2014年4月24日木曜日

漆の種の蒔き方

さて、浄法寺の大森清太郎さんの漆の種の蒔き方です。
脱蝋し、10 日間真水につけ、3 日に一度水を交換していた種。
気温が低ければ時間を長め、気温が高ければ短めでもOK

 種を蒔く畑は10日くらい前に配合肥料、硫安、牛糞などを入れ
鶏糞は窒素分が多すぎるので使わない。
20-30cm耕し、ガス抜きしておく。
ガス抜きが不十分だと成長障害が起きる。
ドラム缶に水を半分くらい入れたローラーで地ならしし、上にビニールをかけておく。

種はこの程度にばらまき

 上に土を1センチくらいかぶせてならす。

その上に藁をかぶせ、あらかじめ張っておいた藁紐を上にし、

リンゴの枝に切れ目を入れたものを使い

藁を紐で押さえる。

夜になれば水分が土の中から上がり藁に露が付き、適度な湿気が与えられるので
種まき後に水をかけなくても良い
藁は地表の乾燥防止と、土が風で飛ぶのも防ぐ。

20 日くらいで芽が出るので、藁を取り、6 月に間引きを行う。
11 月に葉が全部落ちてから苗を抜いて保存する。
(束ねて杉の葉をかぶせ、雪の下に埋めておく)
そのままにしておくと霜に弱いので焼けてしまう。
じめじめしたところも適さない。
これを2 年繰り返し、20 センチくらいで根を切ってから本植え。
(植え替えの時の活着を良くする)
土は重機で踏み固めない方が良い。

その年、脱蝋した種を頂いたので、帰宅してから水に浸して蒔きましたが、
残念ながらうまく発芽してくれませんでした。
大森さんの畑の土は、火山灰質のさらさらで砂のような土です。
大森さんはゴールデン・ウィークの前頃に種蒔きをされるそうですが、
青森と秋田の県境に近い浄法寺では、その頃が桜の時期です。
暖かい地区ではそれより早い時期の種蒔きと、
適切な水やりも必要になるかもしれません。

2014年4月23日水曜日

漆の種の脱蝋方法

うちの漆の若芽は、数日の雨の後もぐんぐん生長中ですが、
日本最大の漆産地、岩手県浄法寺ではまだまだこれからです。
浄法寺あたりではいつも連休ごろに桜が咲き、
その少し前くらいが漆の種のまき時だそうです。

 2年前のものですが、これが漆の実のついた房です(下の目盛は1センチ角)

皮の下に白い蠟分があり、その中に瓢箪形の種がひとつづつ入っています。
(右下2つ)

漆の種は、そのまま蒔いてもなかなか芽が出ません。
種の皮が固いことと、蝋分のためです。
漆苗を育てるには種蒔き前に脱蝋処理というものを行います。

以下は、2012年の5月に、日本文化財漆協会の研修で、
浄法寺の漆掻き、大森清太郎さんから教えていただいた脱蝋方法です。

蝋は実の1/3 くらい含まれており、
10 キロの実から水に浮く種も取り除くと、種まきに使える種の量は半分以下になる。
漆の実は、前年漆がよく取れた木のものを使う。
漆掻きを終えた木を切り倒した後、9 月20 日頃に採取し、
天日で干しておいたものを使った。
木を切り倒した後に枝から実を採る方が楽で早い。
 あらかじめ実の表皮と蝋の粉を取り除いた実1 に対して木灰1を加え、
大きめの缶の中で混ぜる。
(大森さんの使われる灰は、漆を掻いた後に切り倒した木を
薪ストーブで焚いた後のものを使われているという見事なリサイクル!)

85 度くらいのお湯と冷水を用意しておく。

お湯を灰と混ぜた種を入れた缶に注ぎ、底からよく混ぜた後
すぐに水を注いで冷やす。
種が煮えないようにするためにこの作業は手早く行う)

浮いた種は実が入っていないので、穴あきお玉で掬って捨てる。

灰と蝋の混じったお湯は畑に流し、底に沈んだ種は網に入れて水洗いする。

さらに網を使ってごしごし擦る。
保存する場合は水を切り風通しの良い場所で乾燥させるが、
蒔く場合はその後1週間から10日ほど水に浸ける。

小さくてわかりづらいですが、種を半分に切った様子です。
左が沈んだ種、右が浮いた種です。

現在、漆苗を作る方のほとんどが硫酸を使った脱蝋処理をされます。
灰はアルカリ、硫酸は酸という真逆で不思議だなと思いました。
熱した灰水は蠟を鹸化し(石鹸を作るのと同じ)水溶性にし
水と一緒に流すことになりますが、
硫酸は鹸化せず、強酸の力で蠟を一気に焼き切ってしまうようです。
(その後、水を加えて捨てるそうです)

硫酸は劇薬ですから、もちろん購入手続きも煩雑な上、
取り扱いにも細心の注意が必要ですが、
硫酸で脱蝋処理をした種は一気に発芽するので、
その後の移植作業も楽なのだそうです。
それに比べ、熱湯処理の場合は、秋まで発芽の時期がまちまちになるということで、
この年、同じ日に硫酸処理と熱湯処理の種を別々に苗床に蒔いて、
発芽状態を比較する実験も行われました。
確かに数ヶ月は熱湯処理の発芽にばらつきが見られたものの、
年末までには生長が追いついており、これには大森さんも驚かれておられました。

硫酸は濃硫酸を使い、10 分、15 分、20 分程度浸して水で洗い流す。
この場合は蝋が焼けたように黒くなる。
濃硫酸は農協を通じて購入する。
漆の実から表皮と蝋を取り除くのには、戦前の低速の古い精米器を使うのが良い。

