2014年6月11日水曜日

アリスの帽子屋の謎

ロンドンのテムズ川南部のバス通りに、
The Mad Hatter Hotelというホテルがあります。
http://madhatterhotel.co.uk

このホテルは帽子工場だった建物を改造したのだそうです。

ご存知のように"The Mad Hatter"と言えば、
「不思議の国のアリス」に出て来る登場人物です。
(Wikipediaより)
この右端にいるトップハットをかぶっている人物です。

さて、Mad Hatterとは何か?
その理由がマンチェスターの南、ストックポートにある
帽子博物館(Hat Works Museum)の配布する資料に詳しく書かれていました。


ここに書かれている英文の説明をざっと訳してみますと、
山高帽などの帽子を作るため、
ウサギなどの動物の毛をフェルト化する工程で、
二硝酸水銀(mercuric nitrate, Hg(NO3)2)が使われていました。
水銀が獣毛のからまりを良くする効果があるためなのですが、
その理由は帽子屋によって違うことを言うそうです。
水銀がフェルトを作るのに役立つということは
実はフェルトに使われる毛皮の洗浄に尿が使われており、
治療に水銀が使われていた梅毒を煩った帽子職人の尿が
より効果的だったことからわかったのだそうです。
この尿で処理されたフェルトはオレンジ色になるので
これを"carrotting"(人参化?)と言うそうですが、
梅毒患者の尿で処理されたウサギの毛で作られた帽子・・・
尿はローマ時代には洗濯にも普通に使われていたり、
絵画の古典処方を読むとよく出て来るとは言うものの、
いくら高級な山高帽でも、
その工程を知ってしまうとちょっと使いたくないですねえ。

さて、水銀が人体に吸収されると、最初はアル中のような症状から
異常な行動をするようになり、
そこから、水銀中毒自体をmad hatter's diseaseと言うようになったとか。
もちろん現在では水銀の工業的使用は規制されていますが、
例えば漆器に使う水銀朱然り、
やはり水銀しかできないこともいろいろあるために、
世界的な全面禁止はどうしても難しいでしょう。

また、水銀に金を混ぜて溶かし金属に塗り、加熱して水銀を蒸発させて鍍金する
アマルガムメッキも欧米では禁止されています。
気化した水銀が人体や環境い有害だからですが、
奈良の大仏を鍍金した時にはどれだけの水銀があたりに気化したのか、
考えると凄まじいものがあります。
当時の奈良にmad hatter's diseaseが広まっていたのは間違いないでしょう。

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