2013年11月19日火曜日

漆樹の品種

この週末は漆関係のイベントが目白押しでした。
金曜には岡山県立博物館で17日まで開催されていた「japan-漆の世界」展と、
岡山県立美術館での日本伝統工芸展を見ました。
県立博物館の展示は、
出土漆器、南蛮漆器、輸出漆器、岡山の関係資料、
現代作家、地元の作品まで幅広く網羅されており、
地方でもこれだけ充実した展覧会が企画されたということに驚く反面、
他の地区の人にはほとんど知られていなかったことは残念だったな思いました。

以前も書きましたが、岡山県新見市には備中漆を守っていくために
「漆の館」が作られています。
今回、久し振りに訪問させていただきました。


ここには日本の各地から根を採取して育てた漆の木が植えられています。


この時期、葉っぱの残っている木もわずかです。


これは会津の木だそうです。実がたくさんついています。

漆の木には実がつかない木もあり、
牧野富太郎の植物辞典には漆の木には雄と雌の木があると書かれていますが
これまで実がつかなかった木が干魃などにあうと
その年だけ実をつけるということがあるので
雄雌はないのではないかというのが、
岡山の漆掻きの小野忠司さんの説です。
漆の木はかぶれることから植物の専門家も敬遠することが多く
何年も継続して徹底して調べている人はこれまであまりいなかったと思います。

さて、畑には分根法で作られた1年生の苗木が育てられていました。

これは、「岡山1号」と名付けられた漆の木です。

新潟では渡辺勘太郎さんという方が
90才を超えてもなお漆掻きを続けられていましたが、
残念ながら数年前にお亡くなりになりました。
その、渡辺さんが育てられていた、他の木の倍くらい漆が採取できるという木も
こちらで育てられています。
日本文化財漆協会の会報で紹介されたことから、
新潟の「新」とあわせて「新文化」と名付けられています。


葉もまるく、背丈も低いのが特徴です。

小野さんは、漆が良く取れる木だということが本当かどうか
渡辺さんから譲ってもらった根から育てた木から昨年初めて漆を採取したところ、
それが本当だったと証明できたそうです。
この木は1年目は背丈が低いことから、
この木は1年で山に植え替えると、草などに埋もれてしまいがちなので、
2年育てて普通の大きさになってから移植した方が良いだろうとのこと。
漆の木を育てるにも、その特徴によってケースバイケースで対応する必要があるという
わかりやすい例だなと思いました。

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