2019年8月20日火曜日

カンボジアの蓮糸製品



カンボジアのあちこちで蓮池を見かけます。

以前、新・東京スピニングパーティ2014に出展していた
町田市大賀藕絲館ブースでの藕絲(ぐうし)作りの
実演を見学した時の記事を書きました。


蓮の茎を折って出る細い繊維を撚って作るのが藕糸(写真上)
蓮の茎を苛性ソーダで煮て、粗い繊維を取り出して作るのが茄糸(かし)
2種の繊維は感触も作り方も全く違います。

その2年後の東京スピニングパーティ2016、
京都の西銘商事さんのブースで、蓮布を発見!
ひんやりぬめっとした感触、藕絲の布です。
とても手の出ないお値段はもちろんですが、
この布をサンプルとして1mだけ切るという行為自体も申し訳ない感じで、
布をひたすら触ってその独特の感触を覚えようとしました(迷惑な客)
伺ったところ、これはミャンマー産ということでした。

そしてようやく今年、カンボジアのLotus Farmを見学することができました。

Siem Reapの中心部から車で15分ほどの郊外の、大通り沿いにあります。
このあたりは地番も何もないので、目印はこの看板のみです。


高床式の建物で、風通しが良く涼しそうです。

早朝でもあり、作業をしていたのはたった2人だけでしたが、
繁忙期にはもっと多くの職人さんが作業をされるそうです。

糸作りの様子の動画です。

蓮の花の茎を集め、表面の皮だけうまく切れ目を入れたら
ポキッと折って、そこから細い繊維を引き出して、軽く撚って糸にしています。


ここはフランス資本で運営されているので、
解説パネルもわかりやすく作られていました。


全て天然素材で染めているそうです。
左手上2番目の細い糸の束が、熟練の職人さんが1日かけて作れる糸の量だそうです。
その重量はたった15g!
高価なわけです。


これはラックで染められた藕糸と、元の糸。






織機もありましたが、織り子さんはいませんでした。


蓮の花弁、雄蘂、花托をそれぞれ分けて乾燥しています。
花弁はお茶にするそうです。
試飲させていただきましたが、
お茶の葉っぱを混ぜたもので、なかなか美味しかったです。


小さな売店もありましたが、シルク製品がほとんどす。
藕糸を買いたいと言うと、市内中心部に戻る道路沿いの
Samatoa Lotus Textilesに行くように言われました。




蓮畑は工房の裏手にありましたが、
今年は雨季になっても雨がほとんど降らず、
蓮も枯れ枯れになっていました。


さて、市内方面に戻り、今度はSamatoa Lotus Textilesです。


玄関脇で何人かが作業をしていました。


何だこれ?おせんべい?紙?


実は、様々な植物性繊維を使って
ヴィーガン用の100%植物性フェイクレザーの試作品を作っているのだそうです。


この、棚の前に吊されているのが試作品です。
蓮だけでなく、いろいろなことをやっているようです。


さて、蓮糸です。
一階右手に、袋に入った大量の藕糸がありましたが、すぐには買えません。
二階のショールームに行くように促されます。




サンプルの前で、英語の達者なカンボジア人職員の方が解説です。
蓮だけではなかなか製品ができないからか、
他の素材との混紡も多く作っているようです。
全て天然素材で染めているそうです。





せっかくなので布のサンプルも欲しいと聞いたところ、
買えるというので店内で待っていたら、
わざわざ1枚づつ10cm四方に布を切ってサンプルを作っていたようで、
相当な時間がかかった挙げ句、
頼んでないものまで持ってきて「セットでなければ売れない」と言うので
安いものでもなかったのでお断りしました。
糸も1袋単位(数万円)でないと販売できないと言われ、断念。

フランス主導ということもあるのでしょうが、
この会社は蓮を育て、糸を作り、
それを織って染めて縫った
西洋人の生活にもなじむ、ひと味違う高級な製品を売ることで、
より多くの収益を上げ、より多くの雇用を目指す、という目的があるのだなと
理解しました。

地元の女性達が加工を行うハンドメイドでありながら
最終的には、海外富裕層向けの一点物という
立派なブランド製品になっているのです。


右にあるのは、フランスの大臣が訪問したときの写真だそうです。

ミャンマーのインレー湖にある
Aung Sakkyar Lotus Robeの工房
https://www.facebook.com/aungsakkyarlotusrobe/
他の方のブログ論文動画などを見る限りでは
袈裟などの仏教的な品が作られているなど
現在も国内での需要があるように思われます。

このあたりの差別化はさすがフランス人だと思いました。

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