会津若松で漆苗を生産されていた初瀬川ウメさんの手記では、
実を擦って蠟の粉を落とした後の種を尿に暫く浸けておく(!)
という方法が書かれていました。
どちらにしても、なるだけ危険を伴わず、
環境を汚染することなく、逆に畑を肥やすという方法は理想的だと思いました。

種の蒔き方については次回またご説明します。

徳島の阿波漆の漆掻き、十鳥弓枝さんのブログには、
さらに手軽な脱蝋方法が書かれています。

2014年4月16日水曜日

漆の花芽

雨が全く降らないので、生長スピードがそれほどでもないのですが、
にょきにょき育っております。

葉っぱだけが伸びている木もあれば、

既にこんなに花芽が出来ている木も

花芽がつく木とつかない木があるというのは
単に歳が若いだけなのかどうなのか。
分根法で作った苗は全部親木と同じ性質を受け継ぎますから、
全部がどちらか一方、ということになります。

そして、一昨年まで父が、養分が花に行ってしまうことを嫌って
花を全部取ってしまっていたこともありますが、
去年も全く実はなりませんでした。
漆の木には雄雌があるというのが牧野富太郎の説ですが、
岡山の小野忠司さんによれば、
大干ばつが起きた歳に、それまで実がつかなかった木にも実がついたそうで、
雄雌はない、ということを断言されていました。
漆はかぶれるために植物学者もなかなか手を出さないので、
改めて牧野説を確認するという方もおられないようで、
こういう部分もちゃんと調べて明らかにしたいものです。
そろそろ天ぷらにはできない大きさになってきました。

5年目の木の上の方もかなり葉が育ってきました。

去年出てきた芽も、冬を越してくれました。

漆の木の近くにある梅もぼちぼち実が大きくなってきました。

いつか烏梅も作りたいです。

2014年4月10日木曜日

藍植えお

漆だけでなく、他の植物もぐんぐん育っています。
西洋茜の生長は驚く程。
去年残っていた根から育ち、これだけ大きくなりました。

日本茜の方は、去年の根からはまだ音沙汰なく、
冬に蒔いた種から、ようやく生えて来ました!
左が西洋茜、右が日本茜。
種の大きさもこれだけ違います。

外の果肉を洗った中の種の比較。
種の様子だけでも、西洋茜の方が生命力が強そうに見えます。

 さて、藍の方は、昨年秋に採取した種を蒔くのがちょっと遅くなり、
その間に、こぼれ種から目が出ていました。

こぼれ種で生えて来るのは生命力が強い証拠です。
今年は期待してしまいます。

漆の芽の方も順調です。

一日でこれだけ伸びます。

これくらい伸びた赤い芽が天ぷらにできます。
(しませんが)

大きい方の木の脇からも芽が出て来ました。
今年はなんとか実がついてくれないかなあと期待してます。

2014年4月8日火曜日

そろそろ漆が

桜もあちこちで満開となってから、寒の戻りとなり、
友人の家の方では雹や雪が降ったと聞きました。

そんな中でも漆は着々と生長を続けておりました。


一日一日、大きくなります。

漆の芽は(もう少し生長してからですが)
タラの芽のように、天ぷらにして食べられます。
やはり漆に弱い人はかぶれてしまうそうですが。
美味しいのですが、さすがに自宅の少ない本数の漆の木から
芽を摘んで食べるのははばかられます。

2014年4月4日金曜日

桜と染工房

今年は寒さが長引きましたが、気が付いてみたら桜は満開、
残念ながら天気予報ではこの後天気が崩れるということで、
この週末で桜の見頃も終わりかと思います。
昨日から知人のイギリス人が仕事で初来日、1週間だけ滞在する予定ですが、
何と運の良いことかと思います。

さて、2012年の桜の時期はもう少し遅かったようです。

まさに花酔いしてしまうような桜の満開の時期に、
都電「面影橋」駅から徒歩数分にある、
富田染工芸を見学しました。
ここは入場無料ですが、平日しか開いていません。
(書き込みのタイミングが悪くてすみません)

面影橋で降りたら、橋を渡って神田川沿いに歩くと数分の場所で、
写真ののれんが目印です。
以前目の前を流れる神田川で染めた布を晒していたそうです。

ここから落合・中井あたりの神田川沿いは昔からこういった染め物が盛んで、
今でもたまに染め関係のイベントも行われています。

のれんをくぐるといきなり染め場が現れます。
反物を貼り付ける長板、まさに長い板がずらり!
 糸で補強した伊勢型紙です
 大小のダルマ刷毛
薄暗い店内にさまざまな物が置かれています。
奥の方にも数々の道具が展示されています。
 古い桶やかき回し棒、
 地張り木。長板に布生地を貼り付ける際に使う道具です。
 刷毛や筆のいろいろ
木目板、みご刷毛、筒描き用の筒
型紙と、糊を型置きした布
古いそろばんまでありました。

これらの展示品を見ているだけでも楽しいのですが、
有料で染め体験も行えるほか、
さらに、ここは大量の伊勢型紙を保有しており、
お願いすれば見せていただけるということです。

ちなみに、このお隣には「八雲荘」という古い建物があり、
その日は中でお茶を一服できました。
ここの二階の座敷から眺める川沿いの桜は絶景でした。






桜の季節は一年のうちでも大変短いですが、
いつ見ても美しいなと、時間を忘れてしまいます。
昔、この時期にここで反物の川晒しが行われていたなら、
それはさぞかし色鮮やかだったことでしょう。