台風18号の到来と重なってしまい、開催が危ぶまれていましたが、
私の参加した18日は朝からお天気で、
JR岐阜駅前には虹も出ていました。
ビルの手前右下に金色に見えるのは織田信長像です。
ここからバスと車で現地に向かいました。
会場の森の情報センターには、
受付開始時間前からほとんどの方が集まっていらっしゃいました。
参加申し込み受付開始たった数分で満席になったという熱意が伝わってきます。
(私も時報と同時にクリックしました)
講師は、京都在住で、山中温泉の工房にも通って制作をされている
森口信一さんです。
「我谷盆(わがたぼん)」とは、
かつて山中温泉の近くにあった
現在はダムに沈んでしまった我谷村(わがたにむら)で作られていた
栗の生木を使って作られていたお盆のことです。
お盆は「わがた」、地名は「わがたに」と読むそうです。
検索すると詳しい情報が出てきますので
ここでは制作工程だけをご紹介します。
受講生の制作用の板は既に準備してありましたが、
まずは、栗の生木の丸太を割って板にする方法を実演してくださいます。
くさびを打ち込むと、木目に沿ってきれいに割れます。
きれいに目の通った材です。
自己紹介の後で作業席につき、既に準備してあった板を選びます。
材の芯側になる面を上にして下書きをします。
まず、縁から1cm内側で線を引きます。
これが内側の完成時の基準になります。
ここから内側5mmに線を引きます。これが底の完成時の基準です。
つまり、この5mmが内側の傾斜の分です。
(この内側の線は外まで延ばしておきます。)
外側の線を基準に、四隅に直径4cmくらいの円の1/4を描きます。
そして、森口さんの実演です。
この作業台は森口さんが山中で使われているものをお持ちになられたそうですが、
我々の作業台にも同じ止め木がつけられていました。
実際の作業を進めると、この形状がとても使いやすいことがわかりました。
まずは四隅を丸鑿で3回(中、両脇の3つのノミ目になるよう)強めに叩き、
目印とします。
続いて、四隅の丸鑿の目印の間に平鑿を斜めに入れます。
長辺は割れやすいので、木口より弱めに叩きます。
(木口の1/3程度の力)
次に、短辺の端を、真ん中から端に向かって丸鑿で彫ります。
次は、少し間を離して同様に彫ります。
板を反対に回して、反対側も同様に彫ります。
その間を平鑿で落としていきます。確かにこれは早い!
一段彫ったら、また四隅を叩くところから始めます。
四隅を丸鑿であらかじめ切っておくことで
木の割れを防ぐことができるのですが、
それでもちょっと力を入れすぎると割れがおきます。
この作業を繰り返し、底が適度な厚み(8mmくらい)まで彫り進めたら、
丸鑿の模様彫りを入れる作業になります。
底の厚みはトンボで計測しました。
まずは森口さん曰く、「トップシークレット」の技。
まず、平鑿で底の内側周囲の繊維を断ち切る作業からです。
いわゆる隠し包丁。
これを入れておくことで、丸鑿の屑がきれいに取れるのです。
そして、模様のノミ目は、ゴムハンマーで叩いて彫り進めます。
これも真ん中から外に向かって彫り、真ん中でノミ目をつなげます。
この作業の前までに使っていた木槌とゴムハンマーとでは
全く感触が異なることにびっくりです。
底部分のノミ目が入れられたら、次は縁のノミ目です。
ここも平鑿の「トップシークレット」加工が重要です。
長辺は割れやすいので、力の加減もポイントです。
長辺も同様に彫り進めます。
底のノミ目とつながるようにするのがポイント。
角の始末はこんな感じになっています。
とにかく1日で仕上げねばならないので、
ここからは写真を撮影している余裕もなく作業を続けました。
ノミ目まで完成したら、センを使って周囲を約15°斜めに落とし、
4つの角を平鑿で3回(中心、両脇)で落とし、
カンナで裏側を削り、鋭角部分を落としたら形は完成です。
底は木目に直角に削ります。
そのため、ハマグリ刃のカンナを使いました。
これは模様の他、摩擦を減らす畳ずれの役割になるんですね。
完成したお皿には、独特の方法で着色を施します。
まずは、木灰で作った灰汁の中に約10分浸し、
灰の粉と余分な水を拭き取ったら、
そこに、この褐色の液を塗り、乾いたらサンドペーパーで表面のざらざらをとり、
さらにシュロのたわしでこすって磨いたら完成です。
褐色の液は、栗の木の削りかすと鉄を煮て作るそうです。
栗の木に含まれるタンニンを利用している、これは一種のお歯黒ですね。
自分の作ったお盆はこんな感じに仕上がりました。
しかし、もうちょっと色を加えたいと思ったので、
自宅で栗のお歯黒液を作りました。
ちょうどご近所の方から栗のイガをもらっていました。
どこかの染色の本に、栗のイガが一番良く染まると書いてあったからです。
鉄釘を入れると、液はすぐに黒くなりました。
これを濾して、再度灰汁に浸した盆に塗りました。
乾いてから磨いてこんな感じです。
完成したら漆を塗ろうかと思っていましたが、
これはこの風合いが良いんじゃないかという気になってきたので
このまま使うことにします。
こうやって写真で見ると、直したくなるところがいろいろ出て来ます。
しかし、素朴さが売りの一つである庶民のお盆ですから、
ここはじっと我慢。
栗の生木が手に入ったら是非もう一度やってみたいです。