2017年4月23日日曜日

キーカンにはマコー(4)

2月はラオス観光のハイシーズンで、
通常は予約なしでも余裕で泊まれるというはずの宿も全て満室、
あちこち当たってもダメで、そのうちあたりは真っ暗に。
幸い、宿屋の集まる地域の外れのバンガローに辛うじて空きがありました。
なんと1泊1部屋が日本円で約40円!

真っ暗な中到着したので、朝の絶景にはびっくり。
この近くでもラックを育てている人がいるという話でしたが、
人に見せるためだけにやっていて売ってはいないとのこと。

朝食を食べて、ついにラック養殖の村に向かいます。
なんと、この村で最初に見かけた人が鍛冶屋のNさんで
ラックも養殖しているという幸先の良さ。

さっそく自家用に取っておいたというラックを譲ってもらいました。
ラオス人の運転手さんのアドバイスで
まずは村長さんに会ってご挨拶した方が良いということで、
朝から農作業に向かったという村長さんを追いかけます。

先ほど入手したラックをお見せし、養殖地に案内してもらえないか交渉すると、
さっそく道のすぐ下に入って行かれます。

ついていくと、この先の足元に黒い煤のようなものが落ちていました。
間違いなく上にラックがいます。

いましたいました。
これは「マイリャン」という木だそうですが、やはり英語名などはわかりません。

今度はその向かいの急傾斜を登ります。

かなりの傾斜地に、キマメが植わっていました。

ラックがついてます。
ここと先に見た養殖地は、たまたま村長さんと一緒にいらしたTさんのものでした。

10月に種ラックをつけましたが、そろそろ一部をとらないと、
木が弱って虫もダメになるそうです。

ところで、お二人ともかっこいい道具入れをお持ちなので
中も見せていただいたところ、

ナタの刃を柄に接着しているのがラックだということでした。

作業中に刃が外れてしまっても、いつでも接着しなおせるように
このキーカンの塊をいつも持ち歩いているそうです。
これは自分の畑で取ったラックから赤い色素を洗ってから熱して固めたもので
この村ではラック染めはしていないのだそうです。

もう一箇所、別の方の養殖地にも連れて行ってもらいましたが、
ここもかなりの傾斜地でした。
日も高くなり、村長さんたちも農作業をしなければならないので
ここでお礼をしてお別れし、村に戻ります。

教えてもらった村のラック集積場所を訪ねましたが、
ラックは全くないと言われました。
家の前に座っていたおばあさんが切っているのは
種ラックを入れて木に取り付ける時に使うネットだそうです。

先ほどの鍛冶屋さんのところに戻り、
養殖地に連れて行ってもらえないかお願いしましたが、
既にお昼に近く、2月とは言え気温は既に30度に近くになっています。
こんな暑い中養殖地に行くバカはいない、
夕方4時くらいならいいよ、と言われ、出直すことになりました。
この先にも養殖をしているという別の村があるのですが、
この時間に村に行ってもみんな農作業中で誰もいないから無駄と言われ、
とにかく今夜の宿と昼食です。

昨日は満室で取れなかった宿も、この時間なら余裕で空いていました。
天気もよく、一気に南国リゾート気分ですが、
まずは洗濯です(笑)。
宿の庭にはラックのホストの木となるインドナツメもありましたが、
もちろんラックはついていませんでした。

そして、4時に再度Nさんを訪問。
Nさんの養殖地は村長さんのお友達の養殖地とは反対側の山でした。

チークの林の中をひたすら歩きます。
チークは高く売れる木材なので、あちこちに大量に植えられています。
この、チーク植栽地が終わるあたりでNさんが横にささっと入っていき、
はい、って見せてくれたのがこれです。

ついてますついてます。

ここから1時間半くらい歩いた山の中にも養殖している場所があるけれど、
君たちの足じゃ無理だね、と言われ苦笑い。

Nさんはお父さんの代からラック養殖と鍛冶屋をやっていて、
別の村に住む息子さんも鍛冶屋をやっているけれど、
その村ではラックが作れないので、ここで取ったラックをあげているとのこと。
鍛冶屋の仕事にはラックは必需品というものの、
鍛冶屋だけでは食べていけないので、農業林業を副業にしているそうです。

この村全体で数トンの収穫量があったこともあるけれど、
買取価格が暴落したため、今では自家用しか作っていない。
でも、いつか値段が上がったらまた養殖を再開できるように
虫を生かし続ける、とのことです。
ラックは放っておいても育つので、
必要な時に取りにくればいい、という話は、なんとも贅沢に思えます。

この村では染めをやっている人がいないため、
ラックは全て接着剤としてしか使われていません。
ここから車で30分くらいの場所では、村全体が染織をやっているのに、
なんとも不思議なものです。

さて、明日はいよいよラック染めです。
(続く)


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この調査は生き物文化誌学会さくら基金の助成により行われました。

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