2015年2月27日金曜日

ミイラと漆

「昨日のチャンネル4の日本のミイラの番組を見た?」
と、当時教えに行っていたイギリスの学校で
何人もの学生に言われたのが2003年頃です。
特に、漆を教えた学生達がこぞって教えてくれました。
残念ながら私は見逃していたので、すぐに学校のパソコンで検索し、
当該番組のサイトを見つけました。

そこには、日本のお坊さんが即身仏になるためには、
数年前から節食を始め、食事も徐々に木の実や杉の葉などに切り替え、
さらには漆の葉のお茶や樹液を飲んで徐々に絶食するというような説明も出ていました。

「漆の葉のお茶なんか飲んでかぶれないの?」
「お茶にする漆の葉を集めるだけで漆にかぶれるんじゃないの?」
「今でも日本ではそんなことをしているの?」と、
とにかく質問責めになったので、
番組のサイト以外の日本語のサイトをいろいろ検索し、みんなに説明しました。
今ではもう禁止されていると言うとみんなもほっとしていましたが、
当時の人が漆を飲むことで内部からも肉体を保存するということを考えていたというのは
なかなか壮絶なものがあると思いました。
それと同時に、イギリスの民放のテレビ局がよくこんなマイナーな話題について
日本で取材をして1時間番組を作ったなあ、ということに感心しました。

中国では即身仏の表面に漆を塗るだけでなく、
さらには金箔を貼って仏像と同様に崇拝の対象とされる、
という記事と、漆箔(しっぱく)されたミイラの写真も幾つも見つけ、
みんなに見せたところ、さらに驚かれました。
今回、改めてそのサイトを探してみましたが、大量の記事に埋もれて見つからず、
かわりに日本の即身仏を説明するサイトを見つけました。(英語)



考えてみれば、実家の町から車で1時間ちょっとくらいの山の中のお寺に即身仏があり、
小学生の時に親戚のおばちゃんに従兄弟と一緒に2度ほど見に行ったことがあります。
小学生ですから「ミイラ、きゃ〜、怖い!」というわけで
じっくり見たわけではありませんが、
生きたまま箱の中に入れて埋められて、中で読経しながら鐘を鳴らし続け、
鐘が止んだ後数年経ってから関係者が掘り起こす、
などという説明は強烈に覚えています。

その後、エジプトで博物館関係の仕事をした時に、現地の保存修復家から、
日本からの技術提供を受けられるとした場合、
一番相談したいのはミイラの保存修復の方法、と言われ、
インターネットなどでいろいろ調べたこともありました。
もちろん、ミイラ専門の日本の保存修復家というのも見つからず、
もちろん環境も条件も異なるため、
現時点では適切なアドバイスができないという判断となり、
結局は紙の修復からのスタートとなりましたが、
関係者には切実な課題なのでしょうね。

そう言えば、先日訪問したインド博物館の中のエジプト展示室は
ミイラが2体展示されていることで大人子供ともに大人気(?)でしたが、
国も宗教も違っても、怖いもの見たさなんでしょうか。

さて、何故今こんなことを書いているかと言うと、
既にご存じの方も多いと思いますが、先週くらいに、
昨年オランダの博物館の特別展で展示された、
1,000年ほど前の中国の仏像をCTスキャンで調査したところ、
中から同じポーズで座った高僧のミイラが発見されたことがニュースになったからです。


イギリスで過去にそんなテレビが放映されていたこともあって、
仏像を装ったミイラが存在していたことに対しては何の驚きもなく、
あっそう、ふーん、とだけ思ってスルーしていたら、
仏像の中にミイラが見つかったのがこれが初めらしく、
その後もニュースが引き続き流れるのに逆に驚いてしまったという個人的な話です。

図像を見てご不快な方もおられると思いますので、
写真は掲載しません。

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