2013年9月21日土曜日

コーヒーから刃物

職人さんが行く道具屋さんというのはなかなか
初心者には近寄りがたい場所ですよね。
「○○ありますか?」
「ありません。」
「もう作ってないのですか?」
「わかりません。」
というようなそっけない応答をすることで有名なS屋はもちろん、
大学生の頃、ここの切出しがなかなか良いという話を聞いて訪れたS刃物店。
「ごめん下さい」と店に入り、店主が出て来たところで
「すみません、切出しが欲しいのですが」
と言ったら、
「うちのは高いよ。」
と言ったきり、奥に引っ込まれてしまった経験などから
(見た目が貧乏そうに見えたのか)
道具店が普通の人に門戸を閉ざしてしまっているのも
興味のある人から日本の伝統文化を取り上げてしまっているようで
勿体ないんじゃないかなと思っていました。

しかし、そうではない道具屋さんも世の中には存在します。
墨田区にある、井上刃物店さんはその一件です。
(都営新宿線菊川駅から徒歩5分くらい)
大通りに面してはいますが、看板も何もありません。
しかし、周囲のビルディングの中でひときわ目立つ古い日本家屋です。
(後ろに見えるのは首都高速です)



通りから見える入り口の右手にはこのような研ぎ台が置かれています。

ご主人の井上さんは、ご自身も「手考会」という木工の会に参加されており、
道具を売るだけでなく、作り手側の立場も理解して、
初歩的な質問にも親切に答えて下さいます。

都内でも決して便利とは言えない場所にありながら、
若いお客さんや女性も来られて、長居をされています。
店構えからも想像がつくように、店内もお宝の山です。

その井上刃物店さんにはオリジナル商品があります

これは、コーヒー豆を挽いた粉を計量するスプーンですが、

スプーンそのものではなく、これを作るための独特の形状に
鍛冶屋さんに打ってもらったという刃物です。



コーヒーを飲まない私も話を伺って思わず購入してしまいました(笑)

井上さんご夫妻はコーヒーが大好きで、
常連のお客さんが奥さんの誕生日にコーヒーの粉の計量をするスプーンをあげようと、
刃物を特注しスプーンを作ってプレゼントされたのだそうです。
このスプーンが大変使いやすく、
さすが木工道具の店、スプーンを買いたいというのでなく、
自分も作りたいという人が何人も出てきたため、
この刃物を追加注文したところ大人気商品になった、
というような話だったと記憶しています。
(細かい部分が違っていたらすみません)
そして、お店にはお客さんが作られたスプーンの製作工程を
写真入りでわかりやすく説明したファイルまであり、
お願いすれば誰でも見ることができます。
(※奥様の許可を得て撮影しましたが、全部をご覧になりたい方は店頭で)



井上さんご夫妻がお客さんにとても愛されているということもよくわかります。

お話もとても面白く、いろいろ丁寧に教えて下さるので、
まずは電話をして、井上さんがお店におられる時間を確認の上、
時間の余裕を持って行かれると良いと思います。
もちろん、欲しいものがどんどん出て来ますから、
お財布の中身の準備もお忘れなく!

井上刃物店
 墨田区立川3-17-8 電話03-3631-4268 
都営新宿線菊川駅のA3出口を出て、右二つ目の信号の反対側

2013年9月19日木曜日

初秋の漆の木

中国の話題を書いているうちに、季節はすっかり秋です。
今年は80個近くも取れたスイカの季節も終わり、
父がスイカの上のネットを外したので、やっと漆の木にも近づけるようになりました。
葉の緑がとても濃く、黄色い枯れ葉も見られます。

台風一過のいいお天気です。

鹿に葉を食べられた木も見事に復活しております。

と、上をちょっと見たら

わわわ、虫が喰ってる!

