今年の初詣の帰り、いつも通る道で目に入ったのが
桜の木についた大量のウメノキゴケでした。
風向きと日当たりの関係で、北側に大量に生えています。
ウメノキゴケは空気のきれいなところにしか生えないので
量を集めるのは難しい素材です。
手で剥がれる部分だけ持ち帰り、洗って干しました。
たくさんあるように見えても、乾燥しているとそれほどの重量はありません。
しかし、これで数年前から一度やってみたかった
以下の文献による赤色染色の実験ができそうです。
しかし、残念ながら家にはたまたまアンモニア水がありません。
町内の薬屋を数件回りましたが小瓶しか見つからなかったので
とりあえず家にあった炭酸水素アンモニウムで試してみました。
というのも、コケやキノコを使う染めは古くから欧米などで行われていて、
それには子供の尿や古い尿が使われたりしていたのです。
尿素が分解されるとアンモニアになるからですね。
抽出液成分はそれほど厳密にしなくても
尿素が分解されるとアンモニアになるからですね。
抽出液成分はそれほど厳密にしなくても
なんとかなるんじゃないかという判断です。
まずは、乾いたコケをなるべく細かくします。
リンク先の文献には「ミキサーで粉末にすると扱いよい」と書かれていましたが、
いつも使っている電動ミルでやってみたところ、ご覧の通り。
付着している胞子が飛散してしまうのか、
スイッチを入れた途端に蓋からはみ出てくるほどの
もの凄く濃い白煙が立ちこめました。
一瞬モーターが焼き切れたのかと思うほど。
一瞬モーターが焼き切れたのかと思うほど。
この粒子はとても軽く、白煙は暫く消えませんでした。
胞子が色に関わっているとしたら無駄ですし、
体にもあまり良くなさそうですから、これはどうもいけません。
胞子が色に関わっているとしたら無駄ですし、
体にもあまり良くなさそうですから、これはどうもいけません。
ハサミで切り刻むのも鉄分が入って色に干渉するかと思い、
結局手でちぎったので、ちょっと大きい塊です。
セラミックハサミがあれば良かったです。
セラミックハサミがあれば良かったです。
そこに、炭酸水素アンモニウム水溶液(10%)を加えて混ぜました。
pHは8くらい、弱アルカリ性です。
毎日数回攪拌し、室温(冬なのでかなり低いです)に置いて
10日~1ヶ月で染め液ができるそうですが、
翌日にはこのように色が出てきました。
1週間でかなりの色が出たようなので、
明礬で先媒染した絹を染めてみました。
しかし、写真のようにあまり濃い色に染まりませんでした。
やはりアンモニア水でやってみないと比較できないなと思い、
その間に追加のコケも洗って干しておきました。
ついでに、炭酸水素アンモニウム水溶液は最初の半分の濃度の5%にしてみました。
アンモニア水は3倍に希釈してもpHは12と、
炭酸水素アンモニウム水溶液の8とは大きな差があります。
瓶に入れて振り混ぜて室内に置きます。
数時間後に既に差が出ました。
こちらが炭酸水素アンモニウム5%水溶液。
前より濃度が低いためか、色の出が悪いです。
こちらがアンモニア水(市販品の3倍希釈)
既にこの状態で圧倒的な差が出ました。
さらに1週間でこれだけの差が出ました。
炭酸水素アンモニウム5%水溶液
アンモニア水の3倍希釈
染液は当然ですが、相当アンモニア臭く、
この液を加熱して染めるとなると、室内がが恐ろしいことになることは間違いなく、
絹の繊維をできるだけ傷めないために、
常温の染め液をチャック付きビニール袋に入れ、
明礬で先媒染した絹布を入れて密封し数時間、
取り出した布は、お酢を希釈した液に暫く浸して中和してから干しました。
左が炭酸水素アンモニウム抽出液、右がアンモニア水抽出液で染めた布です。
右のムラは、チャック付きビニール袋に入れた時にできた皺ですが、
想像以上にきれいなピンクが出ることがわかりました。
元のウメノキゴケの外見からは想像がつきませんね。
染液のアンモニア臭が消えてから加熱染めもやってみようと思います。
(※なお、染まった布にはアンモニア臭は残りません)
名前は「ウメノキゴケ」ですが、これがついていたのは桜の木です。
バラ科の木だけでなく、クヌギやカシなどにもついているのを見かけます。
コケのついた木によって色が違うものかどうかも是非知りたいところです。
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