2010年冬、姫路に最後に残っていた三千本膠の製造所であった清恵商店さんが
製造を中止されたことで一時期大騒ぎになりましたが、
膠文化研究会
のような組織も発足し、
数年経った現在、他の会社から新しい膠が次々と販売されるようになりました。
三千本膠という、海外にはない特殊形状の膠は、
日本画関係者だけでなく、工芸分野の人間にもその大きさが単位基準となっています。
(牛乳瓶1本分の水に三千本1本とか)
膠の形状が変わってしまうといちいち計量せねばならなくなったり、
溶かし方の要領も変わるなど
膠自体の性質そのものだけでない、三千本にこだわる理由も存在しています。
しかし、三千本の製造中止により、
多くの人が膠について考えるようになり、
多くの人が膠について考えるようになり、
これまでよりも品質が明確な膠が作られるようになったのは良いことだと思います。
海外では何故か三千本膠は魚から出来ていると信じられているくらい
材料や製法が知らされていませんでしたから。
さて、それと時をほぼ同じくして、
EU産のチョウザメ膠が輸出禁止となっていたことは
日本ではあまり知られていないようです。
単にチョウザメ膠の消費量が日本では少ないためですが、
少しづつでも使っていた自分は、やられた!という感じです。
チョウザメ膠は別名isinglass, sturgeon glueという名前で、
チョウザメの浮き袋を乾燥させたものです。
ゼラチンの純度が高く、透明度があって接着力もあり、
さらに柔軟性があるために、浮き上がった油絵の塗膜の再接着などに
最適な材料とされています。
しかし、その希少性からも、他の膠と比べるとはるかに高価です。
使い方は、できるだけ細かく裂いて水に漬けておいてから
ごく定温(40℃〜60℃)で湯煎で加熱してから濾します。
くれぐれも高温にしないことが高い接着力を保つポイントです。
そして、どうしても全部は溶けないので、
目の細かいストッキングなどで濾すことも大切です。
カスピ海で採れるSalianskiという種類が最高品質だったのですが、
2009年にいつも購入していたKremer Pigmenteで品切れになり、
同じSalianskiでもかなり質の劣るもののが届きがっかりしました。
見た目にもかなり黄色っぽいです。
これはKremerで買い直さないとと思っていたのですが、
なかなか再入荷されないうちに輸出禁止の情報が入り、
がっかりしておりました。
チョウザメというのは、キャビアを取る魚です。
鮫と言っても、鮫の仲間でない、古代魚だそうです。
実は日本でも養殖されているだけでなく、
最近は観賞用に販売もされているのです。
飼うには最低でも60センチの水槽が必要とあり、
餌なども考えると自分で養殖をするには大変そうですから
キャビアや食用として飼育されているチョウザメの
浮き袋だけでも膠用に販売してくれないものだろうか?
今あるチョウザメ膠が全部なくなったら交渉してみようか
真剣に考えているところです。
現在のところ、アメリカ産のものを細かく裁断した商品なら輸入しても問題ないと
イギリスの友人からここで購入できると教えてもらいました。
使った印象では、少々品質が異なります。
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