と、落下したのがこんな虫。何の幼虫でしょう。
幸い、喰われていたのはこの一カ所だけでした。

そして、やはり葉を虫に喰われていた藍。
他の植物の影になってしまって日当たりが悪かったのか、成長がいまいちで、
これでは生葉染めにも使える量にならなさそう。残念です。

西洋茜はなんとか生き延びています。

しかし、日本茜はどんどん小さくなってしまっており、
これはいけません。
もう少ししたら日当たりの良い場所に植え替えしてみます。



2013年9月18日水曜日

カイロの金鋸刃

中国の話題はまだまだいろいろありますが、
研究代表者が私でないため、ここに書けない内容も多々ありますので、
あとはぼちぼちということで。

さて、数日前に金鋸刃の利用方法の話題を書きましたが、それに関連して。

芸大受験のための美術予備校に通っていた時に、
水粘土で「10センチ角の立方体を作る」という課題が出ました。
その時、市販の粘土篦以外の便利な道具として
先生から金鋸の刃を教えてもらいました。
もちろん、そのままでは長すぎるので半分に折って使います。
刃のついた方で表面をなでると凹んでいる部分がよくわかり、
そこに粘土を足して徐々に形を作っていきました。

ところでこの粘土の「10センチ角の立方体」なかなか勉強になります。
実際の入試には出ませんが、
まじめに10センチを正確に計ってきっちり作っても
そのように見えないんですよ。
実は、少々のトリックが必要なのです。

立方体の角や辺を正確に作るよりも、
真ん中を微妙に凹ませた方がよりきれいな立方体に見えるのです。
(やりすぎると気持ち悪いので注意)
逆に、正確に計測して作った立方体は、真ん中が若干ふくらんで見えるんです。
興味のある方は是非やってみてください。

こういった工夫が実際の入試で大勢のライバルの作品の並ぶ中から
目を引くための作品を作る秘訣になるということを学びました。

というわけで金鋸の刃。
当然受験生だけでなく、人間国宝の先生も使われているのですが、
エジプトでも見つけました。

カイロのザマレクというナイル川の中州の島に美術学校があり、
その近くの半分廃墟のようなショッピングセンターに小さい画材店が数軒入っていました。
その一件に、こんなものが売っておりました。
一番左が日本の金鋸の刃を折ったもので、
それ以外がカイロで売っていたものです。
エジプトの金鋸刃は日本のより若干薄くペナペナしていることもあって、
右の2つは使ってみて手が痛かったのでたこ糸を巻きました。

金鋸を2つに切って、それをグラインダーで削っただけの簡単なつくりですが、
こんなものを作って売っているということに感動し購入しました。
実際に使ってみると、なかなか使いやすい角度になっていることがわかります。
(しかし、そもそもこれは粘土造形用に作ったのかどうか未確認です。
アルミの棒で作られた粘土篦らしきものと一緒に並んでいたのです)

粘土造形の場合、カッターの刃などでは切れすぎて危ないのですが、
これは刃の角度もゆるく、切れすぎないところが良いですし、
もちろん、砥石で研げばもっと切れます。
自分で角度を少し変えることもできますね。
半分に折ることで満足していた自分には目からウロコでした。
しかし、地球の反対側の違う文化を持つ人達も、
本来の道具の使用目的とは違う使用法を思いつくというのがいいですよね。

2013年9月16日月曜日

甘粛省の泥人形

中国で言う「非物質文化財」というのは、
日本の「無形文化財」とはちょっと違うかもしれません。

伝統芸能やお祭り、民謡、地域の風習だけでなく、
少数民族も多い中国では民間工芸も「非物質文化財」として
国、省、市などによって指定されているようです。
甘粛省の泥人形もそのひとつのようです。
こんなグループの立体だけでなく、


百面相まで。かなりのクオリティです。

実は1989年に訪問した北京の中国博物館で、
たまたま少数民族の工芸の展覧会が開催されており。
その時に展示されていた泥人形や刺繍が大変面白く、
いくつか買って帰っていました。
当時はそれらが広い中国のどこの物なのか全く関心もなかったのですが、
今回の蘭州で同じようなものが展示されていたため、
古い写真を調べてみたら、確かに「甘粛省」「蘭州」の文字がありました。
何十年ぶりかに身元発見!という感じでちょっと情けないですね。

 当時の展示の写真です。

作者はもちろん違うでしょうが、
こちらの方が素朴なつくりです。

「清真」の文字があり、店主のかぶっているのは
回族の帽子ですね。

「甘粛省民間民俗美術展覧」の文字が見られます。
回族のおじさんが売っているのは
ハミ瓜でなくスイカに見えますが。

これもスイカ売りのお兄さん。

お爺さん2人。

タバコをふかす物売りのお兄ちゃん。
人民帽をかぶる人も今ではほとんどいません。

子供とお爺さんでしょうか?

