ブータンには漆の調査目的で行っていますが、
特に東ブータンは工芸が盛んなことと、
首都ティンプーとタシヤンツェにしかない
伝統技芸院(Institute for Zorig Chusum)があるので、
その他の工芸についてもついでに調べています。
特に、染織はそれでツアーが組まれる程人気ですが、
既に国内外で何冊もの本が出版されていますから、
我々が調べるまでには及ばないとしても、
せめて、ここでいついつこんなことをやっていたという
記録はとっておくべきだと思っています。
雑貨屋の店内にあった腰機
漆木地師さんの家の近くにあった枠機
前回、前々回では、漆職人さんの工房を訪ねた時に、
その家の女性が織りをしていたり、
近所で織りをしている方を何人も見かけていましたが、
今年は、その時見かけた機をひとつも見ることができませんでした。
ブータンが初めての同行者Oさんに是非見てもらいたいと思っていたので
ちょっとショックでした。
伝統技芸院の縫い物コース
刺繍コース
伝統の長靴も手縫いです。
不思議なことに、伝統技芸院にはミシンで民族衣装や靴や飾りを縫ったり
仏画の刺繍をするコースはあるのに、
染めや織りのコースがありません。
これは、普通の家庭の主婦が普通にやっているから、
学校で教えるようなものでもない、という考えらしいのです。
労働省管轄の職業訓練校としての伝統技芸院の立場としては、
手に職をつける為の特殊技術の教育がメインなんでしょうか。
しかし、使っている布や糸のほとんどが化学染料で染められたものだというのが
何よりも残念です。
Kさんのお宅では、奥さんや地元の方が織られたというキラを見せてもらいました。
東ブータンのメンタとか、
花織りのような細密な模様や、
これは王妃が皇后陛下にお目にかかった時に着用されたキラを
アレンジして織ったものだそうです。
確かに織りや模様は素晴らしいものの、
既に糸も全てインド産の上、染めは化学染料だなあと思うと、
無理しても買いたくならないのがいいのか悪いのか。
KさんSさんすみません。
そんなこんなで東を出発の朝、
思いもかけないところで機を発見!
横にいるのはここの娘さんです。
色もこれまで見たのとは違う、自然の色です。
さらに、バックストラップは皮製です。
伺ったらトナカイの革だとのこと。
実はこれ、以前も数日泊まっていたホテルの裏なのです。
そこにやってきたガイド君曰く
「あれ?知らなかった?ここの奥さんは染めから全部やるんだよ」って。
奥さんに素材を聞いたら全て天然素材。
このホテルの売店で売っている布も(日本円で最低5万円くらいから)
ここで織っているのだそうです。
まさに灯台元暗し。
次回は是非、染めか織りをやっているところを見せてもらわねば。