バタバタしていたら7月末、栽培されている藍は一番刈りの時期を迎える頃です。
4月末の石徹白での自然染めワークショップに参加されていた、
戸塚みきさんの「しずく地藍工房」では
藍の栽培からすくも作り、藍建て、染めまで一環して行われているとのこと。
車を運転しない私に、「最寄り駅まで来てくれれば迎えに行きますよ。」
と言ってくれていたのをここで思い出し、
刈り入れ直前の藍を見に行かねばと慌てて連絡を取ったところ、
夏の一番忙しい時期なので今月中にして下さいという返事を頂き、
申し訳ないので、何か手伝いができることがあればと
作業服持参で翌々日に急遽伺うことにしました。
JR中央線を恵那駅で明智鉄道に乗り換え、
降りたのは昔懐かしい、木造の無人駅。
降りたのは近くの高校に通う高校生が10人くらい。
こういうローカル電車は学生の乗降客がなければ存続は難しいでしょう。
駅から車で15分くらいで到着。
最近では珍しい、純和風のご自宅の横に建てられた工房の中には
270リットル入るという立派な藍甕が4つ設置されています。
戸塚さんがひとりで数日かけて地面に穴を掘って埋めたという苦労の賜です。
4つの甕の真ん中は、冬季、保温のために燃やす籾殻を入れる場所です。
籾殻はゆっくり燃えるため、余裕で一晩保温することができるそうです。
奧が今使っている藍2つということで見せて頂きました。
絵に描いたような立派な藍の華が浮かんでいます。
しかし、良く見ると
左手側の勢いは弱く、
右手側は盛り上がりが大きいことがわかります。
これでわかるように、奧の瓶の藍の方が色が濃く染まり、
手前は薄い色を重ねたりと、使い分けができるとのことです。
横にはすくも部屋が作られています。
ここに刈り取った藍を入れて発酵させ、すくもを作るのです。
下には保温と水はけのための籾殻を敷いた上に、さらに筵が敷かれています。
昨年作った自家製すくも。
置いておくとどんどん乾燥していくので量は減っていきますが、
すくもは古く熟成したものの方が良いので、寝かせて古いものから使っているそうです。
さて、では藍畑に!
左側と先は普通の稲が植わっている田んぼに並ぶ、藍の段々畑です。
奧に見える木の生えている下は川が流れる素晴らしい環境!
そして、土は真っ黒のクロボク、水田よりもむしろ畑に向く土です。
戸塚さんは有機農法と自然農法の2通りで藍を育てているそうです。
こちらが有機農法の畑
花穂が出ているものもありました。
私が草取りを少々お手伝いした自然農法の畑は、
しずく地藍工房の企画、4月から11月までの年6回で、
藍の種蒔きから染めまでを行うという「種蒔きからの藍染めワークショップ」
藍の種蒔きから染めまでを行うという「種蒔きからの藍染めワークショップ」
用の畑だそうです。
この竹笠は魚釣りの人がよく使うもの(魚の模様が編まれています)
背中の藁を編んだ蓑は地元の人が作って売っているもので、
これが夏の畑作業の必需品とか。
特に蓑は、炎天下でも涼しく作業ができる優れものだそうです。
うちの地元では類似のものを見たことがないので、
後で売っているところまで連れていってもらいました。
笠と一緒に父親にお土産にしたら、さっそく翌日から使いだしています。
こちらが自然農法の畑です。
自然農法は、雑草は抜かずに根元から切ることで、
土中の環境を変えないのがポイントなのだそうです。
刈り取った草は藍の根元に敷かれ、地面からの放射熱を和らげ、
枯れて腐れば肥料になります。
慣れた手つきで草刈り機械を操る戸塚さんと比べ、こちらはなかなか進まず。
作業中は写真を撮るどころではありませんでした。
一仕事を終わって手を洗います。
さすが藍染めの道具も洗う水場はアルカリ度も高いからか、
アルカリ土壌を好むオオバコの生育が半端ない!(もちろん水も豊富ですが)
家の前の別の畑には品種の違う藍が数種類、見本として栽培されていました。
これは京都産の「水藍」とも言われる丸葉の品種だそうです。
植物見本としてだけでなく、
こういった少数品種の種を残していくことも目的にしているとのことです。
古くなった藍も、たまに突然復活することがあるので、
毎晩の攪拌(甕掻き)は忘れないそうです。
泊まりがけで長期で遠くに出かけることもずっとしていないとのことでした。
駅まで送ってくれる道すがら、
「藍は別に、人間に青い色を使ってもらおうと思って育っているわけじゃない。
だから人間は、藍に色を使わせてもらっているんだという
感謝の気持ちを忘れちゃいけない。」
と言われました。
自分で土を耕し、種を蒔き、草を取り、刈り取り、すくもを作り、
薬品を一切使わず天然の材料だけで藍建てを行い、染める。
手塩にかけた藍のひとしずくがとても貴重なものに思えます。