2017年4月23日日曜日

キーカンにはマコー(3)

ラック産地に向かう道中で、
突如、道路の両脇に奇妙な光景が現れました。
道路からは黒い紙を干しているように見えましたが、

実は、この地区の名物の川苔を干していたのです。
白いのはゴマ、赤いのはトマトの薄切りで、油で揚げて食べるそうですが、
通りの両側のほぼ全ての家で作っていました。

さて、産地の前に向かったのは、ラオスの文化村第一号に指定されたという
綿織物で有名なある村です。
メインの舗装道路から脇に入る泥道を進むと
まず、中国が作らせているという気持ち悪いバナナ植栽地がありました。
この周辺では中国企業が輸出用のスイカやバナナを大量に作り、
そこで使われる農薬や肥料が土地と水を汚染するだけでなく、
作物が売れなくなるとその場所を放棄し、
その後は何の作物もできなくなるのだそうです。

その耕作地の先に集落がありました。
悪路にもかかわらず、観光バスもやってくるような有名な村だそうです。

外国人が来ると商品を持って見せに来る様子はかなり手慣れてます。
ラオスにはもともと布染めの文化はないはずなので、
左の藍の絞り染めは日本人が教えたのでしょう。

織り機もあちこちにあります。(手前の白い物体は石鹸)

藍の匂いがすると思ったら、藍甕もありました。

ここでは琉球藍を使っているそうです。

手前のお宅から、一人の女性が出て来ました。
以前この村の調査をしていた日本人女性と
今回ガイドをしてくれているMさんを間違えたようです。

せっかくなのでラックについてお伺いすると、
このこから少し奥に入った村の人が今も山で養殖していると聞いているけれど、
もう何年も前からラックは入手できないので、染めていないそうです。


ラックを染めるには2-3週間かかり、マコーが必要だと言います。
マコーの実は11~1月の間に採取するもので、
来る途中で見た川苔の味付けにも使うため、
今の時期にはもうないとのこと。

と、わざわざ二階から昔染めたという
布団の上に掛けるという布を持って来てくれました。
木綿なのにかなりしっかり染まっています。

こんな色はもう染められないので、売らないで自宅用に取っておいているそうです。

ここで染めた色はどこよりも美しいと褒められるとのこと、
それはガイドのMさんも同意されていました。

そこに近所の人が「キーカン(ラック)ならこっちにあるよ」と教えてくれます。
案内してくれたのは、数件先の家の裏手です。

本当にあった〜!


人工的に養殖されたラックでは見られない分布状態です。


ここで二世代続いたことがわかります。

さすがに太い幹での更新は無理のようですが、幼虫が孵化した穴がわかります。

細い枝には虫が生きている証拠でもある、
白いフィラメント状の蝋もちゃんとあります。

この木は「マクテン」という木だそうです。(学名など不明)
これは8年くらい前にラックのプロジェクトをやった時の残りで、
プロジェクトはアリの被害にあってダメになってしまったけれど、
これはその時から放置してあるものなのだそうです。
放置していても虫は自然に更新して生き続けている、
つまり、ここの環境がラックの生育に適しているという証拠です。

これくらいの量では染めにも使えないから放置されているのでしょうが、
必要となれば、ここからラックを増やすことも可能です。
ここにきてようやく明るい光が見えてきた感じがしました。
(続く)

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この調査は生き物文化誌学会さくら基金の助成により行われました。

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