2014年12月16日火曜日

輝く衣装の秘密

少々時間が経ってしまいましたが、
漆サミットの翌日には、大阪の国立民族学博物館(みんぱく)に行って来ました。
12月9日まで「イメージの力」という特別展が開催されていました。

通常は地域毎の展示となっているみんぱくの所蔵品の一部を選び出し
それらをテーマ毎に分けて展示を行うことで
これまで気づかなかった新たな関係が見えて来る
そんな感じの画期的なものでした。
既に東京の新国立美術館での展示がありましたが、
展示会場の様子も違うみんぱくではまた見え方も異なりますし、
写真撮影も可能ということもあり、かなり多くの方が熱心に見ておられました。

この日は、この特別展の企画に関わった一人でもある
インド染織の研究家である上羽陽子さんが「ウィークエンドサロン」において
「邪視をはねかえす力」というテーマで
インド西部のカッチ地方の鏡を刺繍したミラーワークの服や布とミラーの現物、
さらにご自分で作られたミラーワーク刺繍の制作手順の見本を持参されて、
わかりやすくお話をして下さいました。

カッチでは1970年代まで幼児婚(5才くらいの子供が嫁入りする)が行われており、
現在でもその名残として幼児期に婚約を行うこともあるそうです。
幼児婚の利点は、早い時期から双方の家族が親族となることで、
皆が生活していく上での様々な部分で協力しあえることだそうです。
この下の服がその花嫁の婚礼衣装です。

 細かく割られた鏡がたくさん縫い付けられています。

こちらは、婚礼の儀式で用いられる、砂糖の上にかぶせる布だそうです。

 これがミラーワークの元になる鏡の表面です。

こちらがその裏側となります。
吹きガラスの内側に錫を入れて銀色の膜を作っています。
通常は細かく割られた状態のものしか見ないのでわかりませんでしたが、
大きい状態で見ると、結構ムラになっていますね。

割ったガラスの破片、と言うと怪我をしたり、布や糸を傷めてしまいそうですが
このガラスは吹き製法のために薄く柔らかく、
少々傷をつけるだけで簡単に割れて形を作りやすく、
逆に工業的に作られたガラスは厚く硬すぎるため使いにくいそうです。

この鏡をボタンホールを作る要領で布に取り付けていきます。

裏側には最小限の糸しか見えてないですね。

服の裏側もミラーが取り付けられた部分の糸はほとんどわかりません。

この鏡は、単に輝いて綺麗だというよりも、
他人からの妬みの視線をはね返すという効果が期待されているのだそうです。
婚礼などのお祝いでは特に、
本人も気づかない深層心理的な妬みの視線で
回りの人が主役やその家族を見ていることがあるということで、
様々な意味のある刺繍模様と共に、衣装の中で重要な意味を持っているようです。
ガラスが現地でできるようになる前は
雲母のようなものが使われていたのではないかということでした。

「邪視避け」としてはアラブの「ファティマの手」や
青い目のお守り「ナザル」も有名ですが、
インドではこの他にも、
赤ちゃんの顔をわざと煤で少し汚すような風習もみられるそうです。

きらきらと光る服の飾りはミャンマーやタイの仏像や家具にも見られますね。
ガラスの製法が伝わる前は雲母が使われ、
さらに現代ではスパンコールに変化しているそうです。
現代日本の若い女の子達のデコ携帯やネイルアートなど、
彼女達も無意識に様々な邪視をはね返しているのかもしれないですね。

(上羽さんに資料写真使用承諾と本文のご校正を頂きました。
ありがとうございました)

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