いテープ状になります。

この後撚りをかけると、同じ太さの糸ができるというわけです。

この時点での太さはこの程度。撚ってないのですぐに切れます。

糸の色を変える場合、カード機にあるすべての櫛ローラーと機械を
人力で徹底的にきれいにしなければならず、
掃除だけで1週間くらいかかるとのこと。

この上の階が紡績です。



下の階でテープ状にしたロールを機械にかけ、一気に撚ります。


次は、撚った糸を2本以上より合わせて丈夫な糸にする工程です。

触れる見本、解説カードの位置が入れ替わっちゃってましたが、
真ん中が紡ぐ前、手前と右の糸が紡いだ単糸、
見えづらいですが奥の青いのが、単糸2本を合わせた双糸です。

これを染めるために一旦枷にとります。

染色は裏の建物内で行われます。

まずは洗ってから

タンクで加熱して染めます。
残念ながらこの日は稼働していませんでした。


現在は化学染料で染められていますが、
かつては地元の染め材や輸入の天然染料を使っていたそうです。

染色を終えた糸は再度、糸巻に巻き取られます。

次は整経
複数の糸を一気に巻き取ります。


手前はここの織見本。
奥は飛び杼。この糸も別に巻かれます。

そして、織機で織られます。
織機は一階奥に置かれています。


ここで織られた布


織った後には起毛加工もしています。
(左:起毛前、右:起毛後)

カフェも資料館のようです。




これが見学無料というのは素晴らしいです。

ショップでは製品の切り売りもあります。
9月までなら、染織素材の植物が植えられた庭も見られるようです。

ConwyからBetwy-e-Coed方面行きのバスに乗り、
Trefriwというバス停で降りると目の前なので
とてもわかりやすいです。
これが無料公開というのは素晴らしいと思います。


Wales南部には国立羊毛博物館というのもあります。

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おまけ。上階にあった解説パネル。






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この調査は科研費の助成で行われました。

2017年1月8日日曜日

竹がない場所で

あっという間に新年も1週間以上過ぎました。
酉年にあわせた年賀状を作るにあたり
古いハードディスク内の写真を整理しながら鳥の写真を探していました。

今から9年と数日前、珍しくカイロに数日雨が続いた日
水はけが全くない道路が水没し、迂回した時に通りかかった市場の写真に
鳥がいました。
この時は車で移動中でよくみていませんでしたが、カモのようですね。
エジプトでは鶏のほか、鳩も食べます。
ちなみに、カゴの上のカモはどうして飛んで逃げないのか、
今思うと不思議です。

ところで、鳥から離れますが、
鳥のカゴだけでなく、野菜を売っている場所でも
構造は少々異なりますが、同じ素材でできたカゴが使われています。

作りはかなり雑に見えますが、重い野菜やゴミも入れているようですから
それなりの強度はあるようです。
そして、そのつくりと、雑に扱われている様子から、
値段もそれほど高くないと推測できます。

アジア人の我々は、こういったカゴを作る素材は竹と相場が決まっていますが、
よく考えてみれば、エジプトには竹なんか生えてませんよね。
わざわざ竹を輸入しているわけでもないだろうし、
普通の木には見えません。
じゃあ一体これは何でできているのでしょう?

雨もあがり、水も引いてから気をつけて道路脇を探しました。

道端でパンを売る時の台にされていました。
この上は高架の道路で、排気ガスやホコリは大丈夫なのかと心配になりますが、
使っているものをいただくわけにもいきませんし、
下手に止まって見ているとパンを買えと言われてしまうので、
なるだけきれいで捨てられたものを探していたところ、

ある夜、道を歩いていたらゴミとして捨てられているものを発見。

軽く、南国の竹の表面を削った内側とさほど変わらない感じです。
この中から数本を抜いて持ち帰り、
竹篦の代用として使えないか削ってみました。
しかし、柔らかそうに見えながら意外に削りづらく、
竹のように素直に目に沿って割るにもコツが必要でした。
これが道具になれば便利だと思ったのですが、
ここまで加工されたものだと限界があり断念。

せっかくなので日本にも少し持ち帰りましたが
梅雨に入ったら白緑色のカビが全体をびっしり覆ってしまいびっくり。
やむなく捨ててしまいました。
乾燥した地域だからこその素材だったのだなと
改めて思ったわけです。

さて、ここまで引っ張ったこの素材は何だったのかといえば、
ヤシの幹でした。
それを聞いた時はなるほど!と深く納得しました。
日本の気候であっという間に全体がカビたのも、
乾燥した気候で少しでも本体に水分を貯める構造になっているのですね。

今年になってから
ヤシ材を圧縮して木材として使う方法が考案されたというニュースを見ました。


空気中の水分を自然に吸い込んでしまうような構造ですから、
樹脂溶液を吸い込ませることも難しくないでしょう。
竹や針葉樹が圧倒的に少ない乾燥した環境で、
地元にある素材を使っての新しい工芸作品や道具が生まれるかもしれません。