3年ぶりにブータン調査に行ってきました。
毎回行く時期が微妙に違うため、違う景色を見られますが、
今回は植物の専門家Oさんにご同行いただいたことで、
これまで漆や茜などばかりに注目していたため、
まったく視界に入っていなかったさまざまな植物も見ることができました。
驚いたのは、道路脇の植物はもちろん、
自分ではこれまでその存在にすらほとんど気づいていなかった、
テーブルによく置かれている造花にすらOさんは反応していたことです。
異分野の人と同行するのは、別の目を持てるのと同じですね。
3年ぶりの訪問で、やはり様々な変化を感じました。
今回もインド方面からの入国でしたが、パソコンでの電子指紋認証をされたり、
大きな町には銀行ATMができていたり、
そして、民族衣装のゴやキラを着ている人がどんどん減っている感じも。
今回はたまたま国民の祝日の法要の日や、
田植え時期の農繁期に重なったことで少々事情が違ったかもしれませんが。
そんなわけで、毎回訪問していた漆職人さんもお留守だったり、
また、タシヤンツェの多くの家で見つけていた織機もかなりなくなっていたり、
製作現場をあまり見られなかったのは残念ですが、
世界中でブータンだけ時間が停止しているわけはありません。
30代の木地師さんがデザインしたという新しい形のツァムデです。
大きさも色もなかなか良くて、
同行のOさんもこれ欲しい!と言ったのですが、
残念ながら今年挽く分の材は既に準備が始まってしまっていて、
新たに追加する分はこの冬以降しか入手できず、
できるのは来年以降になるとのこと。
タシヤンツェの木地師さんの多くは、
仲介業者が木地を持って来て、挽き賃だけをもらうシステムで、
その場で売ってもらえるものはほとんどないのです。
通常、漆塗りは塗師さんが担当しますが、
これはどうも、日本から輸入した朱の顔料を混ぜた漆で塗られたようです。
そして、数年の間に、漆器の仕上がり具合、
特に、底の仕上げが格段にグレードアップ。
以前は、裏は漆が塗られないのは当たり前で、
さらには轆轤の回転軸に接着するラチュ(ラック樹脂)がついたままも普通で、
テーブルに置いてもカタカタ言うくらいでしたが、
今回、底もきれいに削って磨かれ、漆が塗られていてびっくりです。
さて、この新しいデザインのツァムデについて
ティンプーに到着してから、同市在住のAさんから伺ったところ、
なんと、これの原型はバングラデシュで作られたプラスチックの蓋付き容器なのだと。
なるほど、そういう逆転の発想ですか。
軽くて薄くて、伝統的なツァムデよりも少ない量の木でできる、
既に木目を見せるのに良い材が減っているブータンで、
こういった漆器が今後増えてくるのかもしれません。
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