「工芸素材の研究」となると、
どうしても、生産と継続が息絶え絶えの
天然素材の調査が主体になります。
天然素材の調査が主体になります。
しかし、実際、世界各地で調査を行い続けると、
どうしてそんなに天然のものにこだわるのか?
と、職人さんの愚痴を聞くこともあります。
もちろん、調査をしている自分が着ている服は
全て化学染料で染められ、
全て化学染料で染められ、
鞄や靴だって全て石油製品です。
現地の方に偉そうなことを言える立場ではありません。
しかし、そういう環境から来たからこそ、
天然のものを切望するとも言えます。
そういう立場から、ようやく理解したのは、
伝統的な文様や様式の衣服や工芸品を作るのに、
今では、良質な天然素材を適正価格で入手するのが難しいからこそ、
化学物質や量産品を使うことで理想の完成度の品を作ろうとするのも
プロフェッショナルと言えるのではないかということです。
(※それを天然素材だと偽ってしまっては駄目ですが)
プロフェッショナルと言えるのではないかということです。
(※それを天然素材だと偽ってしまっては駄目ですが)
産業革命後の様々な化学物質の発明から100年以上、
それらは既に、堂々とした伝統素材になっています。
特にインドはそれが顕著です。
インドのアッサム州の、ブータンの国境近くに
メラ・バザールという商店街があります。
この近辺には、ブータン人専用の布や、
エリ蚕からブラ糸を作る工房がいくつもあり、
それを売るインド人の店が2件あります。
インドの糸や布は大量に作られるため、安く品質も安定しているため、
ブータンの民族衣装のゴーやキラに使われるブラという野蚕糸は100%、
特別な機会に着る服以外の布はほぼ全てがここ製と言っても
言い過ぎではないはずです。
そんなお店の一軒、創業70年という老舗を訪ねました。
このお店は、鎖国時代のブータンの大使館代わりをしていた
「ブータンハウス」のあったカリンポンでブータン人用専門店として創業。
チベットへの中国が侵攻をきっかけにこの地に移転したのだそうです。
お客は全員ブータン人、店の経営と店員はムスリムのインド人です。
ここで売っている布と糸はほぼ100%化学染料で染められていて、
布は機械織りです。
特別に、別の場所にある倉庫と染色工房も見せてもらいました。
天然染料を使わない理由として見せてくれたラックで染めた糸。
天然物は品質が安定しないから、このように糸の色がまちまちになってしまい
使うことができない、ということで、
奥の作業場には、乾燥中の大量の糸。
全ての糸は同じ色に染まっています。
他の工房と違い、うちの糸は色落ちがしにくい、
その理由は、塩を色止めに使っているからだ、
と、塩をひとつかみ、
これを、横の洗浄槽にぽいっと投げ入れました。
舐めてみたら本当に塩でした。
ここが糸の保管庫です。
ブータンの民族衣装に使われる色だけが並んでいます。
ある意味、非常に合理的です。
ある意味、非常に合理的です。
そして、この棚にビニールに入れて積んであるのは、
ブータン東部、メラ・サクテン地区に住むブロクパや
インドのアルナーチャル・プラデシュ州のモンパの着る
「トゥドン」という女性の上着でした。
ブータンの民俗衣装のゴーやキラだけでなく、
ブロクパやモンパの少数民族の衣装も、
今ではうちが独占商売みたいなもんだよ、ははは、と
店主はニコニコ顔で説明してくれました。
実際にメラに行って現地の方に伺ったところ、
染色材料も糸も、今はみんなアルナーチャルのタワンや、
メラバザールで買っちゃうとのこと。
日本各地の観光地のお土産が、
パッケージは違うけど、実は作っているのが同じ会社だったりする、
そういう種明かしをされたような複雑な気分になりましたが、
その後訪れた染色工房で考えが変わりました。
(続く)
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