この夏、日本はカイロよりずっと暑いらしいですね。
カイロ在住20年以上の日本人の方も、
カイロより日本の方がずっと暑いとおっしゃっていました。
しかし、エジプト情勢はまだまだ落ち着かなさそうで心配です。
ところで、ロンドンに住んでいた頃、
イギリスには良く切れる刃物がないなあと愚痴をこぼしていたら、
靴屋の職人をしていた友達が、
自動車の板バネで良く切れる刃物ができるという話をしてくれました。
結局イギリスではそのバネをどこで入手するのかもわからないまま帰国。
しかし、カイロでは、やたらあちこちに車の修理屋を見かけました。
ある日、唖然とするような車パーツ販売街のような場所を
仕事の移動中の車内から偶然発見、
休みの日に徒歩で探索を試みました。
場所は、カイロとザマレク島を繋ぐ5月15日橋の高架になっているところの裏手です。
おそらく数百件の小さいパーツ屋が集結しています。
エジプトでは何故か、同じ種類の店が隣同士で並んでいるのが普通なのですが、
とにかく、このすごさは写真を並べるだけではとても伝わらないのが残念です。
とにかく、これでもかというくらいの数の車パーツの店が軒を連ねています。
しかし、どの店もマフラーならマフラー、
シリンダーならシリンダーのように、
ある特定の種類のパーツだけを扱っているようです。
日本人がこんな場所にいるのは珍しいのでみんながじろじろ見ますが、
英語が通じる人がほとんどいません。
とにかく「Car spring」がないかを聞いて回っていたところ、
たまたま英語ができるおじさんが話しかけてきました。
「何に使うのか?」と言われ、ナイフを作りたいと言ったところ、
自分も以前買ったことがあるというお店に連れて行ってくれました。
建物の一階に複数の小さいお店が集まった奥で、
これは一人で探していても絶対に見つからなかったなという場所でした。
ありました、ありました。
しかし、大きすぎ!!
トラックやバスに使われていたものですから、当然と言えば当然ですが。。。
何本ナイフを作るんだと言われ、一本でいいと言ったら、
一番小さいの(それでも50cmくらい)を探し出してくれました。
20エジプトポンド(当時約400円)でした。
さて、ここからが問題です。
「おまえはどうやってこれからナイフを作るつもりなんだ?」と。
確かに、切る道具がない以前に、車の板バネは微妙に反っています。
実はこの英語ができるおじさんは、元お医者さんで、
趣味でボートとか手作りしちゃうといい、
何なら自分は道具を持っているから作ってあげよう、
今日は車を大通りに待たせていて急いでいるので
自分が持って帰って加工しておくから、
後でここに連絡しろと電話番号をくれました。
3日後、指示された場所に行くと、外にボートが置いてある家がありました。
一本の板バネから、既にこれだけ作ってありました。
しかし、まだ加工が途中だからと、見せるだけで渡してくれません。
どんな道具を使ったのかと見せてもらうと、なんとディスクグラインダーがたった一つ。
これで全部加工したというのだから驚きです。
で、結局、このおじさんは離婚して寂しく、話相手が欲しかったらしく、
延々と自分の身の上話をし始めてなかなか帰れません。
私も外に車を待たせていた関係で、なんとか1時間くらいで切り上げ
また来るからとその日は帰りました。
この時点で帰国までにあと5日だったので、その旨も伝えていたので、
帰国前々日に再度連絡が入り、一本できたからということで受け取りました。
お礼に、日本から持って来ていたお土産用の品をあげました。
残りのナイフは結局もらえませんでしたが、
逆に加工賃の方が高くついてしまったようです。
さて、おじさんに作ってもらったたった1本のナイフがこれです。
日本の砥石で研ぐにはちょっと固すぎますが、十分に切れます。
板バネに穴があった部分が凹んでいて、
表面はディスクグラインダーの跡がついていますが、
おじさんの苦労の跡がしのばれる感じです。
余談ですが、エジプトでは廃タイヤで作られたバケツをあちこちで見かけました。
ここに売っているお店がありました。