2013年11月11日月曜日

くろめしろめ

木から採取された水分の多い漆を攪拌し、水の分子を均一化することを
「なやし」と言い、
その後、酵素がダメにならない37℃以下の熱を加えて水分を飛ばすことを
「くろめ」と言います。

「くろめ」があるなら「しろめ」もちゃんとあります。
漆とは関係ありませんが。
英語ではpewterという合金です。
漢字では「白目」「白鑞」と書きます。
上の3つはイギリス製のビアマグです。

もともとはスズに鉛を1/4ほど加えたものでしたが、
(「ハンダ付け」のハンダと鉛の割合が違うものです)
18世紀のイギリスで鉛のかわりにアンチモンを混ぜる方法が開発され、
特に中部シェフィールドが有名な生産地となりました。
現在ではスズが9割以上入っているものだけがピューターと呼ばれます。

日本ではあまりポピュラーではありませんが、
170~250℃という低温で融解すること
(ちなみに琥珀の融点が約400℃です)
酸やアルカリに強く、金属臭がほとんどなく飲み物の味を損ねないことなどから
このようなビアマグをはじめとした食器にもよく使われています。

こういった鎚目は美しいのですが、

柔らかいため、ちょっとしたことでこのようにへこんでしまいます。

イギリスにはこのように底がガラスになっているものもあります。
徴兵制度があった時代、兵隊を送る人数分のビアマグにコインを入れて
その上からビールを注ぐとコインは泡で見えなくなるので、
コインの入っているマグを取った人が兵役につく、
というくじ引き制度があったため、
底をガラスにしてコインが見えるようにしていたんだとか。
これらのマグをくれた友人が教えてくれました。

これはマレーシア製のピューターのビアマグです。
新品だとこのようにきれいな銀色です。
マレーシアにはスズの鉱山があり、ピューター製品が有名だそうです。

注意書きです。
柔らかいので強く擦ると傷がつきます。
また、いくら酸やアルカリに強いと言っても、
酸やアルコール類を長期間入れておくのはやはり良くありません。

ビール好きなら夏はこれらのマグで冷えたビールを!
なんでしょうが、残念ながら下戸の私には宝の持ち腐れです。

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