先週、作業場の冷蔵庫から物を取り出した際、
うっかり生漆の入った茶碗を倒してしまっていたらしく、
3日後に気づいた時には、茶碗の中身が半分以上が冷蔵庫の中に流れてしまっていました。
こういう場合は慌てないのが一番なのですが、
こぼれた漆を集めるために冷蔵庫に入っていた物を一旦全て移動していた際、
物についていた漆が自分の足の方に垂れてしまいました。
すぐに着替えて拭けば良かったのですが、
物を移動したために漆がどんどん広がってしまうのでそんなわけにいかず、
一段落してからやっと着替えられたため、
久し振りに大かぶれしております(笑)
自分はかぶれにくい体質とは言え、
漆がつく場所や、自分の体調など、さまざまな要因でかぶれが出ます。
今回は久し振りに太ももに付着したのですが、
直接付いたところはもちろん赤く腫れましたが、
数日経ってから膝の裏側を中心に疱疹ができています。
皮膚が弱いところに出て来るんですよね。
面白いです。
昔からかぶれの治療方法は、沢ガニの汁やら杉の葉っぱやら
酒を飲んで塩水の風呂に入れとかいろいろ言われていますが、
私は放置しておくだけです。
それで数日後には治るのだから有り難いことです。
それでも現実、かぶれると疲れやすくなったり、調子が悪くなります。
かぶれやすい人は、空気中の漆成分にも影響を受けるようです。
南アフリカ出身の白人の友人はとても漆に敏感で、
漆を使った授業の後、しばらく起きていなかったという喘息の発作を起こしたことで
漆アレルギーが発覚しました。
しばらくして、扉を閉めた部屋でちょっとだけ漆を出していただけなのに、
「あなた、漆を使ってたでしょ?」と図星。
廊下を通っただけで首が真っ赤になったと、
「私には嘘はつけないわよ。」と言われました。
彼女はアレルギー体質で、そのための薬をいつも持っていましたが、
別のアレルギー体質の白人の人も呼吸器系に影響を受けるらしく、
そういう人達にとっての漆かぶれは生命の危険にもさらされる一大事になります。
外国人だからかぶれやすいのではないということはありません。
これまでの生涯で絵すら描いたことがないという
エジプト人の物理学の学生に漆を教えたことがありましたが、
いくら注意しても手袋も嵌めず素手で作業をし、
手に漆をつけていた時には
「次回から君には会えないね。」
と半ばジョークで言ったのにも関わらず、
次の講座にはけろっとした顔で出て来て、
何も変化も起きていない手を見せてくれました。
逆に、日本人でもかぶれる人はかぶれますし、
丁寧な作業をしている生徒でも体質によってはかぶれます。
私は漆にかぶれにくいということで漆を使うようになりましたが、
かぶれやすい人ほど漆を手や道具につけないように注意深く作業をするので
技術が上達すると言うのは言えるかと思います。
なので、私のようなかぶれない人間はいつまでたってもへたくそなまま、
と、言い訳をしてみます。
さて、冷蔵庫にこぼれて3日経った生漆は、
ほとんど自然にくろまっていましたが、
全く乾かない漆になってしまいました。
これはよく乾く漆に混ぜて使うことができるので無駄にはなりませんが、
冷蔵庫の壁面に吸われた漆はかなり無駄になってしまいました。
他の物に染みこんでいなかったことは不幸中の幸いです。