ワールドカップ、残念ながら日本は敗退してしまいましたが、
開催国ブラジルは今日、辛うじてPK戦で勝ち残ったようですね。
サッカーのブラジル代表は「カナリア軍団」とも言われ
黄色のユニフォームがトレードマークになっていますが、
「ブラジル」という国名は、
「赤い木」の意味である、マメ科の「ブラジルウッド」
「赤い木」の意味である、マメ科の「ブラジルウッド」
(Caesalpinia echinata)が語源となっています。
"brazil"という言葉はポルトガル語の"brasa"(残り火)から来ており、
材が真っ赤な木を例えたものなのでしょう。
ブラジルウッドの別名「ペルナンブーコ」または「フェルナンブーコ」
(pernambuco)は、
「ペルナンブーコ州」という地名になり、
今回のワールドカップのスタジアムの一つもありますね。
「ペルナンブーコ」または「フェルナンブーコ」と言えば、
バイオリンを演奏される方には、高級な弓の素材として馴染みのある名前だと思います。
硬い心材のみがバイオリンの弓に最適なのだそうですが、
残念ながら近年、絶滅危惧種に登録されてしまったことで、
今後の入手は難しくなるのでしょう。
昨年、高崎市染料植物園を訪問した際、
ブラジルウッドと、同じマメ科で赤い色の染料として使われる蘇芳(すおう)が
別の木だとわかったというブログ記事を書きましたが、
別の木だとわかったというブログ記事を書きましたが、
"pau-brasil" (赤い木)という名前はもともとがインドに生える蘇芳のことで、
ポルトガル人が蘇芳に似ているからこの木もそう呼んだということです。
日本でも蘇芳は古来から漢方薬や繊維の染めに用いられるだけでなく、
正倉院の「赤漆欟木厨子」や、赤春慶など(現在は合成染料を使用)
木地を蘇芳で赤く染めた上に透明な漆を塗って仕上げる技法もあります。
同様に、ヨーロッパの17〜18世紀の木工技法書には、
ブラジルウッドのチップを使って木や象牙を染める方法が良く出ています。
以下は、絶滅危惧種になる前に入手していたブラジルウッドのチップで、
古典技法の復元実験をやった際の写真です。
ブラジルウッドを細かくするのはかなりの手間ですから
このように細かく砕いた市販品を使うのが楽です。
蘇芳の材はどちらかと言えばピンクがかっているのに比べ、
ブラジルウッドはオレンジ色がかっています。
これに水とお酢を加えて煮出すのですが、
水だけで煮ると水が薄いピンク色に染まる程度が、お酢を加えたとたん、
驚くくらい真っ黄色になります。
赤い木のはずなのに・・・と一瞬慌てますが、
ここに明礬を加えると、
一瞬で赤くなります。これは何度やっても面白い瞬間です。
さらに攪拌しながら煮出して行くと
かなり濃い赤が出ます。
適当なところで木の粉を濾します。
左が粉の状態のブラジルウッド、右が煮出した汁です。
かなり濃い赤になります。
白い紙の上に塗るとこんな感じです。
オレンジよりもピンクに近い赤です。
こんなに美しいブラジルウッドと蘇芳の赤の成分「ブラジリン」は
残念ながら退色しやすいのです。
サッカーのブラジル代表がこの色のユニフォームだったら、
かなり印象が違いますね。
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