子供

そして、こちらが私が購入して持ち帰った、素焼きされた泥人形です。
どうして同じ形の人形を2体も買っていたのか、今となっては謎です。

焼きもので人形のような立体を作る場合、
全体がみっちり粘土でできていると
焼成の際にヒビが入ったり破裂したりするため、
中には空洞を作るのが基本です。
陶俑なども中は空洞か、底を塞がないで作られていますが
この人形は全くのムクで空気穴もなく、持つとずっしりと重いです。


秘密は背中を見てわかりました。
写真で向かって左側の背中の一部が割れていて、
中から白いものが見えています。
これがどうも緩衝材の役割を果たす素材のようです。
素朴な民間工芸品のように見えて、
実は中はハイテク(?)が詰まっているのかも。
この素材は一体何なのか、今後調べてみたいと思っています。

2013年9月13日金曜日

老酸奶

1989年に北京にはじめて行って、気に入ったのが酸奶(すわんない)。
ちょっと甘く味付けされた、
中国人が大好きな人気のドリンクヨーグルトです。
滞在中、ほとんど毎日のように飲んでいました。
人気があるので、朝行かないと売り切れということもあり、
早起きして買いに行きました。
当時は普通の牛乳が売っていなくて、
酸奶だけが売っているという状況も不思議でした。
写真が白黒なのは、当時は一台しかカメラを持っておらず、
たまたま白黒フィルムが入っていた時にしか写真を撮っていなかったからなのですが、
余計にレトロに見えますね(笑)

白い焼きものの瓶に入っていて、
上にかぶせた紙にストローを突き刺して吸って飲みますが、
この瓶にいろいろ種類があって可愛くて、
お土産として何回か持ち帰っていました。
瓶は返すと返金してくれるシステムですが、
もちろんその場の立ち飲みも可能です。

これらは、店にあった違う種類の瓶を全部並べて写真を撮らせて欲しいと
お願いして撮影したもので、
そのかわり、2枚目の写真の手前に並んでいる酸奶は
全部買って帰りました。

1989年当時の北京の裏通り(胡同)

こんなお店やら

こんなお店で売っていました。
店頭での立ち飲みももちろんできました。

 今回、この酸奶が売っていたら是非買おう!というのが
私とH先生の目標でした。
さすがに20年以上経っており、今じゃ珍しいんじゃないかという想像の通り、
地方都市では既にガラス瓶やプラスチック容器入りばかりで
ようやく見つけたのは銀川のみ。
逆に、北京の町中では「老酸奶」という名前で大々的に売っておりました。

銀川では瓶代含めて5元、
北京の王府井の出店では瓶代なしでなんと8元で売っており、
もちろん裏通りで、瓶代含めて5元で買いました。

左が、1989年に入手して家に唯一残っていた瓶。
真ん中が銀川で入手したもの。
左が北京の裏通りの店で買ったもの。
北京のは瓶が小さい!!!
そして、なんかきれいになりすぎていて、風情がないですね。
白の不透明強化ガラスっぽい瓶もありました。

それと別に、スーパーではスプーンですくって食べる酸奶も販売されており、
過去中国に留学し、毎年何度も中国に調査で来るTさんが
「中国にこんな酸奶ができていたなんて・・・」驚愕していました。

ついでなので、1989年9月末の国慶節直前の天安門です。

通勤時間外ですが、とにかく車が少ない!

毛沢東の写真の前ではみんな門の方を見ていますね。

反対側から。ビルが全然なくてすっからかんです。


裏通りにはこんな感じの自転車修理店も多くありました。
今回は自転車が激減していたことにも改めて驚きました。