2013年11月4日月曜日

柿右衛門の柿色

柿の季節となりました。

柿と言えば、「柿右衛門」。
海外でも"Kakiemon"で通じる程有名です。

何度も博物館で見ているし、見たものの形状なども覚えているのに、
自分の写真のフォルダーを探してみると、意外にも見つかりません。

「柿右衛門」は日本の輸出漆器を代表する様式で、
ヨーロッパでは同じような作品が作れないかと苦心を重ね、
様々な類似の作品が作られました。
マイセン(ドイツ:18世紀)
マイセンはアウグストス強王の強い熱意により、
職人や錬金術師を使い、ヨーロッパで最初に磁器を作ることに成功しました。
製法も職人も門外不出でしたが、
それでもそこからなんとか逃げ出した職人などが
ヨーロッパの各地に磁器の製法を伝えました。

デルフト(オランダ:18-19世紀)
デルフト焼は磁器でなく、陶器に白土で上掛けをして、
磁器のような風合いに見せかけたものです。
磁器は適した土がなければできないのですが、最初はそれがわからなかったためです。

チェルシー(イギリス:19世紀)
イギリスでも陶磁器に適した土が採取されたことで、
ウエッジウッドやスポードなど有名な窯が誕生しました。
(いずれも愛知県陶磁資料館蔵)

「柿右衛門」は熟した柿の赤の表現を目指して作られたそうですが、
このあざやかな赤の主材料は弁柄(べんがら)です。
(※酒井田柿右衛門窯ではこの赤色に秘伝の調合があります)
弁柄とは紅殻とも書きますが、酸化第二鉄のことで、
名前の由来はインドのベンガル。
英語ではIndian redというものと同じ成分ですが、
弁柄にも何種類もあって、色が微妙に異なります。

岡山県の吹矢町(現在は高梁市の一部)は弁柄の産地として有名です。
ここでは緑礬(ろうは)という、地元で取れる磁硫鉄鉱を加熱したものを使い
弁柄を作っていました。
ここでの弁柄製造は一度途絶えたものの、
江戸時代に初めて日本で弁柄の生産をはじめたという西江家が
近年製造を復活しているそうで、
新しい弁柄の開発にも成功しているようです。

邸宅は一般公開もされています。

吹矢町は弁柄の町並みが残り、観光名所として有名であり、
一度見学してみたいものだと思いつつ、まだ機会がありません。

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