2015年12月28日月曜日

ラックを訪ねて中国編(4)

最後は、資源昆虫研究所の実験農園(試験站)がある元江(ユエンジャン)です。
元江は墨江より低地にあり、
30年ほど前に、インドから輸入したクスミ種のラックを養殖するために
中国国内各地の気候を調べ、最適な土地として選ばれたのだそうです。

しかし、残念ながら、一年を通して温暖で肥沃な土地柄、
他の換金作物がいくらでもあり、
ラック価格の暴落以降、ラックを育てる農家はいなくなり、
一件だけあったラック工場も閉鎖されていました。


現在この試験站の職員は所長とアシスタントの2名に、
手伝い2名の合計4名だけで、
林業科学院や林業大学の学生が研究のために訪れることはあっても、
主目的は「クスミ種の保持」なのだそうです。
そこまでクスミ種はラックの中では優良種と見られているのに、
最大の問題は、工場では他のラックと一緒に加工されてしまうことなのだとか。
確かに、そんな条件じゃやりたい農家はいなくなりますね。
インドの工場ではクスミとランギーニはちゃんと分けられていましたが、
輸出先の欧米や日本の工場で精製される際には
残念ながら全部混ざってしまっているようです。

やはりインドから輸入したクスミの木(セイロンオーク)の上で、
またいつか農家に配布できるようにと、種は保持されています。

ここのラック虫は人に殺されることもなく、
適切な環境で人間に手厚く保護され、半年に1世代で30年間、
合計60世代を生き続けているのです。
考えてみれば、世界で一番幸せなのかもしれません。

人間が見つけて利用し始める前のラックカイガラムシとはどんなものだったのか、
いろいろ考えさせられました。

ところで、ここでは蝶の養殖も行われていました。
資源昆虫で蝶?

Cさんによれば、
結婚式で蝶を飛ばして祝うために、
どの色に一番反応するかなど調べているそうです。
日本じゃありえない発想だなと驚きました。

元江は雲南種や中国種のラック虫には夏が暑すぎるため
養殖ができないそうです。
中国は広いです。


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この調査は生き物文化誌学会さくら基金の助成で行われました。

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