2013年11月2日土曜日

季節最後の漆

あっという間に11月となりました。
既に産地では漆掻きシーズンも終わり、
雪が降る前に木を切り倒している頃と思います。

日本では漆は「殺し掻き」と言って、初夏から秋にかけて4日に一度漆の幹に傷をつけ
傷口からしみ出る漆をその都度採取し、
秋になって採取し終わった木は、根元から切り倒して萌芽更新を行います。
一見、残酷な方法に思えますが、切った木の根元から新しい芽を育てる方が
効率的に漆が採取できるということが経験的にわかっているからなのです。

中国では「養生搔き」と言って、
数年おきに同じ木から樹液を採取する方法を取っています。
中国の場合は、傷口の下に受けざらとなる木の葉(現在はビニール製)を装着し、
数日おきにたまった樹液を回収する方法です。

日本でも漆の実から蝋を採取していた時代には養生搔きが行われていましたが、
傷をつけたらその場で採取する方法です。

さて、以下の写真は2008年12月6日に岡山県新見市の漆の館の植栽地で
その年に掻いた漆の木を切り倒す作業を見学したときのものです。

漆掻きの小野忠司さんがチェーンソーで切りたおしています。
枝を落とします。
枝を落とした幹からも最後の漆を採取します。
切り倒した木はこんな感じ。
漆の切り株です。
心材があざやかな黄色をしています。

良く見ると、白いものが出てきています。
仮に「株漆」とでも言いましょうか。

 切り倒した幹の方もこんな感じで出て来ますが
切り株の方が量が多いです。
 どんどん出てきます。

特製ペットボトル採取器具(下にフィルムケースを装着)につけてみるとこのとおり。
まるで木工用ボンドのような見た目と粘度です。

 さらに置いておくとこんなぐあいにどんどん盛り上がってきます。


漆の出ている部分がよくわかりますね。
しかし、このようにしばらく置いておいても色が白いままということは、
漆の硬化反応が遅いという証拠です。

数日前に切り倒したという株はこんな感じに黒っぽくなっていましたが、
触ってみると中はまだふにゃふにゃです。

材はその後このように短くされ、利用方法を考えることに。
漆を掻いた材はとても軽く、昔は漁業用の網の浮きなどに使われていましたが、
浄法寺や大子など各地でいろいろ実験的製作が行われているものの、
これといった決定版の使用方法はまだ見つかっていないようです。

翌朝は霜が降りていました。
霜の中での漆はやはり固まっていませんね。

採取した漆は後日、実験手板に塗って漆風呂に入れて硬化実験をしてみましたが、
その乾かないこと乾かないこと。
これだけもっちりしているのだから水分量が多いのは間違いないところですが、
これも何か利用方法があるのではないか?と思いつつ。

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