先月末の岩手では、秋の漆林で作業手伝いをしていました。
残念ながら漆林の写真はここにご紹介できませんが、
今年の岩手は8月に雨が多く、漆掻き最盛期にほとんど作業ができなかったそうで、
残念です。
しかし、山は秋の恵みがいろいろでした。
とにかくあちこちにアケビが。
この蔓は籠などに使われるようにとても丈夫です。
しかし、漆の木に巻き付くと幹を締め付けてぼこぼこにしてしまうので、
見つけ次第外さないといけません。
アケビ細工をする人が一緒についてきてくれて、
徹底的に蔓を外して使ってくれればなあ、なんて、毎回思っています。
そして、ヤマグリ。
写真ではわかりづらいですが、小さい実がバラバラと落ちています。
これを食べに熊などやって来るので気をつけないといけません。
ヤマグリ(シバグリ)は普通に売っている栗よりかなり小さいので、
剥くのも大変だからか、地元の人はわざわざ拾わないようですが、
殻に傷をつけて電子レンジでチンするのが一番簡単、だそうです。
これは実家で近所の方から頂いた栽培種の栗ですが、
シバグリはこんな感じ。
同じザルに入れていますので、ザルの目が大きく見えるのがわかるでしょう。
手前に見えているのが虫の穴。
天然の栗につく虫の割合はかなりのもので、
拾った栗も1/3が虫つきで、
袋に入れて持って帰って来る間にもかなり喰われてしまっていたようです。
これは、お米につく虫と同様、
実や種が熟す前に卵が産みつけられているからなんです。
そう言えば子供の頃、「栗むし羊羹」は「栗虫」を連想させられ、
名前のせいでおいしさが半減していたような。(笑)
せっかく剥いている栗が虫だらけだと「憎き栗虫め!」
と、思ってしまうのですが、
ご覧ください、この美しい糸!
「栗繭」と書かれていますが、
なんと、この栗虫が作る繭から引かれた糸なんだそうです。
東京スピニングパーティーでのアトリエ・トレビさんの展示品です。
漆の植栽地でよく見かけるこの繭から引かれたものらしく、
今度見つけたら是非集めておいて!と頼まれました。
見本に置いてあったアジア各地の野蚕のいろいろです。
育てている植物に着かれたら害虫ですが、
繭を使うなら立派な益虫です。
これらの繭から絹糸を引くためには、
それぞれに適した酵素を使うなどのノウハウも必要です。
自然の森の中でこれらの蛾を育てるとなれば、
周辺の木々までに被害が及ばないような工夫が必要になることは否めません。
それを思うと、人の与える桑の葉しか食べないように人工的に交配され続けた家蚕は
既に野生では生きられないそうですから、
人間の執念というのもすごいものだと思います。
しかし、栗の実を取るか、それとも栗糸を取るか、
栗好きには究極の選択です。