2015年1月10日土曜日

ラックを訪ねて1500里(10)

滞在中にはたまたま「インドの田舎の栄養環境を改善する国際会議」
というものが研究所で3日間開催されており、
無関係の私もたまたま外国人ということだけで壇上に引っ張り出されたり、
さらにその期間中には州の総選挙もあり、
国の機関である研究所の職員も選挙事務に駆り出されて不在だったりで、
所内の見学も通常の順番通りにいかず、
皆さんがお忙しい時は付属図書館に行っていました。

 農業省の施設のため、ラック関係だけでなく
多くの農業関係のジャーナルや雑誌が収蔵されているのでこの蔵書数です。
必要なものはコピーさせてもらえるのですが、
お手間をかけるのも悪いのでデジカメで撮影させてもらいました。


インドでしか出ていなさそうな古い本は鍵付きの書庫に入っています。

当初は、ここまで皆さんがいろいろあちこちに連れて行って下さると思っておらず、
最悪一週間図書館でもいいや、と思っていたくらいですから、
資料を全部調べるなんてことも到底できず、
出してもらった担当者さんのお勧め本1冊と、大昔の博士論文2部を読んだくらいで
あとは在庫がある研究所の古い出版物を購入してきました。
簡単に購入と言っても、
まずリストをもらって在庫を探してもらい、
一部はすぐに見つからないのでまた後日となり、
都合2日かかりました。
一部の稀少な古い本は虫害に遭っていて買えなかったのは残念でした。

そんな感じで、出発の前日になってようやく残っていたCoating Labを見学できました。
ここは、塗料としてのラックについて研究している施設です。
これは通常の家具ワニスとしての模型です。
ちゃんと人に見せられるようにこういうものが準備されているのですね。

ここで開発した水溶性のラックを塗布した竹と土器です。

ラックはアルコールの他にアルカリでも溶けるのですが、
硼砂や鹹水などでは水分の蒸発後にアルカリが残留するため、
木や竹を傷めてしまうことになるけれど、
アンモニアは揮発してしまい残留しないので、
素地を傷めない上耐水性になるということでお勧めだとのことでした。

その他、ラック博物館にあったような金属の保護塗装や、

近年流行のマニキュア、

同じく博物館に展示されていた歯医者での型取りサポート材。

電球の接着材。ラックの電気絶縁効果を利用しています。

石やセメントにも塗布できるエマルジョンペンキや、

え、屋根の波板まで?
紫外線や水分は大丈夫なの?と聞いたところ、
これについてはマレイン酸やメラミンなどの合成樹脂を混ぜているそうです

ガラス繊維だけでなく、ジュート布を補強に使っています。

この日はまだ国際会議が続いていて、
担当者はこの後口頭発表だからじゃあね、って駆け足で説明は終わり、
所長から「じゃあ、昼食後に君のプレゼンを見せてもらうから。」と突然言われ、
とにかくなぜこの研究所に来たのかの理由と、今回の調査での成果について
約30分でパワーポイントをまとめて、
その日いた研究所の科学者の皆さん20人ちょっとの前で発表しました。
データが揃っていないためまだここには書けませんが、
現場でのある実験を含めて、文化財や美術工芸分野からの視点は
皆さんにとって新規な内容が多かったらしく、
終了後に様々な質問を受け、喜んで頂けたようです。
ラマニ所長からも、是非再訪するようにと言って頂け、
今度は別の時期に訪問をしたいと思っています。

研究所の皆さん、お忙しい中どうもありがとうございました。


※この調査は生き物文化誌学会さくら基金の助成を受けて行われました。

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