2015年10月25日日曜日

ウルシノキとツタウルシ

先月、浄法寺の漆植栽地に行った時、
植栽地の一本の漆の木に、ツタウルシが貼り付いているのを見つけました。
一般に漆が紅葉すると間違われるのはこれじゃないかと思うんです。

ツタのようなツル植物がウルシノキに巻き付くと、
木の幹が傷になったり、ツルに締め付けられて木の成長が悪くなるだけでなく、
木の幹がねじ山のようになってしまいます。
なので、もちろんこれも幹から引きはがしました。

標本のために葉を採取しました。
ウルシノキと違い、小葉は3枚です。
(※ウルシの木の葉の構造は、もともと大きな1枚の葉の切り込みがどんどん深くなり
複数の小さい葉にになったもので、個々の小さい葉を「小葉」といいます)

アメリカにはPoison Ivyといわれる、同様に小葉3枚のウルシ科の植物がありますが、
樹液成分のウルシオールでかぶれる人が多いらしく、
(ひどい時には死ぬという話)
アメリカにはかぶれ対策の薬がたくさん販売されています。
私はこの浄法寺のツタウルシを素手で採取したものの、
全く影響はありませんでしたが、
アメリカのPoison Ivyの方がかぶれ度合いが強いのかどうか、
一度、現地で試してみたいと思いつつ。

 さて、あまりにもウルシノキの葉と見た目が違うこれが
ツタウルシかどうか何故わかる?と言うと、
葉をちぎった時に、根元からミルク状の汁が出て、
それが時間が経過すると、漆同様にちゃんと固まるんです。
ツタウルシの葉を入れていたビニール袋はこんな感じに汚れました。
塗膜に艶もあり、結構良質の漆っぽく見えます。
もしかしたらウルシノキと比較し、量が採取できないだけで、
質は十分良い可能性もありますね。
一度ちゃんと調べてみたいと思いますが、
今のところ家の近所には見つからなくて残念です。

2015年10月20日火曜日

秋深し

今年は母の介護に加え、最近自分も二度目の怪我をしたりで、
このブログもなかなか更新ができていません。
しかし、植物は待っていてくれませんね。

漆の木の葉も黄葉していますが、まだまだ緑が多いです。

青空に黄色がよく映えます。


ところで、うちの漆の木の葉だけなんでしょうか?
漆が葉にしみ出しているのか、黒く斑点になってます。
これ、既に国産漆で漆固めしてあるのと同じだと考えると
何とか利用できないものかなあと
貧乏な発想をしてしまいますが(笑)

藍も刈り取り時期を過ぎてしまいました。
花が咲いてしまうと、葉の色素が一気に減るのです。
今年も種が大豊作になりそうです(涙)

既に種ができているところもあり、気をつけねば。

去年は不作だった柿、今年はご近所もどこも大豊作です。
去年青いまま落ちた甘柿を漬けこんだものは、今だ全く柿渋らしくなっておらず、
もう少し様子を見てみます。

2015年10月14日水曜日

画材店の愉しみ

上野の科学博物館に行ったついでに、
久し振りに言問通り沿いの日本画材店、得應軒に行きました。

ネットで何でも買える時代になったとは言え、
現物を見なければ判断ができないものというのはまだまだあります。
特に、色や質感は、パソコン上ではなかなか判断がつきません。
というわけで、やはり実店舗はなくなってもらったら困ります。

行った時にはたまたま、筆を試し描きされているお客さんがおられました。
水をつけると墨汁の描線のように描け、水が乾くと見えなくなり、
何度でも使える特殊なシートが用意されているのです。
筆を買う予定は全くなかったのですが、
横から見ていたら大変面白そうであり、
蒔絵に良さそうな筆が出てきたところで、
我慢ができずに試し描きをさせてもらいました。
ご親戚の作られている筆だそうで、
気に入ったので買うことにしました。
このお客さんがいらっしゃらなかったらきっと一生出会わなかった品かと思うと
店舗にいらっしゃる他のお客さんもご縁だなと思います。

上はイタチ毛。見た目が・・・なのであまり売れないんだそうですが、
使ってびっくり、長い線がきれいに描けます。
試し書き用は毛が長すぎると言われたので短くしたそうですが、
蒔絵用には長い方が良かったので残念です。
漆関係者が何本も買うということで別にお願いするしかないでしょうね。
下は、天然毛と合成毛を併せたコシの強さが独特の筆です。

筆はいくら値段が高くても、望む線が描け(書け)なければ意味がありません。
試し描き(書き)をさせていただけることで価値が理解できます。
実店舗があるというありがたさです。

そして、この日の目的は、銀箔の購入だったのですが、
つい最近、京都の堀金箔粉さんが開発された
変色しない銀粉「紫磨銀泥」というのを見せて頂きました。


銀と真鍮で作られた粉に膠を加えて容器に入っているものです。
粉だけのものはないそうで、日本画ではこのまま使えますが、
漆で使うとなると、膠分をどう除くかも考えねば、
と、思いつつ、まだ使えていません(苦笑)。
得應軒さんでは、これが本当に変色しないのか、
朱とウルトラマリン(酸化反応が強い)を塗ったボードに
銀粉、錫粉などと試し塗りをしたテストピースを作り、
劣化状態を比較しているとのことでしたが、
この製品が入荷してまだ10日ほどしか経過していないので、
変化はまだわからないとのことでした。
これらのテストピースはお願いすれば見せて頂けるはずです。

このように、新製品に出会うこともできるのも
実店舗の愉しみのひとつではありますが、
ついつい予定外のものを買ってしまうのが痛し痒し。

2015年10月2日金曜日

世界のヒョウタン展

9月15日から12月6日まで、上野の国立科学博物館で開催されている企画展
「世界のヒョウタン展ー人類の原器ー」を見てきました。



これは、東京農業大学の進化生物学研究所所長の
湯浅浩史先生の膨大なコレクションの中から選ばれた世界中のヒョウタン、
それも道具として用いられていたもの中心となっており、
科学というより民俗学や工芸の関係者に見ていただきたい展示です。
フラッシュを使わなければ写真は撮影OKというのも嬉しいです。

アフリカ原産といわれるヒョウタンは、
日本の縄文時代の遺跡からも発見されているくらい人類とは古いつきあいがあるわけで、
そのため、驚くほど多彩な品種が作られています。


この手前の小さい台に乗っているのが最小のヒョウタン。
後ろは最大・・・と言いたいところですが、
これより大きかったり長かったりするヒョウタンもまだあるのです。


極端に寒い地域や砂漠地帯以外には分布しているようです。

左下の写真が縄文時代の遺跡から発見されたヒョウタンです。
最初は容器として使われ、現在も容器として使われているわけですね。

とにかく、さまざまな形、加飾、見ていて飽きません。

元の形や大きさが様々で、用途もそれにあわせたものになっています。


軽くて丈夫というのが素晴らしい。

水パイプなど、日本では見られない使い方のものはもちろん、

楽器への利用が意外に多く驚きます。

共鳴具としての利用から

ギターやハープのような楽器の胴になり、

もちろん打楽器の胴や共鳴具にも。
ヒョウタンのユーモラスな形が、生き物っぽくも見えます。

最後に、振ったり叩いたりして遊ぶコーナーもあります。

7月にリニューアル公開されたばかりの旧本館1Fでの展示、

免震工事がされた建物自体も美しいのですが、
向かいの時計・顕微鏡などのコーナーも
蒔絵の天球儀など、工芸好きにはたまらない品がいろいろあります。

企画展ですが、通常料金で見られますので、
お近くの方は是非お運びください。